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プロローグ
記憶喪失とは、一般的にエピソード記憶が抜け落ちる状態だ。
一般常識はあるが自分の名前など覚えてないケースも存在する。
すなわち、経験というものが一切ないのだ。
ある種の躊躇がない、好奇心の塊。
そう言えるかもしれない。
「あの…」
聞き覚えのない声で振り返る。
なるほど、話したとしてもグループワークで数回。
特にこれといって目立った容姿でも功績でもない。
この男から声をかけられるとは、少々驚いた。
確かこの男の名前は
「どうしたのかな?グレイ君」
「っ!俺の名前?!」
「え?」
名前を読んだだけで驚かれてしまった。
入学当初こそ数知れず、こういった手合いは最近数を減らしてきたと認識していたが。
「俺の名前が分かるのか?」
「それは…同じ学年だからね、把握はしているとも」
「いや俺、記憶喪失みたいなんだけど…」
「は?」
本日二度目の驚きであった。