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第17話 ヒロインは途方に暮れた挙句亡師の蔵書を漁る

最終話まで書き終えたことに伴い、章設定を行いました。

現行の物語を本編とし、最終話以降におまけ・後日談を付け加えていく予定です。

完結後も引き続きご愛読のほど、宜しくお願い致します。

わたしの治癒魔法の師匠であるレオンハルト・フォン・バインツ侯爵閣下 (これはレオンハルト閣下お一人に許された称号である。本来のバインツ家の爵位は伯爵である) の薨去から1ヶ月経って、わたしは12歳になった。


お父様とお母さんも、ブレイエス男爵家のメイドの皆さんも、冒険者ギルドの皆さんも、みんなわたしの誕生日をお祝いしてくれた。まぁ、上に挙げた皆さんに集まって頂いた、ブレイエス男爵家で行われたわたしの誕生日祝賀パーティーで、お父様とお母さんがいつものバカップルモードに突入してパーティー参加者全員をドン引きさせていたが、それはもうどうでもいい。


大事なことは、これでわたしのギルドカードにレベル、体力、魔力、実績の4つのステータスが記載されるようになったことだ。わたしは、ヨハネスさんに立ち会って貰ってわたしのギルドカードを確認した。


名前 : エイミー・フォン・ブレイエス

ランク : F

年齢 : 12

加護 : 癒し

スキル : A級治癒魔法通常発動・B級治癒魔法高速発動

居住地 : ルールデン

所持金 : 1,780,608

レベル : 1

体力 : G

魔力 : A-

実績 :


◇◆◇


「…めちゃくちゃ偏ったステータスでござんすね…」


ヨハネスさんが呆れたような声を出した。


ランクがFランクなのは、12歳になったばかりだからであり、レベルが1なのは、モンスターを倒していないからである。体力がGなのは少し情けないが、12歳になったばかりであれば珍しいことでもない。


なお、所持金はかなり多い。というか、12歳のガキが持つ金額ではない。理由は、ギルドに所属してからギルド専属ヒーラーとしてお給料を貰っているためだ。


ちなみに、ヨハネスさんに治癒魔法のイロハのイから教えてもらっていた謝礼と、バインツ侯爵閣下のテストを受けたときに使ったポーション代はさっ引いてある。ヨハネスさんはいずれもいらないと言ってくれたが、強引に受け取って貰った。


なお、お金の単位は『セント』である。セントラーレン王国の名前からとったらしい。通貨価値は時期によって変動が大きいので如何とも言い難いが、大体130セントでパンが一個買える。


また、実績の欄が白紙である理由は、迷宮踏破やモンスター討伐、護衛など荒事に限られているためである。閣下のテストを受けたときに盗賊の毒矢を受けた患者を治癒したのは実績に入れてもらってもいいんじゃないかと思ったけど…あ、あのときは途中で鼻血ブーになって気絶して、閣下に替わって頂いたんだった。そりゃ実績にはならんわなぁ。


問題は、スキルと魔力のステータスだ。はっきり言って、これはBランク、レベル30程度のそれらである。要は、スキルと魔力ばかりがあほみたいに高すぎるのだ。ちなみに、魔力がAマイナスなのはA級治癒魔法の高速発動をするには魔力が足りないからである。


まぁ、それでもゲーム中ではラスボスの暗黒騎士アナスタシアを倒すには到底足りないんだけどね。


理由は判り切っている。閣下に治癒魔法のご指南を頂いたためだ。閣下の、無茶振りそのものと言えるハイレベルな治癒魔法の発動機序理解強要と、スパルタという言葉が生易しく思えるくらいの魔力増強のための鍛錬、しかして他のステータスやスキルの増強には全く無関心であったことが、このいびつ極まりないステータスに繋がったと言えるだろう。


「レオンの野郎、こんないびつなステータス作りやがってどういうつもりだ…全く、何ぞやと天才は紙一重たぁよく言ったもんだぜ…」


わたしも同感だ。勿論、閣下は素晴らしいヒーラーであられたし、わたしには分に過ぎた治癒魔法の師匠として畏怖も尊崇も敬慕もしている。だが、はっきり言って閣下のご興味は治癒魔法と魔力に偏っており、他のものには目を向けようとする素振りすら見せないのだ。


そして、こんないびつなステータスになったことの大きな弊害が一つある。目に見えて、魔力が上がりにくくなったのだ。


以前にも言ったように、確かに冒険者ギルドにはケガ人には事欠かない。だが、冒険者ギルドでは冒険者のレベルやランクに見合ったクエストしか、冒険者には受けさせない。冒険者の分を超えるようなクエストは、絶対に受けさせないのだ。


絶対にありえない話だが、閣下がわたしに課したテストや指導のようなクエストを冒険者に受けさせるようなギルドがあったら、そんなギルドは大ケガ人、不具者、廃人、死人を出しまくってすぐ潰れる。


結果、ギルドで出るケガ人はE級やD級、重くてもC級治癒魔法の通常発動で十分に対処できる程度の患者ばかりである。わたしが閣下のご指導を受けるための資格テストのような事例は、例外中の例外だ。


そして、そんな程度の治癒魔法では、1日に500人程度治癒しなくてはわたしの魔力は枯渇しない。うぬぼれるつもりはさらさらないが、Aマイナスの魔力はその程度には強大だ。


そして、名うての冒険者であったと同時に有能辣腕なギルド長であるヨハネスさんが差配するこのギルドで、そんなにケガ人が出るわけがない。


え?お前の手持ちの、A級治癒魔法の通常・高速の両発動の無駄撃ちとポーションによる魔力強制回復の繰り返しで魔力の超回復を狙ったらいいんじゃないかって?


それやりました。そして、ヨハネスさんに叱られました。


もう、閣下の指導を受けるためのテストとは心身の疲労度が全然違うの。あのときは1日寝たら回復したけど、A級の時には、やった後で数日寝込んだの。それだけ、高位治癒魔法の発動が心身に与える負担はクソデカなの。


その間冒険者ギルドでケガ人が溜まりまくって、「エイミー様には一応給料をお支払いしておりやすんで、あまり仕事に穴を開けねぇようにして下さい」ってヨハネスさんに言われて、平謝りするしかなかったの。


というわけで、魔力増強の定番手法たる『魔力枯渇寸前からの超回復』という手法が、わたしには使えなくなってしまったのだ。え?魔石を体内に取り込む?やだ!絶対にやだ!


◇◆◇


「ふーむ…そいつぁ厄介なこってすねぇ…」


ギルド長室でヨハネスさんに魔力増強の手法がなくなったことを伝えると、ヨハネスさんは厳つい顔を顰めて考え込んだ。


「正直袋小路な気分です。魔力を上げなきゃA級の高速発動を身につけられない、A級の高速発動を身につけられなきゃS級の発動機序を構築することもできない…」


ギルド長室の応接セットのソファの上で、わたしは頭を抱え込んでいた。


「本当に厄介ですねぇ…エイミー様ぐれぇ魔力が上がっちまうと、モンスターを倒してレベルを上げたって、そうそう魔力は上がりやせん。くそ、レオンの野郎、厄介な問題残して逝っちまいやがって、俺があっちに行ったら一発ぶん殴ってやる」


「ヨハネスさん、そんな縁起でもないこと言わないで下さい…ッ!?」


ヨハネスさんが閣下のお名前の略称を出したとき、わたしの中にふと閃くものがあった。…そうだ、閣下にお別れのご挨拶をしたときに、閣下はご自身の蔵書をわたしに託すと仰って下さった!


「ヨハネスさん、閣下がわたしに託すって仰って下さった閣下の蔵書、あれってどこにありますか!?」


ヨハネスさんも、立派なスキンヘッドをぱっと上げた。


「レオンの蔵書!そうだ、そいつがあった!!エイミー様、あいつの蔵書は確かにうちのギルドで預かっておりやす。そいつを、調べてみやしょう!」


ヨハネスさんとわたしは、文字通りギルド長室を飛び出した。


◇◆◇


「これだけの量の蔵書を調べるんですかい…」


一室を埋め尽くす大量の木箱とそれに満載された蔵書を目の当たりにして、ヨハネスさんはげんなりした声を出したが、それには及ばなかった。木箱には『治癒魔法の原理』『治癒魔法の実践』『発動機序の構築』『魔力の増強』など、その木箱に入れられた本の内容を大書された紙が貼ってあったためだ。ここから、魔力の増強について書かれた箱を見つけ出せばいいのだ。…って、さっきあったじゃねぇか!


「ヨハネスさん、ありました!これです!」


「お?おう!こいつだ!エイミー様、よく見つけなさいやした!」


わたしとヨハネスさんは、興奮と歓喜のあまり右手を叩き合わせた。全力で。


ぶわあっちいいぃぃぃん!!


(いっで)えええぇぇぇぇッ!!!」


「あ、ああッ!!エイミー様、すいやせん!!」


右手に猛烈な衝撃を受け、その後で激痛が走った。わたしの繊手がヨハネスさんの巨巌のごときごつい手と、それも全力で衝突すればそうなるに決まっている。


すぐさまわたしは魔法で痛覚遮断と診断を行った。診断結果は、右手尺骨と橈骨の単純完全骨折。B級治癒魔法の通常発動で、後遺症もなく完治するレベルだ。一般に同じクラスの治癒呪文であっても通常発動より高速発動の方が治りが早いため、高速発動した。


A級治癒魔法の高速発動が長時間必要なレベルの重傷だったら、ヨハネスさんにポーションを大量に持ってきてもらって、この場で魔力のレベリングをやれたのに。チッ!


…あ、以前にそれやってヨハネスさんに叱られたんだった。

バランス感覚も大事だとお思い頂けたら、

応援を宜しくお願い致します。


また、ブックマークといいね評価、また星の評価を下さった皆様には、

本当にありがたく、心よりお礼申し上げます。


厚かましいお願いではありますが、感想やレビューも

頂きたく、心よりお願い申し上げます。

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