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青の光跡  作者: 桧山 紗綺


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14 王都間近

 ガタンと大きく馬車が揺れる。

 初日に比べると揺れにも大分慣れてきたけど、大きな揺れにはまだ慣れない。

 本当によくソフィアは旅を続けていられると思う。

 隣で眠るソフィアは今の揺れにも目を開けない。

 慣れなんだろうけれどすごいな。

 ソフィアはよくアルフレッドのことをすごいと言うが、アルフレッドから見たらソフィアの方がすごい。

 自分で各地を回って行商をして生計を立てる。

 それは口で言うほど簡単なことじゃないと思う。

 彼女と初めて会ったのは店で安価なアクセサリーを扱い始めた頃だった。

 あの頃は親父とは毎日口論だったし、店にいても客は来ないしでよく市場で露天を開いていた。

 安価な材料で作った安価なアクセサリー。

 露天だからこそ売れる品ではあったけれど、糊口を凌ぐことは出来た。

 わずかな利益でまた材料を買い、品物を作る。

 その繰り返しをして、少しだけ貯まった金で作った装飾品が彼女の目を留めた。

『これいくら?』

 時間つぶしや冷やかしで露天を覗いていく人たちとは明らかに違う目。

 その視線の強さに胸を打たれた。

 当時の自分の精一杯とはいえ金銭に直したら親父たちが作ってきた物に遠く及ばない。

 その品を買いたいと言ってくれた、それも商人として。

『絶対にこれはもっと高く売れる品よ! 自信持って売ってちょうだい!!」

 そう言ってくれたことにどれだけ救われたか知れない。

 職人として、自信を持って彼女に扱ってもらえる品物を作るというのが、一つの目標になった。

 最初にソフィアに売った品物は材料の質もあってそれほど高く値段を付けていなかったけれど、彼女はアルフレッドが提示した値段の倍近い値段を出した。

 絶対に売れるから、と。

 次に会ったときに本当にアルフレッドが売った値段以上で売れたと知ったときの喜びは表しようがない。

 信じられなくてどうしてそんな値段で売れたのかソフィアに聞いてみたら、これから人気の出る職人の一点物だと売り込んだという。

 確かに売る時に同じ物を作らないと約束させられたけど、そんな意味があったのかと驚いた。

 そしてソフィアのやり方を見ているうちに自分でも制作に工夫を始める。

 流行っているものを追いかけるだけではなくて、自分が作りたい物を考えるようになった。

 もちろん売れない物を作る余裕は無かったので、売れる物を意識してはいたけれど。

 それまでよりもずっと気楽に、売れる物と作りたい物のバランスを取れるようになったんだ。

 彼女との出会いは一つのきっかけだけど、大きなものをもたらしてくれた。

 感謝している。

 だからこそ今回デリクがしたことに罪悪感を感じていた。

 デリクがしたことは言い訳しようがない。

 もっと話をしていたらと悔やみはするが、それはまた別の話だ。

 例え環境を恨もうともやってはいけないことがある。

 絶対に止める―――。

 固く心に誓う。

 デリクの為にも、自分の為にも所在を突き止めて止めなければならない。

 でなければソフィアに顔向けできない。

 アルフレッドを責めず、手を尽くしてデリクを探してくれているソフィアに報いるにはそれしかなかった。

 少しでも捜索のヒントを得ようと開いていたデリクの日記を閉じる。

 明日には王都に着く、広い王都を闇雲に探すのでは到底見つけられはしない。

 王都に着いたらまずソフィアの家に行くことになっている。

 状況の説明と情報を得るためだと言っていた。

 話を聞く限りでは結構大きな店らしい。

 どうしてソフィアは行商をすることにしたんだろう。

 今さらながらそんなことを思った。

 花の街で聞いた話からすると家族と折り合いが悪くて、といった様子でもない。

 長子が店を継ぐことが多いので珍しいとは思う。

 実家の商会を継ぐために頑張っている妹さんがいるとうれしそうに話していた。

 その表情に嘘はなく、家族を大切に思っているのがよくわかる。

 人の家の事情は様々だし、詮索は避けた方が良い。

 そう思いながらも気になってしまう。

 大きく息を吐いて気分を切り替える。

 ソフィアが目を開けるまで次の作品のイメージを書きとめることにした。

話数が増えてきて見づらくなったのでサブタイトル追加しましたー。

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