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第27話 ヒロインは王立高等学園に入学する

最終話まで書き終えたことに伴い、章設定を行いました。

現行の物語を本編とし、最終話以降におまけ・後日談を付け加えていく予定です。

完結後も引き続きご愛読のほど、宜しくお願い致します。

「やっぱり、何とも慣れないなぁ…」


王立高等学園の入学式の日、わたしは何度も試着したはずの王立高等学園の制服に身を包んだ姿を姿見に映し、眼鏡の奥の目を顰めた。


フリルのついたブラウスはいい。ブローチで止めるタイプのリボンもいい。こげ茶色のチョッキも決して悪くはないし、女子用のブレザーも、装飾過剰のきらいはないでもないが、十分許容範囲だ。問題はスカートである。


「何で、こんなに短いのよ…」


左手でスカートの端を摘まみ、わたしは唇を尖らせた。スカートがあまりにも短すぎるのだ。短く見積もっても、膝上15センチはあるぞ。何でこんなに短いんだ!?


「これじゃ、”見えちゃう” じゃないの…」


何が見えるかって?そりゃぁ、”男の浪漫” って奴だ。男にとっては浪漫でも、女にとってはたまったもんじゃない。こんなことを考えるあたり、わたしの精神の中核をなす『俺の魂』は、『エイミーの肉体』に相当浸食を受けているようだった。


前世の、アラフィフオヤジであった『俺』にとっては制服ミニスカートのJKは鼻の下を長くするばかりであったが、本人になってみれば何とも危うい。


せっかくお母さんが美少女に産んでくれた顔を顰めて、わたしは腕を組んだ。


「似合ってるよ、エイミー」

「エイミー、似合ってるわよ。…何を難しい顔をしてるの?」


そこに、お父様とお母さんがやってきた。お母さんはわたしの顔が視界に入ったとみえて、不思議そうな声をわたしに向ける。


「お父様、お母さん、いつも思うんだけど、このスカート短すぎませんか?」


お父様もお母さんも、言われてみれば、というような顔をした。


「確かに、エイミーの言うとおりだ。何とも短すぎるな」

「学園指定の長さなんですけどね」


今日は、お父様もお母さんも入学式に参列してくれる。お父様は見慣れたスーツ姿だが、お母さんはドレス姿だ。紆余曲折の果て、ついにお母さんがブレイエス男爵家の正妻として認められたのだ。それに伴い、わたしの身分もブレイエス男爵家の嫡出子となった。


お父様とお母さんは大喜びしていたし、わたしももちろん嬉しい。でも、これでお母さんのメイド姿が見られなくなると思うと、見慣れたものがなくなってしまったような、何ともさみしい思いに駆られる。


それはそれと、「見えちゃう」ことへの懸念を言うと、お父様は腕を組んで頼もしい答えを返してくれた。


「安心したまえ、エイミー。君のスカートの中身を覗こうとする不逞の輩には、私はいつでも手袋を投げつける準備がある」


お父様、一言言わせて下さい。「そういう問題じゃねぇ」


「でも、確かにそれは困りものですね…そうよ!エイミー、下着のもう一つ上に、ショートパンツを穿いておけばいいのよ。校則では、そうしてはいけないという表記はなかったわ」


なるほど、御〇〇琴ですね。…多分、それがベストなんだろうな。


わたしは早速自室に戻り、タンスの中から手頃なショートパンツを取り出して穿いた。外には馬車を待たせてある。そろそろ出発の時間だ。急がなくてはならない。


◇◆◇


王立高等学園の入学式は、『まぁそんなもん』であった。学園長の長ぁーい祝辞とか、来賓の長ぁーい祝辞とか、学年指導主任の有難ぁーい訓示とか、そういったものを延々と聞かされ、げんなりした気分で割り当てられた教室の入り口に貼り出された名簿を確認する。


わたしが割り当てられたのはAクラス、成績優秀者と名門貴族家の子弟 (あるいはその双方を兼ねる者) が割り当てられるクラスであった。以下に、席次順にその名簿を示す。名前の後ろに示されている括弧つきの文字は、(王) が王族出身者、(貴) が貴族出身者、(特) が特待生 (中学校卒業時に成績優秀、または加護ないし特殊なスキル持ちのため、一部試験免除で入学を許可された者) である。Aクラスは、21名のようであった。


1. カールハインツ・バルティーユ・フォン・セントラーレン (王)

2. クロード・ジャスティネ・ドゥ・ウェスタデール (王)

3. アナスタシア・クライネル・フォン・ラムズレット (貴)

4. アレン (特)

5. マルクス・フォン・バインツ (貴)

6. エイミー・フォン・ブレイエス (貴)

7. オスカー・フォン・ウィムレット (貴)

10. マーガレット・フォン・アルトムント (貴)

21. レオナルド・フォン・ジュークス (貴)


◇◆◇


わたしは新興男爵家の出とはいえ、一応貴族なので貴族出身者扱いになる。個人的には、中学校卒業時の成績優秀とA級治癒魔法マスターということで特待生扱いにして欲しかったのだが、特待生と貴族出身者では後者の方が扱いが上ということで貴族出身者扱いになってしまった。何か納得がいかないが、そういうことであればまぁしょうがない。


序列首席のカールハインツ・バルティーユ・フォン・セントラーレンはセントラーレン王国の王太子であり、序列次席のクロード・ジャスティネ・ドゥ・ウェスタデールは西方の隣国、ウェスタデール王国の第三王子である。従って、よほどのことでもない限り彼ら2人のワンツーフィニッシュが覆ることはない。彼ら2人の席次が変わることはあっても、だ。


まぁそんなもんは名目的なものであり、実質的な席次は第3席からになるのは大日本帝国陸海軍士官学校と変わりはない。大日本帝国陸海軍士官学校の話は真偽のほどは定かではないとはいえ、そんなことしとったらいずれえらいことになるぞ…


序列第3席、実質首席はゲーム中と同じ、わたしの救済目標である悪役令嬢アナスタシア・クライネル・フォン・ラムズレットであった。彼女は、1年生の副総代を務めることになる。総代は言うまでもなく、カールハインツ王太子だ。


そして、序列第4席にアレンとかいう特待生が座している。わたしの席次の2つ上だ。別に入学時の席次に興味はないが、アレンという名前には聞き覚えがあった。どこで聞いたんだろな…アレン…アレン…ありえん…


…!思い出した!このアレンって平民出の特待生、中学校で常にわたしの先を行っていた天才君だ!中学校ではついに彼を追い抜くことはできなかった上に、王立高等学園の席次でも上回られたんかい、悔しいのぅ、悔しいのぅ!


…悔しがっていてもしょうがない。こうやって上回られた以上、彼が自分よりも優れていることを認めて素直に彼をリスペクトし、いずれ彼に追い付き追い越すべく努力を重ねるだけだ。


そう思うことができたのは、自分に押しも押されぬ自信を持てるものを作り得たからだろう。魔力Aトリプルプラス、そしてA級治癒魔法を自在に操れるという事実は、それだけの自信をわたしに齎してくれた。


◇◆◇


教室の扉を開けて中に入ると、一人の男子生徒と鉢合わせした。わたしに気付くなり、彼はすぐさま丁寧な最敬礼を施してくれた。幾つか数えるほどの間頭を下げたままにし、そして一度直立不動の姿勢に治るともう一度丁寧な最敬礼を施してくれる。これは、平民の男子が貴顕の者に対して示す礼だ。そんなことを、かつて中学校の卒業資格検定試験勉強で学んだ記憶がある。


そのような礼を示したからには、彼がそのアレンという天才君なのだろう。そうされた時の返礼を貴族家令嬢として学んだ記憶があるが…忘れたw


ならば、わたしなりの礼を返すのが礼儀ってものだ。


「丁寧な礼を施して頂き、ありがとうございます。どうぞお直り下さい。丁寧な礼を下さった紳士のお名前を、お教え下さいますか?」


そのわたしの言葉に、彼は驚いたようであった。跳ね上がるように上げた顔は思いの外にあどけないが、幾多の修羅場を潜り抜けてきた者のみが持つ凄みを示し、線の細さはありながらも動かし難い精悍さを保っている。顔の造形は誰もが否定のしようがないほどに整っており、美少年、美男子と言っても過言ではない。このゲームの攻略対象のようなイケメンオーラはないものの、それはむしろ好感が持てる。


だいたい、わたしに言わせればイケメンオーラなんて代物は『俺のようなイケメンに抱いてもらえるんだから喜んで濡れ濡れの御満故開きやがれやおらおら』と公言しているようなものであり、あまり好感は持てない。


この私見は、言うまでもないが偏見丸出しである。後悔も反省もしていない。この偏見は、前世の『俺』がブサメンであったこととは全く関係ない、ということにしておいて下さいお願いします。


…何か話がずれた。彼は、縮み込むように跪いて臣下の礼を取ると、男にしては高い声、聴き心地のいい細いテノールの声を発したのである。


「親しくお声をおかけ下さり、恐悦至極に存じます。平民アレンと申します。願わくは、身分卑しき身に親しくお声掛けを下さった、お心広きやんごとなきお方の御名をお教え下されましたれば、幸甚至極に存じます」


やはり、彼がかのアレンという天才君だった。…しかしすげぇな。礼儀作法も完璧じゃねぇか。少なくとも、わたしが彼と同じ立場に立たされたらこんな完璧な礼は取れねぇ自信がある。


「アレンさん、丁寧なお名乗りを頂きありがとうございます。わたしは、エイミー・フォン・ブレイエスと申します」


その名乗りに、アレンという天才君はわずかな、しかし明確な驚愕を示した。

王立高等学園の女子生徒用制服のスカート丈と、町人Aの

容姿について (何れも書籍挿絵及びコミカライズ参照)

ご賛同頂けましたら、応援を宜しくお願い致します。


また、ブックマークといいね評価、また星の評価を下さった皆様には、

本当にありがたく、心よりお礼申し上げます。


厚かましいお願いではありますが、感想やレビューも

頂きたく、心よりお願い申し上げます。

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