5.4日目、青い星の記憶(嘘)
キューヨーにて、精力的なすりあわせを終え、夕方の高速列車に飛び乗った。
全席指定席である。故に、乗り遅れたら後がなにので必死であった。
全体力と全精神力と全霊的因子を使い果たし、ぐったりとして座席に座っている。
工場長と今後を打ち合わせする気力も残っていない。
口から白い軟性物質が出ていく夢を見て飛び起きるほどである。
MP=0状態。
体力は残っているけど、ステータス異常状態。
上海虹橋駅に到着。
とにかく仕事は終わった。
上海のホテルに入り、メシ食って、会社に報告書送って寝よう。
明日は移動日。飛行機に乗って帰るだけの余裕日。言わば休息日。
もうここまで来れば、何も起こらないでしょう!
工場長もはしゃいでいます。
ホテルは、上海東浦空港の第一ターミナルと第二ターミナルのど真ん中。駅中である!。
到着したのは午後9時半。
「部屋に荷物を運んだら、外へメシ食いに行こう」
某国のプロ、工場長のお誘い。
「疲れてるし、すぐそこのホテルのレストランで済ませたいんですが……」
「せっかく来たんだから、外で食べよう。美味しいうどん屋を知っている」
嫌な予感がするけど、こんな上司だけど上司には逆らえない。
……うどん食べたいし。
荷物を部屋へ放り込んでから、東浦空港の中を重い足を引きずって歩き出した。巨大施設だから、移動だけでHPを消耗する。
かなり歩いている。まだまだ歩くの? 途中、ケンタがあった。
「もうここにしませんか?」
「もう少しでうどん屋だから」
いい加減足が痛くなってきた頃、施設の突き当たりに到着した。
突き当たりにうどん屋が……無いね? どういうこと?
工場長が、言い訳がましく呟いた
「ここら辺に出来たって聞いた人から聞いたんだけどなあ」
……噂話でここまで来たんかい!
てか、メシ食うところ、店仕舞いに入ってるんですけどぉ……。
ああ、嫌な予感的中。やっぱ午後10時に店じまいなんだ!
「仕方ない、ケンタに行こう」
工場長、たぶんケンタも営業時間終了ですよ!
「そんな事ない。ダイジョウブダイジョウブ!」
大丈夫って何を根拠に……ああ、やっぱ業務終了だ!
奥の厨房では、掃除がはじまってるし、レジ開いてるし!
「やっぱ閉店ですよ!」
「そんな事ない。まだ人がいるじゃないか」
その人は掃除してるんだよぉ!
だが、工場長はお構いなしです。
「あれ二つプリーズ!」
カウンターのお兄さんは肩をすくめて、某国語で何か喋ってます。何言ってるんでしょう? 店仕舞いですって言ってるようにしか伝わってきませんが?
工場長はお金をカウンターに広げ始めました。
恥ずかしいから! ヤメテー!
そんなこんなで、お店のメシは無し!
ホテルのレストランも10時にお終い!
某国ファミマもシャッターガラガラ!
うどん食べたかった……。
おい!
おいおいおいおいおいおい!
嬉しがりの工場長、はしゃぎすぎて痛恨の一撃!
「えーと、開いてる店なくなっちゃったね」
工場長が私と目を合わせようとしませんねぇ。なぜかな?
空気が重い!
どうしましょう?
こうしましょう!
「えーと、工場長。私、昼のキューヨーの一件で胃の調子が悪くなったみたいです。出来ればなにも食べずに寝たいです」
「おおそうかい! じゃ、ここで解散しよう。お休み」
「お休みなさい」
私はスッカラカンになった胃に手を当て、具合が悪そうにして、部屋へ戻りました。サラリーマン用語で言うところの「擬態」である。しかもレベル5の擬態。
部屋に入り、ドアに鍵をかけたのち、備え付けのポットで水を沸騰させます。
そして、
トランクを開け……「カップきつねうどん」を取り出します。
お湯を入れて3分待つ間、カロリーメイトを取り出して囓ります。
またトランクから、野菜ジュースを取り出して、失った何かを胃に流し込みました。
ああ生き返る……。
やっぱ、うどん旨めー! 鰹出汁サイコー!
トランクには、日数分の美味しい水。日数分のカロリーメイト。野菜ジュース数本と、小腹空いた用のシリアルバー数本。それだけ仕込まれている。
上司の顔立てるの、難しいわー。
翌日最終日。
空港中で宿泊したもんで、特にトラブルはありませんでした。
飛行機も2時間遅れただけで無事に出発。
無事帰国できました。
下痢が酷かったけどね!
たぶん神経性だろうけどね!
ヤレヤレだぜ!
以上で、第1回出張報告を終了させていただきます。
ご静聴、ありがとうございました。
一旦空けさせていただきます。