表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

異世界留学の案内人

異世界に飛ぶ直前の話です。

大学受験が迫る今日この頃。

家に籠って勉強をしていれば一日が過ぎていく。


世間のことはニュースで見る程度。アベノミクスがどうだとか、各地の気象異常とか、教育制度が変わってきただとか。だんだんと社会の仕組みや大人の常識を知っていく。


ここ最近は人ともろくに会話をしていない。少し気が楽。こんな状況が永遠と続いてくれればいいのにと思ってしまう自分がいる。ただ勉強をしていれば公平に評価をされ、世間に入れられる。といっても、最近は成績が伸び悩んでいるのだが。


もし今自分が勉強をやめれば、周りにいる脱落していった友人たちと同族になってしまう。そんな恐怖感が日々黙々と与えられた課題をこなす支えになっている。


いつからか、自分は友達の輪の蚊帳の外にいる気がしていた。誰からも必要とされてないのではないか。

プライドがあったからかもしれないが、人に媚びる態度はとりたくなかった。だから勉強に走った。少しでも価値のある人間になりたくて。そうやって言い逃れをしているだけかもしれないが。


4月からの予定は本気でどうなるか分からない。キャンパス生になってるのか、浪人してるのか、考えたことは無いが就職してるかもしれない。


2階の自室で、ただ机に向かって黙々と赤本を解いていると、誰もいないはずのリビングから物音が聞こえてきた。

夜勤上がりの母が帰ってきたのだろうか。それにしては早いのだが。丁度喉が乾いていたので1階に降りると、リビングから話し声が聞こえる。


母が誰か連れてきたのだろうか。多少違和感は感じたが、気を使い音を立てずにリビングへ続く扉を開けた。一度頭を下げて、次に母の顔を見ようとした際、僕は自分の目を疑った。


「アデューノ、マキノソラくん」


一瞬状況が掴めなかった。


リビングにいたのは、母ではなく、見知らぬ青年たちだった。逃げ出そうかとも思ったが、彼らの態度は酷く紳士的なもので、危機感は感じなかった。

彼らは僕が今までに見たことがない服装をしていて、中でも僕の名前を呼んだ男は、唯一体に豪華な装飾品を施していた。


まるで、天使みたいな。


「みたい、じゃなくて本物だよ」


心の中を読まれたらしい。もともとの性格の為か、本物だとは直ぐに信用することはできないが、それなりに雰囲気がある人だなと感じた。


「私は天界の通信使、第三天使ミカエラ。マキノソラくん、貴方に話があって来ました」


会ったことはないが、もし貴族として教養をつけたものがいるとしたら、こういう人を言い表すのだろう。立ち振る舞いや話し方に品がある。

一方で呑み込めない状況に僕は声がでなかった。そんな唖然とした顔の僕を見て、天使は小さく笑みを浮かべた。


「まず私たちの身の上を話しましょう」


そういうと、天使は隣にいた男性に何か指令を出した。執事だろうか、彼らには彼らなりの身分階級が存在するらしい。暫くして、執事はボードのようなものを持ってきた。それは、空間へ自由に置けるらしく、僕の目の前にそっと設置された。ボードの表面に地球が表示される。僕は驚いて一瞬だが距離をとってしまった。


「私たち天使は複数の世界を管理、統括しています。貴方が暮らしている世界は、ナンバー103。魔術は衰退し、科学技術と人権が成長段階の世界ですね」


天使がそういうと、ボードに映し出された映像が変化した。画面右上にナンバー147と記されている。


「しかしマキノくんのいる世界とは違う文明を築いたものがあります。例えばナンバー147。これは科学が衰退し、魔術が発達段階、人権に問題有りと認められている世界です」


画面には神殿らしい建物やレンガ造りの街並みの様子から人々の生活や魔法を使用した戦争の写真が次から次に映し出される。文明は自分の住む世界より遅れているらしいが、街並みや顔つきが自分たちと違っているようで少し似ているところがいつくか見られた。中でも目を塞ぎたくなったのは、拷問を受けている一児の母の写真だった。


「これを見て、何か感じることはありますか」


天使は表情も変えず、僕に話しかける。僕はその質問を真剣に考えてみる。

少しの沈黙ののち、思い当たったことをぽつりと呟いた。


「戦争は……。どうして地位のあるものは当事者同士の戦いに大勢の人を巻き込むのか、分かりません」


似ている。この世界も、僕らの世界も。日本史でも嫌ってほど、戦いを学んできた。だから、こんな意見が出たんだと思う。そんな僕の言葉ににこりと笑う天使。


「変えてみたいとは思わない?」


意外な言葉だった。変えてみるとは、もしもの話だろうか。


「できるものなら、やってみたいですけど」


皮肉交じりな答えだったが、天使は満面の笑みを見せた。


「私たちが貴方に会いに来た理由をお話ししましょう」


うちの椅子に座る天使。僕も隣に座る。


「私たち管理者は、直接貴方たちの世界に手出しが出来ない制約があります。しかし、留学生を派遣し外側からサポートすることはできます。例えば、文明の進んだ世界に住む学生を送り込むなんていうことをね」


そこまで言うと、天使は一度一呼吸置いた。どうやらここからが本題らしい。


「留学生は本来存在してはいけない者なので、歴史の表舞台には立たず、裏側からその世界に刺激を与えて貰いたいのです。そこでマキノソラくん、貴方に是非協力してもらいたい」


本当に唐突だな、と思う。少しづつ彼らが本物の天使だろうと見直していた所でこの質問だ。頭が追い付かない。


「留学ですか。でも」


言いたいことが天使にはすぐ分かったらしい。この一年間、両親にはどう話せばいいのか。そもそも受験が控えている。


「心配ありません。時間は私たち天使が管理しています。留学期間が過ぎれば、丁度今に戻ってこれることも可能です」


時間を心配しなくてもいい。それは意外な発言だった。今すぐに行ってもいい。胡散臭い話だが、そんな軽い考えさえよぎった。



「どうして僕のもとに来たんですか?」


「無作為に神様がお選びになりました。と言っても、マキノソラさんは相対的に見て適任だと判断されています。貴方の他にもう一人、ナンバー002から留学生が来る予定です」


無作為。たまたまってことか。運がいいのかもしれない。このチャンスは逃すべきじゃない。そう直感が得ていた。



「僕、留学行きたいです」



それを聞いた天使は笑みを見せ、「では」と僕に魔法をかけた。優しい光の輪が体を包む。

僕の意識はそこで途切れた。

初めまして、海賊カシです。

ぼちぼち上げていこうと思います。


歴史と社会問題がかなり好みのジャンルなので、異世界ネタとくっつけて物語を展開させていきたいなと思います。でも、飽きないように途中いろんなイベントを発生させていきますよ。待っててくださいね!(笑)


これからの内容に関しては、マキノが問題を解決していくのに合わせて人間関係や性格面でも成長していって欲しいなと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ