大広間
国王とマキノの対面です。
宮殿の一番奥にある大広間にて、国王と初の対面を済ませる。国王の隣には一人の若い執事がいた。赤いカーペットが入り口の扉より、王の座る台座まで続いている。彼が座る椅子は豪華にも金でできていた。王冠を被る渋い顔の男。だが、体の節々から普段から鍛えていることが見て取れる。がっちりとした体格。
「お前が新しく入る研究生か」
怖い。第一印象がそれだった。ふと目線を逸らしてしまう。相手を見透かしてくるような目つき。圧倒的な支配力。
こういうの苦手だ。品定めされている気分になる。
「はい。マキノソラです。王立研究所にて歴史と民族学をメインに研究させてもらいます」
研究内容についてはあらかじめゼノスと打ち合わせをしておいた。この世界に身を置かせてもらう以上、やはりタダというわけにはいかない。運よく元々日本史をバカみたいに演習していたので、知識に関する学び方や応用の仕方は心得ている。もしかしたら漢文の物語や国語の理解力が使えるかもしれない。僕はこの世界の歴史や人々の生活を学ぶ中から、この世界の解決策を見つけていきたいと考えている。
「マキノソラ、歳はいくつだ」
唐突に国王から年齢を聞かれた。僕は相手の意図を読み取ろうとする。この国では、学者が若いことが少し珍しいのかもしれない。なんて。的外れかもしれないが。
「18です」
無駄なことは話さずに、聞かれたことだけを答える。ゼノスさんからは墓穴を掘らないようにと忠告されているから。
しかしその心配とは裏腹に国王は「そうか、18か」とひとりでに納得したらしい国王。自分としては一刻も早く彼から解放されたかったが、話はまだ続くらしい。
「私の息子、ライと仲良くしてやってくれないか」
長い溜めののち、国王の口から意外な言葉が漏れた。
「あれと年の近い者がここには居ないのでな」
やはり国王といえど、子供を持つ身。人間らしい一面も持ち合わせているのか。自分はといえば、表面上頷きはしたが内心憂鬱だった。人と深く関わるのが怖い。それに相手は王族。尚更気を遣わなければならない。
その後、国王と形式的な挨拶を軽く交わし、大広間を後にした。背中には冷汗が伝い、始終足が震えている。
猛烈に家に帰りたくなってきた。あと1年もこんな暮らしをしなければいけないのか。
おはようございます、カシです。
書きながら、昔海外に留学した頃の自分を思い出しました。
初めは帰りたいと願っていても、いつの間にか現地に馴染んでいて、名残惜しくなるもので、なんとかマジックにかかるみたいです。