[閑話]薇/夢
これはシアワセな夢なのです。
夢をみた。
とてもシアワセな夢を。
名前も知らない少年と、幼い私は手を繋いで歩いている。
何処を歩いているのかは、わからない。
ただ、楽しくて、嬉しくて、悲しくて。
何故かとても泣きたくなった。
私は少年と歩いている。
少年の顔は影になって、見えない。
歩く、
歩く、
歩く。
気付いたら、少年は居なくなっていた。
掌には、少年の温もりが残っているというのに。……とってもあたたかい。なんで。
掌をみる。あかい、とろり。なんで。
舐める。へんな味、まずい。なんで。
私は、あかの上を歩く。
少年は居ない。
私は、あかの上を歩く。
騎士様が居た。
少年はどこ。
「騎士様、男の子を見ませんでしたか?」
「見ていません」
「サラサラの黒髪が、とても綺麗な男の子です」
「…存じ上げておりません」
「私より、少し年上なのです」
「……申し訳ありません」
「でも顔は思い出せないの」
「………」
「名前もわからないの」
「…………」
なんで、私は少年の顔を思い出せないのだろうか。
なんで、私は少年の名を思い出せないのだろうか。
知ってた筈なのに、なんで。
騎士は俯いていた顔をあげる。サラリ、と綺麗な黒髪が揺れた。とても生臭い臭いがする。
どこかで見たことがある。
私は彼を知っているのか。
騎士は私に手を伸ばす。ゆっくりと、指先は喉へ。気付いたら私は、大人になっていた。
私は避けない。
首を絞め付ける、細長い指先。何故だろう、この手を指を、私は知っている。
騎士の顔は、影に隠れて見えない。
私は、近くに有ったナイフを手に取る。そしてそっと、騎士の胸に押し当てた。
あかい、とろり。へんな味、まずい。
私の首を絞める力は、どんどん強くなる。
騎士の胸に当てたナイフに、力を込めた。
ヒクリ、と喉が跳ねる。
ビクリ、身体が跳ねた。
曖昧になる視界に、騎士が映る。どうして片腕がないの。
「………ぁ」
嗚呼、騎士様。貴方だったんだ。
急に居なくなったら、寂しい。
「…ェル……ュ…」
そして、消えた。
これは夢。そう、夢
私の騎士様、どこ。
暇になったと思ったら、それはまやかしだったorz
今年は全体的に忙しくなるのが確定とかないわ。のんびりする時間を下さい。マジで。