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某国出張報告書  作者: モコ田モコ助
第2章 13年9月
7/43

1.ワンさんと一緒 初日

 二度と行きたくない。


 某国との初回接触は最悪の結果に終わった。


「そんな事ないよ。悪く言っちゃダメだよ」

 工場長は、そんな事言ってるが、どういう印象を得るかは人それぞれ。


 悪い事に、話を進めてきたキューヨーの納品が滞りだした。

 電話やメール、バイヤーさんを通しての話だと埒があかないので、直接乗り込む事になった。

 でないと、ヤバイ! クビになる!



 今回の予定は3泊4日。


 前回(初回)より1日短い。これくらいが体力的にも楽になる。

 1日目は移動日。キューヨー近くのホテルに入ってお終い。

 2日目が本命。キューヨーでの打ち合わせ。

 3日目は海寧にあるでっかい工場で商談。そのまま海寧泊。

 4日目は移動日。上海へ移動してそのまま帰国。


 こんなスケジュールなのだ。

 

 もとより、要注意点は2日目の大要塞キューヨー。

 ここさえやり過ごせば! 海寧は表敬訪問。軽くサンプルの話だけ。

 はじめの方に重たいのを持って行く作戦!


 2日目さえやり過ごせば(戦う意思既に無し)あとはラクショーっしょ?


 第1章に出てきたバイヤーのワンさん(気の良い某国人)は、最初から最後まで同行してくれるし、なにより工場長は日本でお留守番!

 ほんとラクショーっしょ?

 2日目さえ気をつけてればラクショーっしょ?


 さて、9月の半ば頃。早朝。

 某国民間航空会社(MU)でKIXを飛び立つぜ!


 ワンさんが、搭乗手続きカウンターで、にこやかに話しかけてきます。


「アズマダさん、非常口席を予約しましょう。あそこ、足下広いんですよ! 滅多に落ちないし、仕事無いし、穴場なんですよ!」


 なんかまずい。

 どこかで聞いた話である。


 トラウマがムクムクと顔をもたげてきたし。

 いやいやいや、この人某国人だから某国語ペラペラだし。母国語だし。


 なので、きっちり広々スペースを確保。

 やったね!

 すげー幸先良いし。


 高速鉄道に乗り込む時間も、長めの3時間確保してるし。


 よゆーっしょ!


 時間に遅れる事なく、飛行機は離陸したぜ!

 ノートラブルのノープレブレムで上海東浦空港、第一ターミナルへ到着。


 ををを! しかも今回は連絡通路で直接施設へ入れるし!

 さくさく手続き済むし!


 荷物だって……ほら、結構早めに私のトランク出てきたし!

 さあ、後は同行者のトランクが出るのを待つだけ!


 トランクが出てくるのを待つだけ。

 出てくるのを待つだけ。

 待つだけ。

 だけ。

 ……。


 出てこねぇし!


 おーい! 「荷物トラブル用」と書かれた席に座った係員!

 ワンさんが、係員に苦情を持ちかけました。


「10分お待ちください。すぐ出てきます」


 20分経過。

 荷物運搬用のベルトコンベアー・ストップ。


 おーい! 係員!

「もうすぐ出てきます。10分お待ちください」


 いま、どっかに連絡入れた? 入れてないでしょ? だったらどうして10分って時間が出てくるの?

 


 時間の余裕は……。


 ここから高速鉄道乗り場である虹橋駅までバスで1時間。

 差し引き1時間半の余裕だし、ラクショーっしょ?


 私の荷物じゃないんでぇ、ぶっちゃけ俯瞰の視点? 

 ワンさんだけでなく、日本人が3人ばかり、同じ理由で待ってるし。


 まだ大丈夫!


 鉄道の切符は、予約してあるから、駅窓口で引き替えるだけ。

 逆に言えば、予約してないと列車に乗れません。

 乗れないと……どうなるんでしょうね?


 さらに30分経過。

 まだコンベアーは動かない。


「10分お待ちください」

 だ・か・ら! どこと連絡取って10分っつってんだよ!

 ま、まあ、あと1時間も余裕有るし……。


 そこから20分経過。

 のこりの余裕40分。……そろそろヤバイんじゃないの?


 切符を引き替えようとしたら、駅窓口で列に並ばなきゃならないし……。

 この国の行列っつたらアレだし……。


「間に……合わないんじゃない?」

 不安が口から出た。


 普段温厚なワンさんの顔色が変わったし!

 某国語で激しい抗議がはじまった。

 広い荷物受け取りホール中に怒声が響いています。


 やっとのこと、荷物受け渡しトラブル用係員が重い腰を上げた。

 関係各所に電話しまくり。

 電話する箇所があるなら、もっと早く電話しとけよ!


「ワンさん、今まで動かなかった係員に何言ったんですか?」


「あなたの名前を控えました。荷物が出てこなくて、列車に遅れたら、それはあなたの責任です。二人分の高速鉄道料金と、ホテル代を請求します。そのため、あなた個人を訴えます。そんな風に言ったらやっと動いた。そこまで言わないと動かない」


 あー、つまり、フロアのトラブル用係員なのに、自分に責任が無いとしてたんだな。この1時間ちょっと、なにも手を打たなかったと……。

 ちょっと……微妙に国際問題な発言は控えようと思います。


 少し待ってると……、日本人3人分を含む荷物が出てきた。やればすぐじゃん!


 ダッシュだダッシュ! 高速バス乗り場までダッシュ!

 運がいい。虹橋駅行きの高速バスが、出待ちしてるぜ。


 荷物と違い、バスは直ちに発車。助かった!


 このバス、空港第2ターミナルで客を拾ったら、すぐに高速道路へ入ります。

 高速に乗れば、混んでても1時間で到着できる。しかもこの時間帯。交通ラッシュの時間帯から大きく外れてるし!


 途中停車駅は、ここの空港第2ターミナルと虹橋空港、そして目的地の虹橋駅。


 ラクショーっしょ?


 一つ目の停車場、第2ターミナルに到着。停車時間は約3分の予定。


 ……10分経過。

 まだ出発しない。


 なんで?


 外国の旅行者とドライバーがもめてるし……。


 都合20分経過。やっと再出発。

 残りの猶予時間40分。バス移動時間を含めると1時間40分後に、予約してある列車が出発。


 よし! まだ間に合う!


 高速に入ったら予測通り空いてます。ここで5分ほど稼げました。残り45分。

 どうにか45分の猶予をキープしたまま、次の停留所・虹橋空港に到着。目的地の虹橋駅はすぐそこ、数百メートル先に見えています。


 よし! 予定通り!


 ……5分経過しました。なかなか発車しませんが、なにか?

「40分残ってるけど、いやな予感がする」


 私の呟きにワンさんが反応しました。


「今日はこんな日です。勘を信じて降りましょう。二本の足で走りましょう!」

 バスを降りて走れや走れ! 保ってくれ、トランクのタイヤ!


 あっというまに虹橋駅。

 中航泊悦酒店って名称のホテルと、虹橋空港(主に国内線)と、列車の駅が合体している巨大な施設である!


 で、中へ入ってみると……。


 すげぇ! 駅の待合いホールが空港のようにでけぇ!

 でも、人が多いので、手狭感半端ねぇ!


 インターネット予約専用切符引き出し窓口で……、ものすげー並んでるぜ!


「ここまでくれば、もう大丈夫です!」

 ワンさんが男前の顔で笑ってます。ホントでしょうか?


 それを信じて……。

 20分後、切符ゲット。

 2時間のマージンが20分に……。


 なんとか電車の中の人になれたぜヤレヤレ。


 車窓から外を眺めてぼんやり。

 線路沿いの巨大看板をボーッと眺めています。


「○○衣料」

「△△化粧品」


「山口百恵」 

 は?


 


 その日はキューヨー近くのホテルで1泊。

 こっち方面は鬼門か?




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