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[閑話]毒芹/汝は私を死せしむ

残酷表現が出ますので、お気をつけ下さい。


ある少女の追憶。





とても、大切になった弟がいた。

とても、大切な弟がいた。

とても、大切だった弟がいた。



もう、ずっとずっと昔のはなし。



確かにあの子は、私の"大切"だった。







************








人は死んだら、何処へ逝くのだろう。





「いや、いやぁあっ、やだ、やだやだやだぁああ! 死にたくなぁぃぃぃっ」



昨日まで、手を取ってお互いを慰め合い、時には抱きしめあって共に寝ることもあった"彼女"が、私を殺そうとナイフを振り上げる。



"彼女"は私の大切で、

"彼女"は私の唯一で、

"彼女"は私の世界だった。



"彼女"が振り上げたナイフを、私は身体を捻り避ける。そのまま、捻った時についた回転を利用して"彼女"の背に回り、持っていた剣を首筋に当て、一気に裂いた。


剣を持っているのにも関わらず、ダイレクトに伝わってくる肉の感触に吐き気がする。

止めどなく溢れ出す血液が、床を、手を、視界を、私を、世界を、真っ赤に染め上げた。


床に1つ、頭と胴が離れきれず、不恰好に繋がった死体が出来上がる。


さっきまで"彼女"だったそれは、今はただの肉の塊になった。



あぁ、綺麗に死なせてあげられなかった。痛かったかな、痛かったらごめんなさい。



涙なんてもう、出ない。



肉の塊になった"彼女"を見つめて思う。


人を殺す度に、皆は私を化け物だと罵る。



「お前は、何も感じないのか」と。



私は逆に問いたい。

君達は、生きるために殺した動物を憐れむのかと。


確かに最初は、可哀想と憐れむのかもしれない。でも、何回も殺めていくうちに、そんな自己満足な憐れみなど抱かなくなる。抱けなくなる。



"生きる為に殺す"



殺しあう相手に、可哀想と言って自分の命を差し出せるほど、私は人間が出来ていない。


人も、動物も、皆同じだ。

何かを殺して生きている。

だから、私は生きている。



「よくやった、褒美だ」



ずっと私達の殺し合いを『観戦』していた男がそう言い、パンを1つ、私の目の前に投げた。


"彼女"だったものは、木で出来た箱の中に入れられていく。そして、そのまま運び出された。



なんて酔狂な。



"彼女"は何も残さなかった。


この地面についた、おびただしい血液も、地に吸われ、他の子の血液に塗り替えられて、消えるのだろう。


"彼女"は、何も遺せなかった。


"彼女"は、どこに逝ったのだろう。



あの世とは、本当にあるのだろうか。

死んだら皆、あの世の天国と地獄のどちらかに逝くらしい。"彼女"がよく言っていた。


動かなくなった身体は、地へと還り、新たな生命の礎となって世界を廻る。

なのに、人は死者の身体を箱に入れ、地に還らないようにして埋めていく。



私は、何故? と問いたかった。

だけど、今、やっと理解できた。



「寂しいんだ、悲しいんだ、苦しいんだ」



その人がいない現実を認めたくなくて、だけど受けとめないといけなくて。


旅立ってしまった魂はもうないけれど、せめて身体は繋ぎ止めておきたくて。


その人が生きていたという証が欲しくて、縋りたくて。



だから、人は、



「……エル、寂しいよ」



こんなにも辛いのか。






私の世界は、死んだ。










************







ねぇ、私は何か遺せると思う?





「新入りだ。お前が教育しろ」


「……わかりました」


「くれぐれも、殺すなよ」


「わかってます」


「………」


「………」


「ねぇ、君、名前は?」


「……ジュラス」


「そう。私の名前はエルよ」


「エル?」


「そう、私はエルよ」





白い花。

"彼女"が好きだった花。


その花が凄く似合う子がいたの。

綺麗な黒髪によく映える。


"彼女"以外の大切ができた。"彼女"は怒るだろうか、それとも……。






人は死んだら、何処へ逝くのだろう。


エル、貴女は何処へ逝ったのだろう。




「エルー!」


「どうした?」







何処からか、"彼女"の笑い声が聞こえた気がした。









いろいろと辛い、鬱になりそう。

ギャグが書きたい、でも書けない。

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