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グルメ・オブ・ザ・デッド

 それにしても腹が減った。


 ともかく腹が減って仕方が無い、最後に飯を食ったのはいつだったか……この未曾有の事件が起きて、キャンパスに閉じ込められてからというものの、時間の感覚などすっかり失われてしまった。

 何はともあれ食料を手に入れればならない、この飢えを満たさねばならないのだ。

 

 

 長い時間と苦闘を経て、ようやく食料を手に入れた。急がなければ、すぐに食べられなくなってしまう。はやく、一刻も早く食べないと……。

 邪魔な包装を剥がそうとするが、気持ちばかり逸り上手くいかない。他にも血眼になって食料を探している者はごまんといる。横取りされないうちに食べなければならない。



 四苦八苦の末、ようやく包装を除くことができた。早速一口齧ったが、あまりの脂っこさに思わず閉口した。

 二つある脂の塊を打ち棄てて、中にある拳大の赤い塊に齧りつく。私は口の周りが汁で汚れるのも構わず、一心不乱にそれを貪った。 甘露が口の中に広がり、喉へ、臓腑へ、染み渡っていき、芳醇な香りが鼻腔を抜けて、深い味わいを形作る。生き返るような心持ちだ。 

 一通り渇きを潤したものの、肝心の飢えはまだ満たされないでいた。確か先ほどの塊ほどではないにせよ、まだ旨い部分はあったはず。



 幾らか下方に顔を移せば、細長く、歯応え食べ応えともに優良な部位が顔を覗かせていた。

 これ幸いとばかりに、それを咥え、ずるずると啜っては食み、啜っては食み、その独特の食感を堪能する、やはりこの歯応えは、他では味わえない。



 ひとしきりその味と食感に舌鼓を打ったがまだ足りない。ふと、目線を上に向けると上部が毛によって覆われた卵型の部位が目に入った。ここはまだ食したことがない、外殻は食用に適さないだろうが、中には美味な食材が眠っているのではなかろうか。

 そう思い立ち、渾身の力を篭めて地面にそれを叩きつけるも、若干量の液が漏れ出るばかりで、一向にその内部を窺うことができない。そこでようやく気づいた。きちんと開け口が用意されているではないか。私は微かに内部を覗かせる開け口に手を掛け、えいとばかりに引き千切った。 

 すると手を差し入れるのに都合のいい穴が現れ、私はすぐさまそこに手を差し入れた。手を引き抜くと、灰褐色で、半固形の物質が流れ出てきたので、私はそれを両手で掬い、喉に流し込んだ。

 今まで味わったことのない、えも言われぬ極上の味に私は思わず天を仰ぎ吼えた。



 それにしても腹が減った。


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