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名のない寒がり
冬一番の寒がりが
ほら、今日も僕らの傍に
そいつは何をどうしても
暖かくはなれないんだ
何しろ姿がないからね
毛皮も身に纏えない
だから誰かにくっつくけれど
みんないそいそ離れてしまう
だから 僕は時々
コートのボタン搔き合わせ
全身いっぱい抱き締めてやる
するとそいつは喜んで
ピンと張った清らかな想いを
僕に注いでくれるのさ
切ない香り漂わせても
芯はとびきり力強い
そんな奴からの
心からの贈り物
そいつに名前はないけれど
いつしか「北風」と呼ばれてる