20 自己嫌悪
デリクは見失ってしまったが王都にいるのが確定した。
もしかしたらこの辺りに宿を取っているのかもしれない。
止められるかもしれないという思いとなぜ捕まえられなかったのかという思いが同時に湧く。
「とりあえず場所を移してご飯にでもしましょう」
おすすめの場所があるから、と暗い雰囲気を払うようにソフィアが笑う。
その笑顔に胸が鳴った。
不可解な感触に胸を押さえる。
押さえた胸の中がじわっと暖かい。
どうしたことかと戸惑う。
先を行くソフィアが振り返ってアルフレッドの名を呼ぶ。
その声にまた胸が鳴った。
(なんで、急に……)
待っててくれたソフィアに追いつき、並んで歩きだす。
「今日は何食べたい?
私のおすすめは魚かな。 近くに魚料理のおいしいお店があるの」
隣を見下ろすと、ソフィアの藍色の髪が目に入る。
艶のある藍色は光に透けると深い青にも見えて、とても美しい。
「アルフレッド?」
黙っているアルフレッドを不思議に思ったのかソフィアがアルフレッドを見上げる。
突然合った視線にソフィアを見つめていたアルフレッドはなぜか慌てた。
挙動不審にならない程度に自然に話をする。
「魚か、いいな。
ソフィアのおすすめなら期待してるよ」
「そう言われるとプレッシャーね。
なんて冗談よ。 本当に期待していていいわ、すごくおいしいお店だから」
胸が騒ぐのを無視して笑う。
今はそんな場合じゃないのに、と自己嫌悪にも似た思いが胸に湧く。
ソフィアを見れば勝手に胸が騒ぎ出す。
「ここを曲がった角にあるから!」
ソフィアが路地を指差して教えてくれる。
まぶしいくらいの笑顔に、アルフレッドはそれ以上考えるのは止めた。
「朝から歩いてたからお腹空いたな」
ソフィアを追い越すようにして路地を曲がる。
どうせ伝えられることのない想いだ。
アルフレッドは心の中で呟く。
ソフィアの身に起こったことを思えば、このような思いを抱いたことさえ申し訳なく思えた。




