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忘れゆく魔法
僕が枯れ枝に魔法をかけると
それは煌めく剣になる
塀を飛び越え侍に
私が木の実に魔法をかけると
それは輝く宝石になる
胸にかざしてブローチに
僕が魔法でお喋りすると
黄昏の風も答えてくれる
今夜のおかずを教えてくれる
私が魔法でお喋りすると
鼻水子猫も答えてくれる
お風邪に注意と教えてくれる
辞書もないのに覚えた呪文だから
忘れる時もいつの間にか
それを受け止めた時
僕らはもう
大人の入り口に立っているのだろうか
「ずっと子供でいたい」と
最後の呪文は届かない
こんなに素敵な魔法の代わりに
僕らは何を得てゆくのだろう