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恋した魚
私は冴えない赤い金魚
縁日のプールからやって来た
今の家は小さいけれど
硝子の向こうで暖かい
家族の瞳が見つめてる
私の煌めく初恋の
出逢いは小さなビニール袋
真紅にピンクの輝き添えた
綺麗な身体の熱帯魚
届きそうで届けない
それから突然逢えなくなって
心の片隅痛んだけれど
一年後の縁日の今宵
硝子の向こうで踊り出す
少女の浴衣で泳いでた
私はやっと気が付いた
恋した魚は浴衣の模様
なのに不思議と哀しくない
彼女に生命はないけれど
私の中では生きていた
たった一つ哀しいことは
来年もう一度逢えぬ儘
私が先に去り逝くことで──
尊い生命の終焉を
鮮やかな君に重ねてる




