10……生まれた
次の日は家の中が朝から慌ただしかった。
特にお父さんとお母さんが。
俺とパルコは蚊帳の外な感じで落ち着くのを待っていたが、俺は飽きてきた。
『ガーディ、俺だけで外行っても大丈夫かな?』
俺と同じく様子をうかがっていたガーディに尋ねると、森に入らなければ大丈夫と言われたのでドアを開けてもらって外に出た。
家を出た途端に人の声がたくさん聞こえた。でもごちゃごちゃでよくわからなかった。
まあいいや。
まずは畑に小苗の様子を見に行くとしよう。
近づいていくとあの精霊の光が少し大きくなっているように見えた。
元気になったようだ。
「くん(おはよう)」
葉っぱとか、しなんとなってないかよく見ていたら光に名前が見えた。
≪ファイリィ・メグルの木の精霊≫
おお!名前がついてる!!
マザーから独立したってことかな?!
『おはよう。森ではありがとう』
昨日の掘り返しの事かな?
言葉も流暢になってるな。
俺はまずブンブンと首を振って見せる。
「わう(あんなのなんて事ないよ)」
『あなたの誕生をマザーも喜んでた。お願いもお祝いに叶えてあげたくなったみたい』
俺の誕生?
思わず首をかしげるとファイリィはポンと光を弾けさせた。
え?と思ってたら光のあった所にちっちゃい人が浮かんでいた。
『わたしの事見えるでしょ?』
俺は頷く。
自分をファイリィだと名乗ったそのちっちゃい人は二,五等身しかなかった。
髪の毛はつる草の新芽みたいに無秩序にクルクルカールしていて肩につかない程度。
目がチラリとしか見えない。でも色は目も髪も緑色。肌は茎に似た白黄色。
光と同じ黄色のワンピースを着ている。靴は履いてない。
大きさの比較としては俺の頭が二頭身分くらいかな。
つまり見える目を持つ俺がお願いしたからファイリィはここに来れた。という事らしい。
そりゃすごい!
『わたしがここにいるって事は、この小さな村に守護者が就いたって事になるのよ』
そんな一大事なんですか?
俺が恐縮しているとファイリィは俺の鼻先をぽんぽんと叩いた。
『良い事したと堂々としてればいいの。あとわたしまだ周りの事よくわからないから教えてね』
あ、それは俺もです。いろいろ見聞きしたら教えます。
『よろしくね』
ファイリィがにっこり笑った。
「うおん(こちらこそよろしく)」




