19 すれ違い
翌日になるといくらか情報が集まっていた。
それらしい人を見た、程度のものでも手掛かりにはなる。
朝食を食べたソフィアとアルフレッドは目撃情報のあった店に確認に出かけたけれど、そのどれもが外れだった。
「全部違ったわね」
得られた情報の店には全部当たってみたけれど、弟さんとみられる人はいなかった。
肩すかしに終わってがっかりしているとアルフレッドがソフィアに思わぬことを聞く。
「ソフィア、王都で突然の持ち込みでも買い取りをしてくれる店ってどのくらいあるんだ?」
いきなりの問いかけに頭の中で王都にある商会のリストを捲る。
「二十軒くらいかしら。 宝石を主に扱わない店も含めてね」
小さなものまで入れたら数えきれないけれど、青光石を買い取れる程度の、と付くとある程度限られてくる。
「その中で貴族が出入りするような店は?」
「半分くらいは貴族御用達みたいな店よ。 どうして?」
「うん、どうやってお客さんになってくれる貴族を探すのか考えてみたんだけど、いきなり屋敷を訪ねたりなんかはできないだろう?」
「……そうね」
そんなことをしたら不審者として叩き出されるか衛兵を呼ばれてしまう。
「素晴らしい青光石を持っていることと自分が細工師であることを売り込むとしたら、そういった店に行くんじゃないかと思って」
アルフレッドが言うには青光石を査定してもらいに行き、そこでまずは品質の高い青光石を持っていることを周知する。
そしてその場では青光石を売らず、興味を持ってくれそうなら自分が細工師であることを話す。
これで青光石を持っていることと、自らが細工師であり、作品を買ってくれる人を探しているということが伝えられる。
「上手くすればたまたま居合わせた貴族が興味を持ってくれるかもしれないだろう?
かなり運任せではあるけれど」
「そう、ね。 ありえなくはないわ」
一軒でなくそれを何度も繰り返せば、興味を持つ人が見つかるかもしれない。
好奇心の強い人ならとりあえず腕を見るくらいはしてくれるかも。
お店への聞き込みは数が絞られているので当たるのは難しくない、一軒を除いて。
「じゃあ午後はそういったお店を中心に聞き込みしましょうか」
そう言って早めのお昼を食べに行こうと言おうとしたソフィアの視界の端を見知った色が走った。
「アルフレッド、あっち!」
ソフィアが指で示す前に視線に気が付いたアルフレッドが走り出す。
「……!」
通りの向こうに消えようとしている人を懸命に追いかける。
間違いない、あれはアルフレッドの弟さんだった。
通りを渡って路地に飛び込む。
石造りの店舗が立ち並ぶ道に弟さんの姿はない。
「いない……」
別の道に入ったのかと近くの曲がり角を見るけれど、いない。
せっかく見つけたのに見失ってしまった。
憤りにアルフレッドが近くの壁を叩く。
もどかしい気持ちはソフィアもわかるけれど……。
「アルフレッド、駄目よ。 手は大事にしなくちゃ」
綺麗な物を作る大切な手なのに。
壁に叩きつけられた手を取って傷がないか見る。
それほど強い力じゃなかったからか傷はない。石壁で擦ったりしなくてよかった。
「悪い……」
ばつが悪そうにアルフレッドが謝る。
首を振って謝らなくていいと答えて手を離す。
「あれは間違いなく弟さんよね」
アルフレッドに確認すると間違いないと肯いた。




