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磯端健成は、山で暮らしたい。

僕には、お兄ちゃんがいます。


大成兄ちゃんは、「ゼランティア大陸」という異世界に転生して、勇者として名を馳せ、そして日本に生還したんです。



僕は、毎晩お兄ちゃんから、「ゼランティア大陸」の話を聞いて、

兄ちゃんの『バイアス』って言葉の使い方あってるのかなあ・・・?と心配になりました。


それでも僕も、お兄ちゃんの意思を継ぎたいな!と思ってます。


「にいちゃん!!にいちゃん!!」


「はいーなんですかー?」


「もう俺、お兄ちゃんとの会話に疲れた!癒されたい!!」


「あー。その悩みの相談窓口、兄ちゃんであってる?」


「だからこれが最後の相談ね。俺、『異世界の山でスローライフを送りたい』!」


「異世界の山でスローライフ?」


「そう!もう俺、現世のしがらみにうんざりなんだ!癒されたい!」


「スローライフ・・・って・・・なんですか?」


「知らないのかよ!大自然の中で、動物と戯れながら、時間も気にしないで過ごすん だ!

 そりゃあ最初は大変なのは知ってるよ?だけど、その苦労も含めて豊かな時間を過ご すんだ!」


「山で・・・スローライフ?」




[異世界の真実、兄が語る現実]




「おーい?兄ちゃん?」


「あ、ごめんなさいね。ちょっと意味不明すぎて意識が飛んでました。」


「意味不明?」


「いや・・・ね?そんな人、居らっしゃらないはずなんだよね。」


「いるよ!沢山いるよ!今や一大コンテンツだよ!」


「いやー・・・つまり、山で文明に頼らず自給自足の生活をするっていうことだよ ね?」


「そう!ゲームで言ったらマイクラとか、牧場生活とかだよ!いるだろ?!」


「い・・・ないなぁ・・・。え、なにこれ怖い話?」


「違うよ!!何でそんなに居ない居ないって言い張るのさ。」


「うーんどこからツッコんだらいいのかわからなくて・・・まあ、とりあえずね?

 これ転生者の鉄則なんだけど、『山には近づくな』っていうのがあるんだよね。」



[異世界の真実、兄が語る現実]




「はいでたーいつもの逆張り乙ー!!」


「ケンちゃんは、『山』ってどうやってできるか知ってるかい?」


「知らない!」


「二つあって、大きく分けるとプレートの移動か、火山かのどっちかなんだよね。

 違いは、地面が盛り上がるか、溶岩が積もって山になるかなわけだ。

 で、『異世界の山』の出来方だけど・・・

 こと異世界の山に関しては特殊でね・・・。

 これ前にも話したと思うけど、異世界の地面って、

 何千年も前から転生者がモンスターを埋めたり、

 死体がそのまま土になったりしてるのね?

 これはつまりだね・・・。文字通りあれは、死体の山なわけだね。」


「はあ?」


「臭いよー?山は。」


「もういいよ匂いは!」


「いや!重要だよ!?『異界の山』だよ!?つまり異界の植物が生えて、異界の動物が 暮らしている、異界の死体が積み上がった地面よ!?

 その匂いたるや!脳が情報を処理しきれないんだもの!そんなところで長時間暮らせ ませんよ!?」


「異世界の山が死体の山とは限らんでしょうが!

 もう何だか論調が無理矢理になってきてるぞ!」


「わかりましたよ。どうせ言いたいことは沢山あるので違う切り口ね。

 仮に、異世界の山が臭くなかったり、ガスマスクを用意できたとしましょう。

 それでも山には近づいてはダメです。」


「なんでよ。」


「日本の山で毎年、何人の方がお亡くなりになってると思いますか?

 300人前後です。日本だけでですよ?

 山って危険なんです。特に天候の変化には人間は逆らえません。

 ・・・ケンちゃん、山の雷って知ってる?雷って、上から落ちてくると思うでしょ? 山の雷はすごいよー。

 横に走っていくからね!」


「いい!いい!そういうのはもういい!!」


「聞きなさい!これは注意喚起です!!雨にちょっとでも濡れたら標高の高い場所だと 低体温症になるんです!そうやって山ビギナーは遭難するんです!

 山なめんな!!お前らが知ってる山は山じゃない!

 終電車寝過ごして『奥多摩』に行ってみろ!あれこそが本当の山だ!!」


「兄ちゃんは大丈夫だったんだろ?」


「兄ちゃん山が怖すぎて、空飛んで越えましたから。

 我々にとって山とはそういう場所なんです。

 踏み込まないのに越したことがないんですよ。

 そんなとこに・・・わざわざ移住するんですか?」


「回復魔法とかで体温調整すればいいだろ。」


「だったらなをさら長居しちゃダメだよね?体力以上の精神力を使うよね?」


「山よりお前が疲れる!!」


「しかも忘れないでくださいよ?『異世界の山』ですからね。モンスターも出ますよ? これがどういうわけかお分かりか?」


「戦えばいいだろ。」


「はいでた。転生者ドシロの考え方。」


「そこまでいうか!?」


「山で戦闘なんかできませんからね!?向こうは鳥型か、獣型か、とにかく山に特化し た体の作りになってますけど、こっちは二足歩行の人間なんです!

 圧倒的に不利です!

 木とか草で囲まれた狭い急勾配で重たい武器振り回せますか!?

 できてもやりたくありません!しかも山頂で人が戦ってたら落石の危機もある!

 自分一人の問題じゃないんです!」


「一撃で真っ二つにすりゃいいだろうが!」


「(大きなため息。)ケンちゃんね。・・・『八甲田山雪中行軍遭難事故』って知って ますか?」


「知らんよ。」


「参加した日本陸軍201名のうち、199名が亡くなった悲惨な事故です。理由は、 雪山に銃、鉄帽など通常装備で挑んだからです。

 だから山に登るにはちゃんとした山用の装備が必要なんです!」


「山専用の装備で戦えばいいだろう!」


「じゃあ通常装備はふもとに置いてけと!!?そんな難儀をいうのですか!?」


「うう・・・」


「山やめますか!!?人間やめますか!!?」


「・・・ ・・・違う!そもそも山で戦わなければいいんだ!そうだ!山でモンスター と仲良くなる!!

 ご飯を分け合って、苦労も分け合うんだ!どうだ!安直な考えだと笑うか!?」


「いいえ。素敵な考えだと思いますよ。・・・ただね?ケンちゃん。

 『逆の立場』で考えて?」




[異世界の真実、兄が語る現実]




「『逆の立場』?」


「そもそも、王様は私たち転生者になぜ、『魔神を倒せ』と命じるのでしょう?」


「え・・・平和のため?」


「平和とは?」


「安心して暮らせる生活とか?」


「その通り!!街や国の安全を守るためです!・・・モンスターにとっての街や国は、大体山です。」


「洞窟とかじゃ・・・」


「山じゃないですか。」


「あ・・・。」


「山に人間が入る。それは、モンスターや他の動物にしてみれば、自分の住処に敵が侵 入するということです。

 山で癒されるのは、素敵な生活かもしれない。

 山で自給自足をするのがどれくれい大変か、私にはわかりませんので引き合いには出 しません。ですが、

 それが果たして『人として自然なことか?』私はそれを問うてるのです。」


「そういう話か・・・?」


「この街に、突然『癒されたいから』という理由でモンスターがやってきて、居座ったら、どう思います?それは自然なことでしょうか?」


「・・・考えてみる。」


「どうしても、そういう体験をしたいなら、ディスカバリーチャンネルを推奨します。クマ・グリルズさんの動画を沢山見てください。」


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