14年10月・セイさんと飯を食う
人は、食べるときに本性が現れる。
私が中2の時、同級生の女の子が言っていた名言である。
……いや、私に向かって放たれた言葉ではない!
さて、今回は、4泊5日の旅である。
某国でエボラ発症じゃね? というニュースが流れた時期である。
現地にて、エボラで検索しても一件も引っかからなかった時期である。
初日は普通。
商談も、うちの会社が持つ特許商品に関する販売の話なので、こっちが話をリードできる。これは久々のラクショー・コースか?
いやいやいや、毎回ここでラクショーつってエライ目にあうんだ。自重しよう。
夜は卵料理の美味しい店……という触れ込みだけど、……大して美味しくないな。
他の料理も、上海にしては美味しくない。臭いのがなによりダメだった。
店で初めて猿の脳みそを目撃する。食欲無くす。
問題だったのは2日目。
セイ氏に連れられ、彼が勧める工場を見学に。
このセイ氏、温和な顔つきの某国人。中国公司の日本駐在員である。
物腰が柔らかく、今時の某国人にはいないタイプである。
セイ氏の友人が出してくれた車に乗り込んで出発。
その日はハイニンで1泊。
夕食はホテルの前の道路(4車線)を挟んだ向こう側の日本食店。
セイさん、そのご友人、そして私の3人で食事を始めます。
この店は、某国人の間で人気の食べ放題システムを採用。
始まりは19時。日本食でもあり、腹も減ったことだし、どんどん食べていきます。
お酒は日本酒。お銚子を何本もお代わりします。
そろそろ、ドンブリ1杯の分量が腹に入っただろうか?
他の2人も同じ分量を胃に収めている。
時刻も21時を回った。
そろそろお開きにしてもらいたい。会社へのレポートや連絡事項もある事だし。
その旨を伝えると……。
「何言ってるんですか! 食べ放題ですよ。食べなきゃ損じゃないですか。まだまだ食べますよ!」
セイさんは笑いながら一升瓶に手を伸ばす。
お銚子を何度もお代わりするものだから、店の人が一升瓶を置いていったのだ。
それをチマチマお銚子に移し替えて、某国人同士で飲んでるのだ。
あー、……瓶だから当然冷や酒ね。
……つーか、この人達、燗でも冷やでも関係ないのか?
店の人も店の人で、めんどくさいからといって一升瓶をポンと置いていくか?
理解できねぇぜ。
22時を回ったところでギブアップ。
いったい、こいつら、いつまで食ってるんだ?
先に帰らせてもらいます。
「ホテル前の道路を横断するの、気をつけてくださいよ!」
真っ赤な顔をして出来上がっちまった某国人二人から、私へ注意が飛びます。
あんたらこそ気をつけろよ。
翌朝、待ち合わせ時刻にロビーで待ってたら、真っ青な顔をしたセイさんがやってきました。
……まだ朝飯食ってないんだそうな。
ホテルの部屋へ戻ったのは、午前3時だったそうな。
途中からホテルの部屋に戻るまでの記憶が無いそうだ。
客を放ったらかしにして、よくぞその時間まで飲めてたな!
どうやって4車線の道路を渡った?
もしあんたが事故ったら、私はどうすりゃいいの?
あきれて物が言えない。
食い放題だと容赦ねぇな、ここの人達!
「急いで朝ご飯を食べてきます。少し待っててください」
飯、食うんかよ!
あきれて――
今回、帰りの飛行機は30分遅れで離陸した。
日本へ着いた時は8分遅れであった。
どんだけ飛ばしたんだよ!
ちなみに……今回の出張で……。
歩道を歩いて渡ろうと、赤信号で待っていた時の話。
あることに気づいた。
二輪事情である。
一昔前、この国はチャリで溢れていた。
昨年、この目で見たときは、チャリが原付スクタに変わっていた。
単に質量とスピードが増しただけで、マナーは我先優先である。
質量×速度=破壊力である。
そして今年。某国二輪事情は進化していた。
原チャから電動付き自転車へと、恐怖の進化を遂げていた。
見かけは原付スクタそのもの。いや、この国のスクタはでかいので、重そうだ。
そのスクタが電動となった。
何が恐ろしいのか?
まず、無音。
次に、自転車だからナンバープレートは不要。
無灯火オッケイ!
実体を見せずに忍び寄る白い影。ガッチャry
ナンバープレート無しで、どうやって事故や違反を検挙するの?
「アズマダさん、あそこを見てください」
セイさんが街灯の上を指します。
「次にあそことあそことあそことあそこ」
こっそりと指しています。
「監視カメラがあるので、大丈夫です」
……なるほど。
この国じゃ必需品か。
「青信号になりましたよアズマダさん」
話している間に、交差点の信号が替わりました。
「アズマダさん。歩道を渡る時は、前だけじゃなくて、後ろも気をつけてください。ここは日本じゃないんですからね!」
結構歩いたから、首が痛くなってしまった。




