【幻風景】掌中の運命
辻占いに立っていると、手相を見てくれと頼まれた。
この男、目つき人相風体から既にただ者ではない。ただならぬ迫力を感じた。こいつはきっと波瀾万丈な人生を送るのだろうな、と既に分かる。
さっそく手相を見ると、掘りが深い。まるで谷のようだ。
谷の奥底をじっと見ると、そこには運命の流れが見えてくる。
運命の流れ。大地を削り、急峻な渓谷を作る。谷底の急流。
烈しい川は流れ続け、やがていくつもの支流と出会う。気づけば地形も穏やかな平原に。流れはゆったりとした大河になる。
周囲には賑やかな村々、人々の生活が色づく。そんな川を行く舟は交易により、都の豊かさを支える。
そして大河はとうとう海へと至った。海の向こうは嵐。荒くれ船乗りたちは冒険の航海へ、碇を上げるのだ。
「どうだった?」
と言われて我に戻った。気づけば私が辻占いをしている。
……ええっと。
「波瀾万丈な人生じゃないかな」