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105/108

105 MGI

「伯爵! MGIが現れました! 至急非難を!」


「ば、ばかな! どこからだ!」


「それが! 空からです! この屋敷もすでに取り囲まれています! 至急非難を!」


「ぐっ! くそっ! わしはチューチューン伯爵だぞ! おい! 地下から逃げるぞ! いくら奴らでも追ってはこられまい」


「伯爵! ため込んだ財宝はどうされますか!」


「持てるだけ持ってこい!」


 ――ドウッ


 アースザイン帝国オウ領。そこの領主の館に攻め入ったのは10個の歯車の紋章を持つ軍団。どこからともなく現れて人々を襲い、そして去っていく。その軍団の名前はMGI(エムジーアイ)


 赤い鎧で全身を固めた人型の兵士。男なのか女なのか、そもそも人間なのか分からないそれは、屋敷の壁をぶち破って内部へと侵入してきた。


「お、お前ら! 何が望みだ! 金か? 金ならいくらでもやる! どうだ、この黄金像。わしが汗水たらして働いて得た逸品だ。こいつをやろう。だから見逃してくれい!」


 彼が汗水たらして不正を働き弱者から搾取して得た金銀財宝。それを日夜眺めるのが趣味であるチューチューン伯であるが、それよりも何よりも大切なのは命。

 命があれば財宝など、何度でも弱者たちから絞り上げられる。


「…………」


 だが、呼びかけに応じることは無い。

 兜で表情が隠されているためはっきりと見ることはできないが、現れた時と変わらない無機質な表情を浮かべているに違いない。


「頼む! そ、そうだ、これだけじゃ足りないのだな、もっとやろう! 地下にいくらでもある。それだけあれば何でも思うがままだ!」


 何とかこの場を乗り切らなくてはならない。もう少しすれば精鋭の重騎士がやってくる。

 そうしたら()()()()()()()()()()()()()()()()


「アークカウンター値2500」


「は? なにって?」


 赤い鎧を着こんだ兵士。すなわち錬金術兵A(アルケミー)S(ソルジャー)が音声を発した。


「排除実行」


 手に持った筒のようなものを伯爵に向ける。


 伯爵は悟った。これは脅しではない。

 あの見たことのない物が自らの命を奪うための物であろうことを、これまでずるがしこく培ってきた直感が教えてくれる。


「ま、まて、今なら、ここの領主にしてや――」


 伯爵の言葉はそこで止まってかき消える。


「ああっ、伯爵が光の粒に!」


 ASが手に持った筒から光線が放たれる。

 その攻撃によって伯爵は光となって、空へと消えた。

 死体も残らずに、元々そこには誰も居なかったかのようになんの痕跡も残さずに。


「そんな、伯爵……」


 主の消失に呆然とする側近。


「アークカウンター値750」


「へっ?」


 どうやらASの次の標的は横にいた側近のようだ。

 無機質な表情のまま、筒の向きを側近へと合わせる。


 ――ガチャン


「大丈夫ですか伯爵!」


 頼みの重騎士がやってきた。その数10名。


「お、遅いぞ。こいつを倒せ! 伯爵のお部屋から排除するんだ!」


 やってきた重騎士は側近に言われるがままASを取り囲む。

 肝心の伯爵の姿が見えないが、側近もまた護衛対象であることには間違いない。


 ――ドゥン


 音と共に、壁にさらなる穴が開く。


「ば、ばかなっ!」


 轟音と共に現れたのは、同様のAS。それが5体。


「アークカウンター値、68、154、97」

「アークカウンター値、362、228、85……」


 それぞれが謎の値を呟いて。


「や、やれっ!」


 理解できない恐怖に駆られる側近。目の前で主を失ったところであることがその恐怖に拍車をかけ、少しでも早くその恐怖を取り除こうとした。


 伯爵の側近の号令で重騎士団が襲い掛かるも――


「ぎゃあっ!」

「ぐぶっ!」

「そ、そんな……」


 あるものは剣に切り裂かれ、あるものは槍に貫かれ、あるものは銃のようなもので撃ち抜かれて、そして等しく光の粒となって消え去っていく。


「あ、あああ……」


 ただ一人の重騎士を除いて。


 AS達は、腰を抜かして床にへたり込んだその男を置いて、屋敷の外へと姿を消したのだった。


 ◆◆◆


 これはただ一つの事例に過ぎない。

 MGIが確認されてから、すでにいくらかの時間が経っている。同様の事例はリヴニスの地に蔓延る魔物達にも、海洋国家シーヴル本国でも、そして激動を生き抜いてきたリヴニスの民にも起こっていた……。

お読みいただきありがとうございます。

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