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初鍬下ろし
初鍬下ろし
「凄~い!」
おめめをキラキラさせておはなぱたけの耕した1aのお種子畑を見詰める咲菜ちゃん。
「はい! こんな感じでねさくさくやっちゃってよ咲菜っ葉! 頑張ってね!」
と、再び鐵鍬轍-わだち-を手渡されました。
渡されたのは良いのですけど。もじもじもじもじ立ち竦んで、出来ないよ~が溢れて、咲菜ちゃんの中にいっぱいになっていました。
「はいはいはい! 時間は待ってくれないよ! さくさくさくさくいっちゃってよ!」
天空の砂時計から、さらさらきらきら降り注ぐ時間の砂。
さらさら……さらさら……。
ふう……意を決して咲菜ちゃんは鐵鍬轍-わだち-の少しアールのかかった槐の柄をぎゅっと握りしめました。
人生で初めての天地返しです。
チラリと天空の砂時計を見て……おはなぱたけの耕したこんもり畑を見て、お種子畑の大地を見て長く伸びる咲菜ちゃんの大地のに映る影が頭上高く鐵鍬轍-わだち-を振り上げました。
たらりと心の冷や汗が流れ落ちて行きます。
よし!
「えい!」
カツン! と、人生初めて初鍬の壱撃を、お種子畑へと振り下ろしました。