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某国出張報告書  作者: モコ田モコ助
第1章 13年9月
4/43

3.二日目はすっ飛ばして、三日目(ナンジェンからズーチーへ)

 二日目は打ち合わせと納期確認で、大した問題もなく過ぎていく。


 昨夜、確かに工場長は「1階ロビーで」と言ってただけど、2階の待ち合わせのつもりだったらしいという何の変哲も無いトラブルだけであった。

 こっちゃ大慌てだぜ、こんにゃろめ!



 昼は工場近くの立派なホテルのレストランでチャーハンいただきました。

 これが絶品! 長粒種と相まって、何とも言えないお味に仕上がってます。日本負けたね!

 

 夜は鍋だった。

 丸い鍋を二つに仕切って、違うスープで炊き込んで食べる方式。太極拳マークみたいな? 円を組み合わせた? 面積を求めよ? 的な仕切りである。


 一番驚いた具材が日本の豆腐!

 卵豆腐って書いてました。卵豆腐が入ったビニール袋に。


 そう、大方の予想通り、ビニール袋ごと鍋に入れ煮込みのがデフォ。

 一人じゃ捌ききれねぇよ! もう一人ツッコミ回してくれよ!

 もうーどーにでもなーれー!

 飛び交え! 妖精さんっ!


 今日も空が青い。

「日本で言うところの国体がナンジェンで開催されています。その間、国からの命令で、公害を出さないように煙を出す全ての工場が操業をストップしています」

 うむ! 理解した!


 2日目はそんな程度で通常運転であった。



 で、3日目。


 南京南駅から、上海虹橋経由してズーチーまで高速鉄道の旅となる。

 

 車内では盛んに鉄道会社の自画自賛ビデオが放映されています。誰も見ていません。見ているのは外国人だけです。


 上海虹橋駅を過ぎると、線路沿いの原っぱや畑に巨大看板が現れ始めるのが特徴。

 現地の自動車会社とか、化粧品とかの宣伝用巨大看板である。


「○○電工」

「△△公司」


「山口百恵」 

 は?


 今なんか見たぞ!

 幻か?




 さて……、


 今年より、新たに取り組んだ、でかい工場でである。

 昨年、飛び込みで出した仕事に対し、なかなかの対応を見せてくれた。高品質でもあり、これは買いだとばかりに、今年より発注をかけたのである。


 その工場で、納期が遅れだしたので、詳しい打ち合わせに向かうのであった。

 ラクショーっしょ? ラクショーっすね?


 その工場の名前は「キューヨー」。

 ノープレブレムっしょ? 某国出張ラクショーっしょ?




 10時頃の電車に乗って、夕方ズーチー駅着。某国は広いと言われているが、広さを実感する移動距離&時間である。某国スゲーぜ!


 宿泊したホテルでお弁当(パンの詰め合わせ)を作ってもらった。これはご厚意。この国の人は、ある程度親しくなると、結構融通を利かせてくれます。


 電車の中で、ズーチーの工場を担当している某国のバイヤーさんより電話が入った。


 普通、バイヤーさんが付いてくるのが正式スタイルなのだが、今回、どうしてもスケジュールが合わなかったのである。

 で、うちの工場長が「ダイジョウブダイジョウブ! イケルイケル!」と請け合ったので、日本人二人で向かう事になってしまったのだ。 


 だからといって、放ったらかしにしているようでは、日本で仕事なんかできねぇし。

 頃合いを見計らって、お伺いの電話をかけてきた。といった所であろう。


 電話の内容は、

「商品の発送が遅れるようだったらエアー便で送ってもよい、と総経理と話付けておいたから、言いたい事言っていいよ! みんな飲んでくれるよ!」

 おお、それは頼もしい!


 ザックリ言って、大量発注を3つ。間に細かいのを1つ挟んで。という発注である。


 気になることと言えば……。


 細かいのは、大量注文を出したから引き受けてもらったようなのだけど、何の心配もしていない。

 だって、バイヤーさんが、総経理と直接話し合ってOKもらったんだもん。

 何の心配もしてませんよ! ハッハッハッ!


 ラクショー!



 到着時間は工場の操業が終了する時間なので、乗り込むのは明日である。

 今日は移動日。しかも電車内。ゆっくり居眠りができるというもの。

 いやー、移動時間が長いって不便だなー!

 ウハウハ気分でお弁当を摘むとしよう。


 工場長の電車あるあるを聞きながら、電車は揺れる。


 某国の高速列車(新幹線含む)は完全指定席予約制で、チケットを無くすと。当たり前だが乗れない。乗り遅れたからといって、次の電車に乗せてくれない。

 待ち受けているのは確実な行き倒れ!


 それを踏まえて――。


 昔、工場長は乗り遅れたとの事。


 どうしたか?

 あんなこと、ここには書けねぇし。とんでもない裏技を使って目的地へ到着したという事だけ伝えておこう。


 その頃は携帯も無い昭和のよき時代。とてもじゃないが私じゃ無理。充分死ねる。

 いつか工場長が所持しているはずの勇者の剣を見せてもうとしよう。



 列車では日本と同じく売り子さんが巡回してます。

 駅弁スタイルつーか、アイスの入った「箱」を直接両手で持ってます。首から紐なんかぶら下げていません。で、「ハーゲンダッツ」と連呼しながら歩くアイスクリーム売りさん。

 両手塞がった状態で、どうやって金と品物をやりとりするのかかが謎。


 ビニール袋を引きずりながらゴミを回収していく女性。

 ビミョーに文化の違いを感じるが、これも異国出張の醍醐味!



 いい加減、座り疲れてぐったりした頃。ズーチーへ到着したのであった。


 ホームに降り立つ私。トランクをコロコロさせて、ホームを歩く。

 鞄の振動が大きいぜ! よく見ると、ホームの床が凸凹だぜ!


 煉瓦というかブロックというか、床の構造物が日曜大工レベル。

 日本人として許せない所である! が、郷に入っては郷に従え。ここはぐっとこらえることとしよう。



 ズーチーとは、上海から高速鉄道(この頃は新幹線が止まらない駅だった)で2時間半もかかる田舎。


 田舎故に安く商品が上がる。安く上がる故に品質が不安。


 その中でも、これから訪問するキューヨーは、ピカイチの品質です。創業者の方が日本マニアで、年に3回は日本を訪れるという方より具合。


 創業者の方って、ぶっちゃけ、おばあちゃん。

 小さな工場を経営していた、旦那さんと死に別れ、工場を引き継ぎ、息子を女で一つで大学にまで行かせた女傑。


 工場は順調に大きくなり、やがて大学を出た息子さんが後を継いだのであった。

 今では、おばちゃんが会長。息子さんが董事長(とうじちよう)に就任したのである。

(董事長とは、オーナ社長というかCEOというか、会社のトップです。日本と某国は組織が違いすぎるので適切な言葉が見当たりません)



 そんなこんなで、お迎えの案内人兼通訳の人と接触したのである。

 名前はシェンさん。

 これからずっと、現在もつきあいが続いている。重要なキャラクターなので、名前だけでも覚えておくように! シェンさんね、シェンさん。


 このシェンさん。見た目はアクマイザー3のガブラと、ミニラを足して人間で割ったような人なつっこい好人物です。


【見た目に騙されてはいけない。自分の見た目が他人にどういう印象を抱かせるか熟知している。この人も化け物みたいな商人である。基本的に、悪い人間か良い人間かは、未だにわからない。大事なのは、利用する価値があるかないかである】



 かなりの長期にわたり、日本で原材料の仕事をしてきたプロ。

 今は自分の小さな工場の総経理職を後輩に譲り(立場は総経理のままですが)、いろんな工場と日本企業を結びつける仕事(その他にも秘密のアルバイトがありましたがw)をしている。もちろん日本語ぺらぺーら。

 

 シェンさんの愛車は車は三菱ランサーEX。ここに荷物を放り込んで、いざ出発!


 シェンさん曰く「日本車さいこー!」だそうな。


 ズーチーという地方。田舎とは言え、人口がバカにならない某国、巨大な田舎町である。

 田舎と言うだけあって(シェンさんが田舎って言ってるから田舎なんだろう)、交通マナーが南京の比ではない。

 4車線と3車線が交わる大きな交差点に信号機が付いてない(2年経った今も付いていない)。

 南京では3車線道を4台並んで走る風習があるが、ここでは3車線を5台が並んで走る。

 計算が合わない1台は、対向車線を走っているのだ。


 ランサーは、汎用型近接感知レーダーを四隅に装備している。死角から割り込んでくる車対応のためだそうだ。

 これが無いと事故の危険度が飛躍的に増すのだそうな。

 しょっちゅうピーピー鳴ってるんで、役に立ってるかどうかは不明であるっ!


 途中で2回ほど事故を目撃した。お互い、親の敵かと思われるほど激しく罵りあっている。なんでも事故の優劣に関わらず、言い負かされた方が加害者となるシステムらしい。

 だったら仕方ないな!


 たとえば……、

 青信号で歩道を渡っていた日本人歩行者が、後ろからスクタに突っ込まれ事故りました。

 歩行者は打ち身だけ。スクタのおばちゃんは骨折。


 この状況も、日本では100%スクタの過失でしょう?


 ところが、日本人歩行者が、スクタの骨折における仕事に行けない分の保証金を払わされる事になったって話だ。


 ちなみに、事故ったら日本大使館へ電話を入れるのが正解、との事。

 大使館の電話番号だけでなく、大使館員の携帯番号も控えておこう。大使館は定時に終わるからな!

 気をつけよう!



 さて、マンハッタンで大量発生したゾンビ達から逃げ回る群衆にも似た車群を抜け、無事故で目的地に到着した。

 時間も時間なので、シェンさんの事務所で、明日の打ち合わせ。


 打ち合わせと言っても、通訳だけの仕事で、これといった内容は無いよう、だったが……。


 なぜか、シェンさんの従兄さんが、事務所でたむろしていた。

 この兄ちゃん、某国を脱出してカナダ国籍を取得しているとのこと。

 もうね、某組織の悪口ばっかでね。かなり突っ込んだ悪口でね……。日本人の我々が周りを気にして心配したほどだった。



 そして、この日は終了。

 シェンさんの案内おごりで、この地方名物の羊料理専門店に移動することに。


 この町、なんかね、親近感があるの。

 何でかなー、と考えてたら気がついた。

 ジャッキー・チェンの映画に出てくる田舎町そっくり!


 埃っぽいところや、「お前に食わせるチャーハンはねぇ!」って包丁を振り回す大将が出てきそうな町並みである。


 内陸部だったせいか、微細な砂埃が多い。

 食器は、埃対策のため、ラッピングされている。ラッピングされている物は埃が付いてない……なんてワケは無い。

 袋から出して、お茶で洗わないといけないよ。そんなふうに、ニコニコ笑うシェンさんから教わった。

 ……ああ、そういう所なんだな、と理解したぜ!


 ぶっちゃけ、羊料理は……料理の種類によって美味しかったり、それなりだったりしました。

 羊の血を使った煮凝りだけはかんべんな!


 ここでは茶色いお酒、紹興酒を少量だけ。少量だけいただきました。

 このお酒は、少量がよいのだ。大量に飲むと……(後日談)。



 今日は疲れていたので、割と早い時間でホテルへ引き上げる事となった。

 この国、チェックインする際、前金(デポジツト)が必要なのである。会計の時、差額を返してくれるけど、大体倍の金額を用意しなきゃならない。余程(以下略。


 クレジットカードがあれば現金は必要ないぜ。ただし、カードの暗証番号も必要だがな!


 部屋は広かった。なかなか良い。グッーッド!

 廊下に沿って、トイレとバスタブ付き風呂。壁一枚隔ててダブルベッド。

 その壁が、一面ガラス張りだったりする。

 ベッドから風呂が丸見え。妄想を膨らませてどうすんの?


 ネットにパソコン繋いで、メールの確認。


 ……すげー遅いの。


 シャットダウンしたら……ウインドウズの更新開始、ハッハッハッ!……。


 ま、まあ、明日はラクショーなんで、これくらい屁でもねぇぜ!

 パソコン付けっぱなしでベッドに潜り込んで寝てやったぜ。




 翌日。

 お迎えの車に揺られること1時間。人身事故2個を横目で見つつ、要塞……もとい、新しい工場「キューヨー」へ。


 そして……


 第1話へ繋がるのであった!



 俺たちの冒険はこれからだ。


 ゴゴゴゴ……




次話、0話の後の修羅場…。

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