079 キッテのお人形
面接をしたり偽除霊士を倒したりと、いろいろあったが俺たちの当面の目的は生ける金属リビルジェン・メタルジアを作ること。
素材の一つが不死鳥の灰であることは分かっていて、図書館調査で不死鳥が生息している場所を突き止めることに成功した。
生息地が分かったとはいえ、素材を入手しなければ絵にかいた餅。
「いらっしゃいませー!」
それにはまず、このアトリエをどうにかしなくてはならない。
「惚れ薬ですね。こちらは効果が高すぎるのでご使用には注意してくださいね」
「あっ、お目が高いですね。こちらはグルグルドリル君28号。この取っ手を回すと、ギミル鋼とアルマ合金でできた先端が回転してどんなものでも簡単に穴があけられる優れものです」
「除霊魔法道具をお探しですか? それなら悪霊撃滅棍棒はいかがでしょうか」
この盛況ぶり。
わんさかとお客さんがやってきて、配達依頼もひっきりなしの状態を何とかしなくてはならない。錬金術師として嬉しい悲鳴ではあるが、俺たちのおかれた状況には望ましくない。
「あっ! いいこと思いついたよ!」
そして突然キッテが何かを思いついたらしい。
数日後のアトリエ閉店後のこと。
「キーティアナさん。お届け物です」
裏口に宅配の兄ちゃんがやってきて、荷物を置いていった。
「ぐえっ?」
なんだ、棺桶?
「入れ物の趣味はあれだけど、見てのお楽しみだよ」
そう言ってキッテは棺桶をアトリエの中に運び込んだ。
いったいこれはなんなのか。
「はーい。オープン!」
ゴトリと棺桶の蓋を開けると、そこには人形が横たわっていた。
赤茶色の髪の毛をしたショートカットの人形。身に着けている白いエプロンと黒いドレスのようなそれは、まさにメイド服。
「どう?」
どうって、言われてもな。これ、どうしたんだよ。この、等身大人形!
そうなのだ。この人形は等身大。そうは言ってもキッテの身長よりも大きい。
胸も大きく作ってあるし、太ももも健康な感じを出しているムチムチ感。
「ぐえええ……」
この人形、もしかして、キッテの理想の女性像をつっこんでる?
「分かっちゃう? 界隈で有名な人形師のガージル翁に依頼したんだけど、どんな人形にするのか細かく条件を教えろって言われてね。とりあえず思いつくことを書いて送っておいたんだ」
あぁ、夜中になんか書いてるなって思ったけどそれがそうか。
それで、なんで人形を?
「それはね! エミールにこの人形に取り憑いて操作してもらって、アトリエのアルバイトをしてもらおうかなって!」
なるほど! エミールは霊体。それは妙案だ。
「じゃあエミール、お願いね! 体があればバーベキューもディスコもやり放題だよ!」
『本当ですKA! じゃあやりまSU!』
二つ返事で引き受けたエミール。
すぐさま仮宿の大百科から黒いもやが吹き出してきて、それが人形へと吸い込まれていく。
奇妙な光景だ。人形の穴、口と鼻と耳へと入って行っている。それに尻が含まれていなかったのは幸いだと思う……。
さてさて、大百科から黒もやが出尽くしたようだな。
棺桶に寝ていた人形が、ぐぐぐと体を起こしていく。
「成功だ! やったねぐえちゃん!」
ああ、すごいな。
「エミール、こっちに来て」
言われたとおりにエミールが立ち上がってキッテの前に来る。
キッテの望みを反映したその体は、キッテの頭三つくらい身長が違う。まるで子供と大人。そのため、キッテが抱き着くと、ちょうどエミール人形の胸のあたりに顔がくることになる。
「ふかふかだぁ~」
顔をうずめてその感触を味わうキッテ。
「こっちもぷにぷに」
エミールの尻に手をまわして触感を確かめても見る。
と、とりあえず、人形で遊ぶ女の子というポジションなので法的にはセーフ。
「どう、エミール?」
「…………」
「エミール?」
「……」
エミールからの返事はない。
やっぱり偽の体だからって、胸とか尻とか触りまくったから怒ってるんじゃないのか?
「ご、ごめんねエミール。あの、その、私の理想のナイスバディだったから、つい」
「……」
「も、もうしないから、ね。許してよ」
『違うんですYO! 人形に憑依してると話せないんでSU!』
人形の口が開いてそこから黒いもやが出て来ると、いつものエミールの声が聞こえてきた。
まじか……。完ぺきと思われた作戦にこんな落とし穴が。
「ま、まあ。接客に必要なのは笑顔だから。本当に必要な時は今みたいに分離してしゃべってもらえばいいよ、たぶん」
ええんかそれで。
「じゃあ、練習しよっか」
そうしてエミールの接客研修が始まった。
◆◆◆
「いい、エミール? 研修は実地だよ。私が指示を出すからしっかりね!」
開店時間直前のアトリエ内。これからお客さんを迎え入れるところなのだが、研修はぶつけ本番で行われる。コンビニで研修中っていう名札を付けている人と同じ扱いだな。
「じゃあ開店するよ。まずは挨拶だからね。笑顔でにこやかに、そして明るく!」
エミールが小さく頷く。表情が無表情だけど大丈夫か?
――チリンチリン
開店と同時に店外に並んでいたお客様がアトリエ内になだれ込んできた。
「いらっしゃいませー! ほら、エミール」
お客様に対して笑顔の挨拶。それを促されたエミールはと言うと――
『い、いらっしゃいまSEー』
ぎこちないながらも声は出ている。
だが……
「えっ? あの人……」
「新しい店員さん?」
「ちょ、ちょっと怖いかも」
店内に入ってきた女性客の団体様による、入口正面のエミールを見てのお言葉。
それもそのはず。エミールは天を仰いだ姿で白目をむき、口から黒いもやが湧き出ていて、ホラーさながらの姿だからだ。
「ちょ、エミール、その、挨拶は後で練習しよ。笑顔笑顔」
すぐさま方針を変更。エミールはニコリとした笑顔で手を振るだけのマシーンと化してしまった。
まあそれでもマイナスになるよりはいい。
だがしかし、試練はこれだけではなかった。次の試練がやってきて、その次の試練もその次の次もが待ち受けていたのだった……。
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キッテちゃん人形(理想像)のフィギュア化よろしくお願いします!(誰への呼びかけなのか




