シクラメン/切ない私の愛を受けて
大変お待たせしました。
更新が遅くてすみません。只今リハビリ中です。
奇妙な既視感を覚え、変に気が抜けてしまったのでしょう。
身体から力が抜け、手に持っていた籠を落としてしまいました。普段ならこんな失敗はしないはずなのに。
「あ、花が……」
パサリと落ちた花たちは、タイミングを見計らったかのように吹いた風に運ばれ、ふわりと舞います。
花は大切な商品です。このまま誰かに踏まれてしまうと処分しないといけなくなります。早く回収しなければ。
あぁ、そんなにあちこちに飛ばないでくださいよ。
ただでさえ人通りもあるのに。………まぁ、ほとんどの方々は、自分達の世界に入っているのでしょう。
明らかに困っているいたいけな少女に手も貸してくれないのですから。……今の自分で言って気持ち悪くなりました。
「……あ、あの」
「え、はい……」
あら、誰でしょう?
振り返ってみると可愛いお嬢さんが。まぁ、赤い瞳なんて珍しいですね、白子でしょうか? でも髪は白くないですねぇ、むしろ黒を通り越して、漆黒です。あれ、言葉がおかしい。
「あの、お花はまだ残っていますか……?」
今日初めてのお客様ですね。勿論、残っていますよと言いたい所ですが、商品である花たちは地面に落ちて無惨にも、人々に踏まれてしまっています。踏まれていない花もありますが、流石に落ちた花を拾って売るなんてことはできません。お店の信用問題以前に、人としてどうかと思います。
「すみません、持っていた花は駄目になってしまって、店に行けば沢山有るのですが……」
「お店やっているんですか! 良かった……、殆どのお店が閉まっていて諦めようと思ったら、貴女がいたので」
「そうなんですか、大変でしたねぇ……。では、店に案内しますよ」
今は誘拐事件が多発してますからね、確かに閉まっている店が多いです。まぁ、被害者は働き盛りの一家の大黒柱や、元気のある若者ですからね。事件が収まるまで、大人しく様子をみているのでしょう。
私の店みたいに毎日開いているのは珍しいほいですね、えぇ。
…………そこら辺にいる頭がお花畑な方々は知りませんが。
「そういえば、どのような花をお求めですか?」
「え? ……そうですね、薔薇を5本、ください」
薔薇、ですか。
「私、彼に伝えたいの」
「大切な方へですか?」
「はい、そうです。……世界で一番大切な人です」
「伝わるといいですね」
花言葉は沢山ありますからね。一輪の花に込められる思いは様々です。
必ず、はっきりと伝わるとは限りません。相手が花言葉を知っているとは限りませんしね。
「伝わらなくても良いんです。私の勝手な思いですから、後悔はしてませんから」
後悔はしていない、ですか……。
店に着いたら、一番美しく咲いた薔薇を見繕いましょう。