6……落ちた
「マザーウッディ―の花が咲いている時に幹に抱き付くと病気が治ると言われているな」
へーそうなんだ~
「……」
パルコは無言でお父さんに疑いの目を向けている。
お父さんが縁起のいい話してるんだからさぁ、子供らしく喜べばいいのに……
「信じられないか?でも父さんは信じてるからマザーに助けがいただけるなら貰いたい。
もし見えない病とかあったらお前たちを悲しまるからマザーに治してもらう」
お父さんはそう言って幹に近づくと抱き付いた。
するとお父さんをクリアグリーンの光が覆って、それはすぐキラキラした光になって消えた。
あれが病気を治す力?
「信じられないか?」
「……ちょっとだけ」
お父さんが幹から体を離して尋ねるとパルコは小さく呟いた。
そう言いつつ幹に手を置くパルコにもクリアグリーンの光は下りてきた。平等なんだね。
この目で見た俺はもちろん信じるよ。
前足二本で幹の根元の部分に寄り掛かる。もちろん光は下りてきた。
「くん(ありがとうマザー)」
『いいえ』
空気の中にマザーの慈愛の微笑みを感じた。
「わたし達の村が実りに恵まれているのは花の咲いたマザーウッディ―に出会ってきた代々が豊作を祈ってくれて来たからなんだよ。もちろん父さんもな」
お父さんは両の手を合わせた体勢でパルコを見る。
パルコはやっぱり無言。
「お前も一緒に祈ってくれるか?」
パルコが渋々でも頷き手を合わせたのを見て、お父さんはマザーウッディ―の方に向き直ると目を閉じ頭を下げた。
パルコもそれに習う。
祈りは気持ちが大事だよね。うん。
でも、俺は犬だし別に豊作を祈らなくてもいいよね?
掌を合わせるのは無理なので、前足を横に揃えてくっつけると腰に力を入れて、よいしょと前半身を持ち上げる。バランスとるの難しいので速攻でお祈りする。
「く~ん(うちの傍にもマザーみたいなメグルの木が育ちますように)」
瞬間、マザーの姿がブレたような気がした。
しかし気にせず辛い体勢を速攻解除。腰がプルプルしてしまった。
息を吐いたところに上から何かの気配!
と感じた時には俺の頭に何かがぶつかっていた。
「きゃん!」
俺の悲鳴でパルコが振り向き、俺の頭にぶつかった物体が弾んで地面に落ちたのを見ていた。
その小さな物体は地面に落ちた瞬間に白いしっぽを生やし、そのしっぽの先から地面に潜っていった。
驚きつつパルコがそれを凝視していたので、俺も頭の痛みをこらえつつその横から見学。