15年1月さらば大要塞-落日編
二日目の午後、大要塞にて。
全員の予想通り、話は平行線。
日本サイドは、数字を提出し、覚え書きもテーブルにのせた。
キューヨーサイドは、……①一生懸命やった。 ②他社から不良は出ていない(立証方法無し)の二つだけを主張。
もう一度言う。話は平行線であった。
(どなたか、何を言っても「実際不良は出たけど一生懸命やったのだから関係ない」を繰り返す論を論破できる方、おられませんか?)
新幹線の予約時間いっぱいまで(ここから、早い時間で引き上げる理由付け)実の無い話をお互いに怒鳴りながら続ける。
例の(雇われ)総経理も、真っ赤な顔で怒鳴り散らす。
「時間いっぱいです」
T氏の仕切りが入った。
話は終了。
とたんに総経理の顔が柔和な物になった。
にこやかに握手して話は終了。
駅までで送ってもらった。
それでお終いである。
そういうものである。思えば私も慣れてきた。
この工場へ二度と足を運ぶ事は無いだろう。
キューヨーからは、高級管理職の流出だけにとどまらず、部門管理職、ならびに現場管理職まで逃げ出していた。
証拠はある。
カムイで見慣れた顔を多数見受けられたからだ。
あっちも私を覚えているようで、すれ違いざま、手を振って笑ってくれていた。
そうそう、創始者にして、ここにはいない董事長のお母さんは、……。
総経理の話だと、養子をもらったらしい。
そういうものである。
たった一人残った雇われ総経理が、その後どうしたかは知るよしもない。
帰りの新幹線は速い。
2時間以上かかかっていた距離を1時間半以下に縮めた。
この差は大きい。
上海から田舎町を日帰り可能とした。
日本の新幹線が大阪-東京間の出張を日帰り可能とした結果は、日本の発展に寄与した。
果たして、某国はいかがだろうか?
田舎と上海の賃金格差が無くなりつつある。
田舎故に安かった人件費が高くなる。
上海で物をつくっても、田舎で物をつくっても同じ値段。しかも、上海の方が価格競争に切磋琢磨していたマージンを残している。
田舎へ行く必要はなくなりつつある。
カムイにも、いつかは訪問する事がなくなる時期が来るのかもしれない。
某国某機関は、現在、公害並びに従業員保険に厳しくなっている。
この国で厳しくなるとは、明日にでも操業停止命令を発するという意味でもある。
規定値以上の害物を排出している工場は、短い期日までに改善しないと、即操業停止。
従業員に保険かけてないと、事業停止命令。給料未払いで殺人事件まで起こっている始末。
上海など大都市近辺で価格が高くなってる理由は、工員の給料アップと、こういった諸経費の高騰が占める割合が高い。
田舎が安いのは、環境汚染並びに、人権無視の給与体系による要因が大きい。
日本で、某国の賃上げや円安にも関わらず、販売価格を維持している大手小売店が多い。
値下げせずとも外税を内税表記にして、実質値下げをしている。
その値下げ分は、どこがかぶっているのか?
主に某国である。
某国の田舎である。
人権を無視して作った製品は安い。
環境を無視して作った製品は安い。
安い商品を並べる店は良心的だと言われている。
果たして良心的だと言えるのだろうか?
安い商品の生産バックをどこまでご存じか?
「安さ」=「店の良心」だと、なぜ信じられる?
だとしたら、安い良心だな、としか言いようがない。
さて皆さん。
私達の国の小売店は、自分達の利益率を下げてまで「良心的」に、商品を「提供」していると、今でも思っておられますか?
あなたが手にされた、安くて品質のよい商品は、犠牲無しで手に入れた物ですか?
ちょっとでいいです。
疑ってみてください。
こうやって書き連ねると、某国ネタというよりは、
工場長や、T氏、シェンさん、ワンさん、セイさん、総経理、董事長ら第三者が巻き起こすトラブルに、私が巻き込まれた冒険譚だったように思われます。
私が被害者だという事実は、皆さんの目から見ても間違いない物と確信致します。




