7……芽が出た
何だったんだろうなぁとか考えてるうちに潜った穴から何か出て来た。
人が手を合わせたような形の緑色の物体。それが伸びてきてパカッと開いた。
おお!何だコレ?
「お父さん!すごいよ!今落ちてきた木の実からもう芽が出てる!!」
パルコが叫んだが俺からしたら「つっこむのはソコかよ!」って感じだ。
パカッと開いた瞬間、そこから小さな光が飛び出して今も芽の上で浮いているんだから。
「今落ちたのかい?でもマザーは今花の盛りだぞ……実が落ちるのは不思議だが……もう芽が出たのが本当なら確かに凄いな!」
お父さんはマザーとパルコの方を何度か見比べた。
俺は目の前の光を観察してみた。
≪メグルの木の精霊≫
え? それだけ?
でも考えてみたら芽が出たばかりの木に精霊がついてるって凄いことかもしれない!
「くん(君すごいね)」
今では葉の数が増え小苗ほどになった木に鼻を寄せて話しかけてみる。
すると光から声が聞こえた。
『わたし 掘る 出す』
片言だが俺は理解した。
思い切り苗の横の土を掘り返す。もちろん根を傷つけないように少し離れている。
「こらルーペ!何やってるんだ。やめなさい!」
パルコが言うが俺はやめない。
それはもちろん光から声援が聞こえたからだ。
『がんばる する』
まだ何も出来る事がない俺を頼ってくれているらしい小さい命がある。
張り切って何が悪い?
前足と鼻先を器用に使い、根をくるむように土を残して掘り起し完了!
「わぅん!(俺はやったぞ!)」
「あーあ、どうしようこれ……」
俺の頭をぐりぐり撫でながらパルコはお父さんを仰ぎ見る。
「このままだとここに植え直しても心配だなぁ……家に持って帰って様子を見てみるか?」
「そうだよね、かわいそうだもんね」
それで良いと思うよお父さん。
これってもしかしたら俺のお願いが叶うのかもしんないし!
ちょっと嬉しい♪
思わずマザーを見上げていた。
声は聞こえないが何か空気がやさしく感じる。
子供を送り出す母親ってとこなんだろうか?!
そうこうしているうちに苗は山菜小分け用の布袋の一つに土ごと入れられて籠に入れられていた。