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ユーカリ/新生-2


こんにちは。前世は騎士でした、な花屋の娘エレンです。

只今、いつになく危機に瀕しています。誰か助けて下さい、本当に。



「見つけた。なんで逃げたのかな?」



うへぃっ!?

な、なんで分かったのですか! 此所は、私しか知らない穴場だったのに。ナンパするなら他の方をナンパしてください。貴方のような美人だったら、引く手あまたでしょう。



「どうしたの? 凄い震えているけど」



さ、寒いんですよ、悪寒なんですよ、止まりませんよ、動けません。毛布を下さい。

ですが、悲しいかな。此所には私と彼しかいないのです。


今は亡き敬愛する姫様。どうか、この危機的状況から私をお救い下さい。


………って、御護りするべき御方に助けてを求めるとか、騎士としてどうなのでしょうか。











************










時は少し遡ります。






今日も、母が「素晴らしいラブ・ロマンスが、あんたを待ってるわ!」と、花が入った籠を、私に押し付けてきました。今日は店番の日だったはずなのですが。


その手に持っているピンク色の表紙の本はなんですか。恋愛小説ですよね、それ。夢見る乙女ですか、そんな歳じゃないでしょう。



「なんか文句あんのかい」



ごめんなさい、すみません、私が悪うございました。だからガンを飛ばすの止めてください。頼みますら。


素直に出掛けたほうがよさそうです。逃げるのが一番ですよ、えぇ。



「良い人見つけてくるんだよー」



残念ながら、私は一生独身を貫きます。







 







「花はいりませんかー」



いつものように、街の大通りで花を売ります。

デートしているカップルを発見。このような方々が、私の商売相手です。



「そこの方、お美しい彼女さんに一輪いかがですか?」



………あ、逃げられた。甲斐性無し、ですね。別れたほうが良いですよ、彼女さん。花一輪も買えない男と付き合ったって、良いことありませんよ。

うーん、なぜでしょう。今日はなかなか花が売れません。暇です。


騎士だった頃は、こんな暇なんて欠片もありませんでしたよ。姫様付きになる前も、なった後も、外され対魔物部隊になってからも。

あの頃は、文字通り毎日が戦いでしたのに、今は魔物の脅威も薄く、とても平穏です。平穏過ぎるくらいに。


別に、平穏が嫌だとは言いません。むしろ、ありがとうございますと感謝しているくらいです。まぁ、お陰で騎士の質は、あの頃と比べて随分と下がったようですが、今の私にはもはや関係ないことです。


ただ、平穏になる前には過去、決して少なくない戦いと犠牲、悲劇があり、それを無くす為に尽力した者がいるという事実を忘れてはいけないのです。


ですが、人々は忘れていくのでしょう。人は忘れていく生き物です。ましてや200年も前の話なのですから。今まで、よくこの平穏が保たれてきたと、私は思います。脱帽ものですよ、本当に。



「あの、すみません」


「はい。なんでしょ……」



ボーッとしてしまったようです。声を掛けられ、振り返った先には、あれまぁ美男子が。思わず言葉が途切れてしまいましたよ。


もう、文句無しの美人です。

ベージュ色の髪に、碧い透き通った瞳。まず、平民ではないですね。平民はこのような色彩をしてません。だいたい黒か茶です。私も髪と目の色は茶色ですよ。目の色は薄いですが。彼は少なくとも貴族に連なる者ですね、絶対。



「…………」


「…………」



なんでしょう。声を掛けてきたのは、そちらでしょうに、お互い無言です。


居たたまれないですよ。というか、ガン見されてます、思いっきり。視線が痛いです。


なんというか、懐かしく感じます。この眼差し、どことなく姫様のに似ているように思えます。そう、この全てを絡め捕られるような、それでいて突き刺さるような視線がとても―――。



「――――!?」



何ですかこれ、何ですかこれ。脚が震えて、歯がガチガチと噛み合いません。ブワッと全身の産毛が逆立ちます。


魔族と対峙した時でさえ、こんなにはなりませんでしたよ。危険、危険、危険です。逃げなければ、逃げなければ。



「あ、まって!」



私は、思わず、逃げ出しました。







そして、今に至るのです。





エレン、平穏終了のお知らせ。

ぶっちゃけ、彼女目線で三人称は無理です。

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