腐っても恋
良く晴れた日に、気持ちのいい風を受けながら。青々とした緑の絨毯に腰を下ろして。揺れる調整池の水面の輝きの眩しさに目を細めて。けれど、隣に座る君の美しさには敵わないよ、と臭いセリフを言ったりして。
俺の告白プランは、幾重にも練られ、我ながら完璧だと思っている。何度も脳内でシミュレートし、練習だって何回もした。
そしてやっと、君をここに呼び出すことができた。今、俺は君に思いを伝える。
何も言わず、ぼんやりと池にかかる橋を見つめる君の横顔を見つめる。落ち着いた姿は告白に逸る俺とは対照的だ。今までずっと想って想って、寝ても覚めても君のことを考えていた。脳裏にはいつも君がいて、その柔らかい笑顔を俺に見せてくれていた。
それもようやく、現実のことになる。
俺は持ってきた一輪の花をそっと彼女に差し出す。彼女は不思議そうに俺と花を見つめた。その表情に見惚れつつ、俺は何度も反芻をした告白セリフを言った。
緊張で上手く言えた自信が無い。もしかしたら盛大に噛んでいたかもしれない。けれど、君は笑ってくれた。
肩を揺らし笑う君を見て、俺はやっぱり可愛いなと思う。
彼女はひとしきり笑ったあと、俺の持っていた花をそっと受け取った。大事そうに花を胸元に当て、彼女は俺に向けて真っ直ぐ微笑んだ。
その笑顔の意味するところに、俺は天にも昇る気持ちになった。
やっと実った想いを確かめようと、彼女を抱きしめようと腕を伸ばしたその時。
彼女の頭が吹き飛んだ。
倒れる君を呆然と眺め、何が起こったのかわからずに固まっていると、やがて俺の体も傾いだ。