13 結婚式の手伝い
村の周りをぐるっと回って来ただけだったけど結構楽しかった。
遺跡っぽい洞窟も発見した。
小さな洞窟には子供たちの足跡があって、きっと秘密基地か肝試しにでも入っている子がいるんだろうと微笑ましくなる。
流石に立ち入り禁止と書かれている洞窟に入ろうとするほど童心が騒ぐことはなかったけど。
散歩から戻ってきたソフィアたちは宿の中が騒がしいことに気が付く。
宿に入ると大勢の人が厨房と受付の前にあるテーブルを行ったり来たりしている。
「ああ、来たのかいお二人さん。 悪いね、騒がしくて」
明日の準備で忙しいのだろう、テーブルには食材が山と積まれて、時折女性が取りに来ては厨房に消えていく。
「ウチの厨房が一番適してるってんで準備に追われてるんだ」
「はー、すごいですねえ」
小さな村なのに何人規模の宴会を開くんだろう。
「よかったら手伝いましょうか?」
思いつきで申し出てみた。
どうせ後は休むだけなので暇を持て余すことになる。
それならお手伝いをして時間を潰しても問題ない。
「いいのかい? こっちは助かるけれど…」
女性の視線がアルフレッドに向かう。
「構いません。 迷惑でないのなら、是非お手伝いさせてください」
アルフレッドもにこやかに同意した。
じっとしているのに飽きているのは彼も同じらしい。
「悪いねえ、じゃあよろしく頼むよ!」
許可を得て、ソフィアとアルフレッドはお手伝い要員として厨房に入ることとなった。
厨房のお手伝いとしては一般的な皮むきから頼まれたのでソフィアは小さなナイフを手に丸い芋を剥いていく。
アルフレッドも隣でオレンジ色の野菜の皮を剥いている。
アルフレッドの手付きにソフィアは感心した。
するすると皮を剥かれ籠に置かれていく野菜たち。
手を止めないようにしながらその速さに見惚れる。
「アルフレッド、皮むき早いね」
「そうか? いつもやってるからな」
家ではご飯を作るのもアルフレッドの仕事だと言う。
ちょっと呆れる。
工房の切り盛りだけでなく家のことまでやってたとは。
何でもやっちゃうのは良くないと言いたかったけどぐっと堪えた。
アルフレッドは元々の仕事の繊細さもあってか作業が早くて丁寧だ。
ソフィアよりも早くて出来上がりが綺麗なのでちょっと悔しい。
(自分で作ったりってほとんどしないからなあ…)
いつも食堂や屋台で買った物ばかり食べているソフィア。
普段から家族の食事を作っているアルフレッドとは比べるべくもない。
せめて雑にやって食材を無駄にすることがないように丁寧に野菜を剥いた。
無心に野菜を剥いていると段々終わりが見えてきた。
結婚式の宴会で出される食事に使われる食材は相当な量で、下ごしらえだけでも時間が掛かる。
明日料理を作るのはもっと大変だろう。
時間と戦いながら多くの料理を並べなければならないのだから。
芋の皮が剥き終わったので他に何をすればいいか聞く。
厨房を見渡せば他にも色々作業をしている人が見える。
ひたすら豆の筋を取っている人や、固い木の実の殻を砕き中身を取り出している人など、普段目にすることがない作業はソフィアを大いに楽しませた。
アルフレッドも他の野菜の皮むきが終わって次の作業を探している。
二人に与えられた次の仕事は水で練った小麦粉を小さくちぎって丸める作業だ。
親指と人差し指で作る丸くらいの大きさに小麦粉を契る。
次にある程度丸めて少し平たい小麦粉の玉を作る。
そして最後に玉の真ん中を押して火が通りやすいようにすれば完成。
この辺りでよく食べられていて、スープに入ったり茹でてソースをかけて食べたりされる。
つるんとした触感が心地よく食べ過ぎてしまう危険のある物だ。
…結構お腹に溜まるので食べ過ぎ注意なのだと初めて食べた時に思い知った。
そうして暗くなるまでお手伝いをしていたら宿のおかみさんから感謝の言葉と食事代のサービスをもらった。
夜ご飯もおいしかったし食事代は得したし、明日もがんばろうという気になる。
王都まではあとちょっと。
最悪の事態にならないように願いながら眠りについた。




