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095 形式番号DRNX3358-13

 世界を……超えたのか?

 感覚的にはそういった感じがあった。


 眼下には緑の大地。一面の森と草原。見たことのない植生の深緑の帯が広がっており、明らかに日本の様子とは異なる。

 そんな世界の空に俺は浮いていたのだ。


 ここにキッテが……。


 ――ピピピピピ


 脳内にアラート音が響き、視界の中……緑の森の一部に赤い点が表示されたのだ。

 ターゲットを示す赤い点。


 俺は息を飲んだ。

 小さな赤い点から伸びた線にはヘレンと書いてあったからだ。

 

 その小さな点をじっと見ようとすると視界がズームしていき――


 ――ピピピピピ


『敵味方識別子を確認』


 アラートと共に、画面内の状況が判明する。


 まずい! 非常にまずい状態だ!


 なんせキッテは、多くの異形の魔物や、剣や槍などの刃物を向けている人間の軍勢に取り囲まれていたからだ。


 急いで救わないと!! けど、どうやって!?


『標準火器、イフリータフレイムの使用準備が完了しました』


 使う使う! この声、きっとサポートスキルなんだろ。俺のために女神さまが授けてくれたに違いない。

  サポートスキルの提案は基本的に正しいことを選択してくれる。どんな異世界でもサポートスキルの有無で段違いに物語が変わってくるのが定番だ。


 緊急事態ともあって、俺は脊髄反射で答える。


 んが?


 口が開いた。


 その瞬間、視界の中に炎が出現し、【魔物:ディスディアクター】と表示された集団がいる崖の上を焼き払っていく。


 ちょ、ちょっとまて、消し炭になってんぞ!? おわわ! その先は! まてまてまて!

 敵とは言え人間だぞ! 俺を大量殺人者にする気か! やめろ! ストップ!


『緊急停止コードを承認。イフリータフレイムを終了します』


 なんてこった。サポートスキルを鵜吞みにしすぎたってことか。

 おい! これだけ強いなら無力化だって容易いはずだろ?


『イエス。ティンクルライト装填完了。射出しますか?』


 まてまてまて。説明。説明を求める。ティンクルライトってなんだよ!


『光学誘導兵器ティンクルライト。高密度に圧縮された光によって対象を撃ち抜く兵装。無力化をご命令(コマンド)のため、今回は対象数3315の手足を撃ち抜くことで無力化を図ります。よろしいですか?』


 ぬぬぬ。恐ろしい攻撃には違いないが――


『状況は一刻を争いますよ?』

 

 ええい、分かってるよ! 承認。承認だ!


指令(ディレクティブ)受諾(アクセプタンス)。ティンクルライト射出』


 背中のあたりが何かモゾモゾしたかと思ったその瞬間、幾本もの光の軌跡が映し出されて視界一杯に光り輝いたのだ。


 直後、機械音と共に、画面内の敵勢力のステータスが全て無力化に変わった。


 すごいな……。これが女神様が言ってた、どら……なんとか。


『形式番号DRNX3358-13。ドラグライナー型13番機シュバルドバイトです』


 そうそうそれそれ。竜型の機械ってことだよな。

 でも俺、なんか乗ってるっていう感じがしないんだけど? コックピットとかシートとかどうなってるの? なんというか、俺の体が機械の体そのものっていう感じが。


『適性が高くて助かります。あなたはシュバルドバイトを操縦しているというわけではありません。あなたがシュバルドバイト。シュバルドバイトがあなたなのです』


 やっぱりか。思うだけで動くもんな。腕を動かそうと思えば腕が、足を動かそうと思えば足が動く。


 以前の小さな竜のときもそうだった。だから俺は自分の事を本物の竜だと思っていたんだ。

 まさか作り物だとは思わなかったよ。それに薄々気づいたのは反・魔法障壁派アンチウォーリストの集団レグニアの幹部、イーヴに腕を切られた時だった。


 つまりあの時と同じような体ってわけだ。

 違うのはサポートスキルさんの声があることか。


『スキルではありません。AIです。基本的にこちらから話しかけることはありませんのでご安心ください』


 そっか。まあ緊急時には助けてもらうよ。


『はい。それではご提案です。こうしている間にも味方識別子の数が減っていますが、至急対応することをお勧めします』


 って、やべー! 味方識別子ってキッテの仲間たちだろ? 間に合うのか!


 慌てて現場に急行する。

 見る見るうちに地表が近づいて……そしてそこに彼女がいた。


「キッテ……」


 傷だらけで血まみれの女の子。

 男の子を抱きかかえたままうつろな目でこちらを見ている女の子。

 髪色は銀色だし肌は褐色だけど、俺には分かる。彼女がキッテだ。


 周りの状況から大変な事態だったことは分かる。

 今すぐに抱きしめて、大変だったな、もう大丈夫だと言ってやりたい。だけど俺の体は昔の体と比べて段違いに大きい。おそらく10mはあるだろう。鱗だって金属製の装甲だ。感触が気持ちいいって言ってくれたあの時とはもう違うんだ。


『感傷に浸っている所申し訳ございません。味方の識別子で今にも消えそうな個体がたくさんいますが』


 おっと、そうだった! で、なんとかできるのか?


『非常用の応急処置キットが搭載されています。大量にはありませんが、現在の味方の治療に必要な数には足ります』


 よしよし、じゃあ治療開始だ!

お読みいただきありがとうございます。


圧倒的ではないか、ぐえちゃんは!

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