第8話 大切な「友達」
五月、この学校ではクラスの仲を深めるための遠足がある。正直、佑はまだクラスメイトとはほとんどの人が話したことがないし、とても不安な気持ちでいた。
「じゃあグループを決めるからそれぞれグループを作ってくれー」
担任の合図で皆が動き始めた。
「よし!佑!他にも誰か連れてこい!」
一グループ4人なので佑と類では人数が全然足りない。なのでほかにあと二人連れてくる必要がある。
「ねえねえ佑!私も入れてよ!」
「いやいいけど、、歩美はいいのか?」
「佑と一緒にいた方が絶対楽しいし!私はそっちの方がいいかな!」
「お、おうそうか?じゃあこれで三人だからあと一人だけどどうする?」
そう話していると、類がとある人を連れてきた。
「おいお前ら!中村さん連れてきたぞ!」
類は中村さんこと「中村香澄」を連れてきた。
「中村さんも入れてほしいんだけどいい?」
「ああ、俺はいいけど歩美も大丈夫か?」
「私はなんでもいいよ~」
「よし!じゃあこの四人で決定だな!」
「よろしくお願いします」
「ああよろしく」
「よろしく~」
そうしてこの四人で遠足に行くことになった。
「遠足では自分たちで料理を作って食べるらしいんだがなんか案あるか?」
遠足の行先に焼き台があり、そこで何かを自分たちで作るらしい。他の班のを盗み聞きするとカレーやバーベキューなど聞こえてくる。
「ラーメン!ラーメンはどうだ?」
類はラーメンを提案した。
「せめてもっとBBQっぽいもの食べないか?」
「私もラーメン食べた〜い!」
「私はなんでも大丈夫です!」
「じゃあラーメンで決まりだな!」
「あれー??」
ということで遠足ではラーメンを作ることになった。
「それじゃあさようなら」
「「「「さようならー」」」
(さて、帰るか)
佑は学校も終わり帰宅しようとしていた。
「佑〜!一緒に帰ろ〜!」
「はい?」
歩美が一緒に帰ることを提案してきた。普段は一緒に住んでいることがバレるのを避けるために別々に帰宅している。
「ちょ、お前声がでかいぞ」
周りを見渡すと一部の男子がこっちを見てきてた気がするがとりあえず気にしないでおく。
「どうだ?学校には慣れてきたか?」
帰り道、佑は歩美がちゃんと学校に馴染めているかを聞いた。
「思ったより楽しいかも!香澄ちゃんとも仲良くなったし!」
「まじ?もう仲良くなったのか?」
「うん!遠足の話してる時にたくさんお話したんだ!」
「良かった良かった、俺の手助けが要らなくなる日もそう近くないかもしれないな」
歩美が佑の力を借りずとも学校で暮らしていけるなら無理に手助けする必要はなくなる。
(いつか歩美にも仲良い女友達が出来て俺と話さなくなる日も来るかもしれないな)
そう思い、少しだけ悲しくなってると歩美は言った。
「佑がいるから学校来てるんだよ?佑と話さなくなるなんて考えられない」
「そ、そうか?」
「もしかして佑は私と話せなくなってもいいと思ってるの?」
「いやいやそんなことないって、俺友達少ないし歩美は数少ない俺の大切な友達だよ」
「そ、そう?私にとっても佑は大切な友達だよ?」
「お、おうありがと」
「こ、こちらこそ、、?」
(なんかこれ恥ずいな)
なんか仲睦まじい雰囲気になってしまいお互い気まずくなるのであった。
遠足前日、佑達4人は買い出しに行っていた。
「ラーメンって言ったらまずは麺だよな!」
一応ラーメンを作ることになっているので麺や具材を探していた。
「この袋麺とかどうだ?作りやすそうだぞ」
「何言ってんだ佑、小麦粉から作るんだぞ?」
「無理に決まってんだろ」
「私これ食べた〜い!」
「1万もするステーキ持ってくんな!ガッツリ予算オーバーだわ!」
そうしてハチャメチャやりながらもなんとか具材を買い終えた4人は夕飯を食べることにした。
「なんか食いたいもんあるか?」
「私ラーメン食べた〜い!」
「いや明日食べるだろ」
「明日の参考にするって感じ?まあいいでしょ!」
「俺はいいけど、、みんなはいいのか?」
「なんでもいいよー」
「なんでもいいです」
「じゃあラーメンで決まりだね!」
歩美の提案でラーメンを食べることになった4人はショッピングモールにあるラーメン屋へと入店した。
「何ラーメンがあるんだろ?」
「ここは味噌が美味しいらしいぜ」
「じゃあ私味噌!」
「じゃあ俺も味噌にしようかな」
「じゃあ俺も味噌!」
「私も味噌にしますね」
あまり行ったことのないお店なので類に言われるがままに全員味噌を頼んだ。
「味噌ラーメン4丁です」
「うわ!きた〜!」
「美味しそうだな」
「いただきま〜す!」
そうして歩美は麺を口に入れた。
「美味しい!ラーメンってあまり食べたことないけど美味しいね!」
「ほんとだ美味いな」
そうしてラーメンを食べ進めていると類がとある質問をした。
「ところで佑と歩美さんってなんで仲良くなったの?学校で仲良くなったわけでも無さそうだし」
どうやら類はなんでそんなに2人が仲良いのかが気になるらしい。確かに類は中学は一緒の学校でずっと一緒に居たので類の友達は大体佑も友達だった。しかしいきなり類の知らない人物が出てきて更に佑ととても仲がいいのでそこが気になるらしい。
「うーん、、なんていうか、、たまたま仲良くなったみたいな感じかな」
「なんだそれ、そもそもいつ頃から仲良いんだ?」
「仲良くなったのは高校入った頃かな?」
「でも最初の頃歩美さん学校来てなかったじゃん、どうやって知り合ったんだ?」
確かに歩美は最初の頃は学校に来ていなかったので学校で仲良くなったと言うのは無理がある。
(でも事情全部説明するとめんどいことになりそうだしな、上手く誤魔化しとくか)
「たまたま1回会って話したことがことがあったんだ。それで同じ学校同じクラスって分かって仲良くなったんだ」
「ふーん、それにしても佑が女の子と仲良くするなんて珍しいな!まあ佑の良さを知ってくれる女の子がいて嬉しいよ!これからも佑の事よろしくね!歩美さん!」
「う、うん!」
「勝手によろしくさせようとすんな」
そうして4人はラーメンを食べ終わり、それぞれ解散し佑と類は一緒に帰ることになった。
「それにしても佑いい女の子捕まえたな!」
「なんだその言い方ウザイな」
「歩美さんのこと好きなんじゃないのか?俺は応援するぞ?」
「別に友達としては仲良いけど恋愛感情はないよ」
「ほんとにー?可愛いし優しいし雰囲気いいから佑にもってこいの女の子だと思うんだけどなー、佑も歩美さんのこと可愛いと思うだろ?」
「まあ可愛いとは思うけど別に彼女欲しいわけじゃないし無理矢理好きになったって意味ないだろ」
「慎重派だなー、そんなんだから彼女出来ないんだぞ?」
「うっさいわ」
確かに佑は歩美のことを可愛いと思ってるし大切な友達だとは思っているが恋愛感情には至っていない。
(歩美は俺に対してそういう感情は持ってないだろうしな)
歩美も俺にはだいぶフレンドリーだがそれも友達としてというはずなので恋愛感情では無いと思っている。
「でも歩美さんって他の男の人どころか女の子でも全然話そうとしないだろ?だから佑は相当懐かれてると思うけどな」
「まあそれは俺も分かってるさ、でもそれとこれとは別だろ?」
「そうかねえー?」
「ああ、そうだきっと」
佑は歩美を連れて帰った日、連れて帰ったあの時佑は自然とこう思っていた。
(俺がこの子を幸せにしてやりたい)
しかしこう思っていたのも恋愛感情というよりかは親子みたいな感情の方に近い。捨てられて今にでも消えてしまいそうなペットを捕まえた感じだった。しかし、佑も男の子なので歩美にくっつかれたりすると少しドキドキしてしまう。しかも歩美は割と距離感がバクってるのでドキドキすることが無駄に多い。
「少なくとも向こうは佑のこと意識してそうな感じだけどね」
「そうか?歩美こそ異性としての意識がまるでない気がするけど」
「まあ、お前もそのうちわかるようになるさ」
「なんか偉そうだな」
そうして類と佑は解散し佑はさっきまでの話題の張本人がいる家へと帰ることとなった。