表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

るりはこべ/変化

サクサク行きます。





「…………ュ」



ん? なんでしょう、何か言いました?

あぁ、虫が……。ピンセットは何処でしたっけ。じゃなくて、独り言なんて珍しい。不都合でもあったんでしょうか、聞いたほうが良いでしょうかね。



「どうかしましたか?」



あ、こっちにも虫が。ピンセットがありません。素手で掴みたいですが、毒虫だったら大変です。



「何でもないよ、エレン」



そうですか、何もなくて良かったです。ピンセットはそっちでしたっけ? 確か本棚の横にある、机の上に置いた記憶が……。



「あ、その本は」


「すまないね、珍しい本だったから、つい勝手に読んでしまった」



後ろを振り向けば、美人さんが本棚に手を掛けています。いつの間に其所へ、気付きませんでした。

あとですね、其所、分かりづらいと思いますが、店じゃなく、家の敷地内ですよ。別に減るものでもないので構いませんが。



「構いませんけど、面白くもなんとも無いですよ」


「面白くは無かったけど、愉快ではあったよ」



愉快、ですか。まぁ、見る人によっては愉快でもあるでしょうけど、私にとっては不快でした。


途中でうんざりして、読むのを止めてしまいましたが、あの本は御伽話というより、勇者を讃える伝記です。ざっと見てたところ、恋情・才能・勝利! で成り立ってました。決して、友情・努力・勝利! ではないです。本当に、果てしなく不愉快でしたよ、えぇ。



それにしても、美人さん――ロイザさんは暇なのでしょうか? ここ最近、ずっと店に通って来てます。買っていくのは、いつも薔薇ですが。売り上げが少し上がりました、ありがとうございます。


毎日通ってくるので、それなりに会話をするようになりました。おかげで分かったことが、いくつかあります。


1つは名前、ロイザさんというそうです。2つ目は、やはり貴族で、貧乏らしいです。多分、貧乏は嘘だと思いますが。そして3つ目、彼はモテます。


美人って素晴らしいですね。

彼が来ることによって、若い娘逹が、今までの倍は来るようになりました。無論、ロイザさん目当てですね。聞いたところ、ロイザさんに彼女は居ないらしく、それを知ってか、次の日から更に倍の娘逹が群がりました。勿論、必ず花を買っていただきますよ、じゃなかったら営業妨害ですから。美人効果って素敵です。ありがとうございます。



「そういえば、エレンは知ってる?」


「何ですか?」


「最近、人の失踪事件が多いんだ。これ迄に5人が居なくなってる」



あぁ、確か表通りのパン屋の主人が行方不明だって、娘逹が騒いでいたような。本当だったんですか、物騒です。



「このご時世に失踪とは、怖いですね」


「あぁ、しかも皆大人なんだよ。子供は今のところ被害は無いんだ」


「へぇ、普通は逆だと思いますが」



父と母に注意しておきましょうか、特に父。とても心配です。物理的に、自分より小さい母の尻に敷かれていた父ですから、浚われるなんてあっという間でしょうね。簡単に想像がつきます。………なんでしょう、無性に悲しくなってきました。



「そうだね、不可解な点が多すぎる」



ロイザさん、私は貴方が不可解で仕方ありません。貴方は何者ですか。どうでもいいですけど。


そんなことより、本当にこの時代は平和ですね。

誰かが居なくなっただけで、こんな大事になるんですから。もう、平穏もいいところです。昔なんて頻繁にありすぎて、いちいち問題にするのも煩いくらいでしたよ。犯罪は犯罪なので、騎士団はちょくちょく動いていましたが。……何故か私は、一回も担当した事がありません。魔物とかいろいろありましたしね。



「君も気をつけて」


「お心遣い、感謝します」



そう言って、ロイザさんは店を出ていきました。またのご来店、お待ちしております。


さて、さっき見つけたピンセットを使って、虫を取りましょうか。あ、コイツしぶとい。抵抗しても無駄ですよー……、



「痛っ」



あー、薔薇の棘に指が刺さってしまいました。虫を潰さないように、変に力を入れたせいでしょう。可笑しいですね、薔薇の棘は取った筈ですが。取り忘れでしょうか? あれま、血が出てますね、止血しませんと。




………ちょっと不吉ですね。






ロイザさんのキャラが、いまいち掴みにくい今日の頃。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ