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015  アトリエ認可試験に合格しよう!

 アトリエ認可試験。それは新米錬金術が必ず通らなければならない道。


 錬金術師を公に証明する資格は無く、自分が錬金術師だと言えば自称錬金術師となる。

 しかしそれでは社会の信頼は得られない。

 社会の信頼を得られる錬金術師になるには、工房兼店舗であるアトリエを構える必要がある。

 アトリエを構えてこそ一人前の錬金術師。

 そしてアトリエを構えるための条件としてアトリエ認可試験が毎年行われているのだ。


 今日はそのアトリエ認可試験が行われる日で、この日のためにキッテは必死に勉強してきた。

 合格すれば見習い錬金術師とはおさらば。

 言い換えれば、今日キッテは一人前の錬金術師デビューをするという日なのだ。


「ぐえちゃーん、出発するよー!」


 朝ごはんを終えて、身だしなみを整えて、昨日のうちに準備した試験セットを持って準備万端のキッテ。ブンブンと手を振って家の入口で俺を待っている。

 トレードマークの白と赤の帽子はちょこんと頭の上に乗っていて可愛いし、オレンジ色のチューブトップの服とスカートは良く似合っている。

 首元がスカスカしているようでちょっと心もとない感じがするんだけど、まあ気になるのは俺だけなんだろう。


 はやく、はやくー、と笑顔で手を振ってくれるキッテ。


 ふよふよと飛んでキッテの元にたどり着くと、いつもと違ってキッテはそのまま道を歩き出す。 


 おや? いつもの自転車もどきには乗らないのだろうか。


 最近キッテは移動する際に、自作した自転車のような乗り物に乗っている。

 自転車のような、とは前後2輪の自転車とは違って、前、前上、中、後上、後の合計5輪で、それらは一直線に並んでいて、全ての輪は、かみ合ったギアのように回転し合っている乗り物だ。

 まあそうか。あれはまだ試作品で、実は乗るよりも歩いたほうが早いという代物だからな。


 これまでにもいくつかの試作品を作ってきたキッテ。

 日本でいう赤ちゃんの歩行器のような円形で、下部から空気を噴出させることで僅かにふわりと浮いて、足で跳ねるように移動するタイプの試作品はいいところまで行ったのだが、持続距離に難ありで残念ながらお蔵入りとなった。


 失敗は成功の友。キッテが立派な錬金術師を目指して頑張っている証拠なので俺は嬉しいぞ。


 そんな他愛もない事を考えながら俺達は試験会場のある回復薬取扱認可協会本部へと向かった。


 ◆◆◆


「わ~、結構人がいるね!」


 回復薬取扱認可協会。通称アトモス。

 王都にある回復薬取扱認可協会(アトモス)本部は、日本の学校のように校舎のような建物が何棟か立ち並び、運動場のような広場もある場所だ。

 そこには認可を求めて多くの錬金術師たちが集まっているだけでなく、認可試験を一目見ようという観客たちや、その観客たち目当ての屋台や露店が並んでおり、お祭りさながらの熱気を放っている。


 なぜ観客が、と思われるかもしれない。

 認可試験は毎年何題かの実技試験が行われていて、それは一般に公開されている。そして、一般からの協力者を募って行われる試験もあるのだ。


 つまり、年に一度この日に行われる認可試験は人々にとっては娯楽の類、エンターテイメントなのだ。


 俺達は会場に設けられた参加者受付へと向かう。

 その途中。


「ねえぐえちゃん、女の子だ。同い年ぐらいかな!」


 キッテのはしゃぐ声の先。そこにはキッテと同じく14、5歳くらいの女の子がいた。

 けど……くる場所を間違えているのでは? と思うのは、彼女はウェーブのかかった腰まである綺麗な金色の髪の毛に宝石のついた髪留めをしていて、その服は濃い青色をしたフリル付きドレスという姿なのだ。

 どう見ても今から試験を受けようと言う恰好ではなく、どこぞの貴族のダンスパーティーに参加している令嬢のようだ。

 青色の目も綺麗な美人さんではあるが、表情は無表情……というよりも冷たく感じる。ご機嫌斜めな様子が見て取れるぞ。


 触らぬ神になんとやら、だな。

 きっと関わるとろくなことにならない。


「こんにちは! 私はキーティアナ! あなたの名前は?」


 ってー、もう突撃してらっしゃる!

 おいおいキッテ、その子には触れてはいけない何かを感じるぞ。愛想笑いしながらゆっくり後退して先に受付をした方が……。


 いわんこっちゃない。

 冷たく冷ややかな目で見られて――


「話しかけないでくださる?」


 と言われてそっぽ向かれたぞ。

 だけどそれで諦めないのがキッテであって……。


「ねえ! あなたも試験受けに来たんでしょ? どこの子? 私はね――」


「うるさいですわね! 庶民が気安く話しかけないでくださいまし」


 ピシャリとそう言うと、ふわりと髪をなびかせて去って行ってしまった。


「あー、行っちゃった。お友達になれるかな、ぐえちゃん?」


「ぐえぇ」


 うーん、ちょっと難しいんじゃないのか? 試験ではライバルだからな。気が立ってるのかもしれないし、そうじゃなくて元々気が強いのかもしれないし。


「また後で話しかけてみよっと」


 まあほどほどにな。

 さあ、受付に行こうぜ。

お読みいただきありがとうございます。

アトリエ認可試験が始まりました。(まだ始まってない

いったいどんな試験が待ち受けているのか。

これ見よがしに出てきた新キャラは物語にどう絡むのか。


次回をお楽しみに!

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