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違う世界

ナンバー147の簡単な説明会です。

『マキノソラくん。貴方の仕事は、ナンバー147の問題解決をサポートすることです』


鳥の声で目が覚めると、大きなベットの上に横になっていた。屋根が広い。貴族の屋敷みたいだ。視界に映る全ての物が新鮮で胸がドキドキする。ただ頭の中では、天使の言葉が鮮明に繰り返されていた。


しかし天使の存在自体信じ切っている訳なので、この現状事態夢だとも疑っている。念のため頬も抓ってみた。どうやら痛みがあるらしい。


「ほんとに僕、飛ばされたんだ」


口ではこう言っていても、多分頭では全部を理解できていない。話が急展開すぎる。そもそも問題解決って、僕なんかでもできるのだろうか。そんな大事な役目、引き受けてもよかったのだろうか。今更になって不安と後悔が押し寄せる。天使は僕を買いかぶりすぎだ。現実問題、僕は人と関わることが苦手だから。


そんなとき、扉からノックの音が聞こえた。


「マキノ様、お洋服を持ってまいりました。失礼します」


数秒して扉が開き、若い女性が入ってきた。使用人らしく、白と黒のメイド服を着ている。


「まあ、起きていらしたのですね」


使用人は僕に対して敬意を示していた。来賓のような扱いなのだろうか。僕の隣に質のよさそうな真新しい服を置くと、「ゼノス様をお呼びしてきますね」と一声残し、扉を出て行った。


そもそもゼノスって誰だ。

いきなりこんなところに来てしまったわけだが、状況がいまいち分からない。

けれど、いつゼノスと呼ばれた人が来るか分からないので、用意された衣装に早急に着替えてみる。しかし、問題が出てきた。服の着方が分からない…。


なぜかズボンはひざ下のスカートだし、上は浴衣みたいな、多分体に巻き付けるようなタイプの服だし。適当に鏡の前で着つけてみたが、違和感が残る。というか、似合わない。でも、薄い紺と白の混ざった服の色合いや浴衣に似た形状のこの民族衣装には、愛着がもてた。


部屋を軽く見渡すと、大きなベランダが一つと、書籍の並ぶ大きな木造の本棚が3つ。天井にはシャンデリラが飾ってある。6畳一間の自室より、軽く3倍はありそう。ベランダの窓を開けて外に出ると、隣の部屋のべランダ繋がっていた。


地上から15メートルはあるだろうか。5、6階ほどの高さ。正面には大きな城壁があり、その上から広大な城下町が見渡せる。どうやらこの建物はここらへんで一番の高台に建っているらしい。もしかしたら今僕がいるこの建物は、大きさからして王宮なのかもしれない。

手前には貴族のお屋敷がずらりと広がっていて、奥に向かっていくほど、賑やかな商業区が見える。もっと奥には海があり、港があった。どうやらこの国は斜面に築かれてらしくアフリカのケープタウンを彷彿させる街並み。


ベランダに出て何よりもまず感じたことは、空気が澄んでいるということだった。春の花の香りがする。日本はまだ冬だったのに。季節の違いが妙に面白かった。突っかかりなく肺いっぱいに空気が入る。もしこんな濃い気体ならば、魔法が使えても可笑しくない。そう思えてしまうほど、息をするのが楽だった。


暫く城下町を見ていると、商業区の外れのほうから黒い煙が出ていることに気が付いた。火事だ。そこはスラムのような場所なのだろうか、トタン屋根や藁葺きで出来た家が立ち並ぶ区画となっている。次いで一瞬だったがぱっと藍色の光が見えた。次いで赤色、黄色と様々な光が見えては、爆発音が響く。はっきりとは分からないが魔法で乱闘が起きているように思える。


「マキノソラさんですね」


とっさに後ろから声をかけられた。少し驚いたが、すぐに冷静を取り戻して挨拶する。目の前には眼鏡をかけた学者風の男が立っていた。


「マキノソラです。あの、僕この状況があまり分からなくて」


学者風の男が優しく僕を諭すように話し始めた。


「安心してください。私は貴方と同じ留学生です」


彼が椅子を指さす。話が長くなるらしい。指定された通り、椅子に座る。彼も、僕の正面の椅子に座った。


「私の名前はゼノス。元々いた世界では魔法科学を研究していました」


彼の世界にも魔法は存在するのか。彼の色白な肌は研究者らしさを物語っている。

彼は次に僕たちの今いる現状を話した。


「この世界には東西南北に4つの大きな勢力を持つ国が存在します。私たちが今いる国は西の首都ラヴァニア。一番魔法に秀でた国です。魔法実技の能力が高いと見込まれた者を騎士学校に集め、育成し戦場に駆り立てています。私が見た中での問題点は、酷い身分の差と奴隷売買ですね」


一呼吸入れるゼノス。


「私と貴方は現在この国の王立研究員生として国から保護を受けています」



王立研究員。王宮に備えられた、王族の次にあらゆる特権が与えられている存在らしく、日本でいう大学院生っぽいなと思った。よかった、身の保証はされてある。これ自体は天使が用意した最低限の下準備なのだとか。どうやら僕は明日から新入りの研究員として迎え入れられるよう。


「一通り、説明も済みましたし、国王に挨拶に伺いましょう」


彼の言葉に僕らは部屋を後にした。

国王、一体どんな人なのだろうか。興味はあるが、酷く怖い。戦を知っている人間は、僕の知っている普通とは違う人のように思えるから。

こんばんは、カシです。


次回、ついに国王と対面です。マキノ大丈夫でしょうか。


自分はこれから食べ物とか人間性とか、普段の異世界ファンタジーとは違う視点から書いていきたいと思っています。

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