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越後の虎  作者: 立道智之
35/77

子弟

半年に渡る関東管領の祝賀式が終わると永禄3年(1560年)春に景虎は初めて越中に出兵した。

一昨年からの一向一揆の騒ぎの件に便乗して富山城の神保長織が松倉城の椎名康胤を攻めてその椎名より救援依頼が入ったため急遽出兵したのである。椎名康胤は父為景以来の盟友である。

田植えが終わると慌しく兵を集めて越中に出陣した。

神保軍は信玄と比べるとはるかに弱小である。今回は本庄実乃や新兵衛、千坂景親の親衛隊以外に斉藤朝信、北条高広と少数の部隊で間に合うほどであった。

肝心の戦のほうだが神保軍は越後軍を見ると武具を捨ててさっさと逃げ出してしまったため大した戦にはならずあっさり終わったため景虎たちはすぐに越後に引き返した。

春日山城への帰り道

「初陣は如何でしたかな?」

斉藤が本庄秀綱に声をかけていた。秀綱は本庄実乃の長男で今回が初陣である。

既に父同様、景虎上洛時に太刀持ちを任されるなど信頼が厚かったが実乃の秘蔵っ子だけあって戦は少し出るのが遅れていた。

景虎も初陣の時、幼い頃の彼に栃尾城で会ったことがあった。もっともあの時は景虎も緊張と怖さで周りを見る余裕がなかったので秀綱の事を良く覚えていなかったが。

「以外にあっさり終わったので安心しました・・もう少し手応えがあればよかったのですが・・」

秀綱が答えた。

「油断はいかんぞ・・少数でも強い連中はいっぱいいるぞ・・」

実乃が息子を戒めた。

戸倉与八郎が景虎を指差しながら

「すぐそば、ここにいるって!」

と笑い飛ばした。

「姫様の初陣は凄まじかったと父に聞いていたのですが・・」

秀綱が景虎に聞いてきた。

景虎もふと自分の初陣を思い出した。

今思っても生き残ったのが奇跡であった。

酒で怖さを必死に紛らわしていたあの時の自分を思い出し景虎も思わず少し苦笑いしてしまった。

「あの戦は本当に凄まじかったな・・」

秋山源蔵が懐かしそうに答えた。

「いやいや・・みなの奮闘のおかげだ・・」

景虎が謙遜気味に答えた。

「おお その話聞きたいわ!」

弥太郎が声を出した。弥太郎は実父の鬼小島の話が聞きたかったのである。

以前景虎と話をしたときは景虎が気を使ってくれてあまり聞けなかったからである。

「・・今でもそうだが・・怖さを酒で紛らわし必死だったのを覚えているな・・」

景虎は静かに苦笑いしながら言った。

「まだこの世に未練が多いからな・・」

もちろん本心でもある。

実は景虎は越後や甲斐、関東が静かになったらまた都に上りたいと密かに考えていた。

今度は何も考えずにゆっくりと行きたかった。そのための未練である。もちろん内緒であるが・・

「酒と・・この世の未練と言うか・・死にたくない心が大事でしょうか・・」

秀綱は生真面目に聞いてきた。秀綱の若者らしいあまりに生真面目な回答にみなくすりと少し笑ってしまったが。

「酒はともかく・・死にたくないというか諦めない、最後まで怖れずに戦えと言う気構えだな・・」

実乃が答えた。

「・・状況を常に冷静に判断し己の恐怖心を殺して必死に戦うことが生き残るコツですな・・」

秋山源蔵も真面目に答えた。

「部下の忠告にも耳を傾けることも大事だ・・鬼小島の指示は素晴らしかった・・」

(・・最近自分は少しこれが出来ていないかな・・)

内心自分にも言い聞かせながら景虎も真面目に答えた。

「いやぁ・・鬼小島殿は凄かったぞ・・弥太郎」

源蔵は弥太郎に言った。景虎もうなずいた。

弥太郎は黙ってさっきとは違い真剣な顔で聞いていた。

「鬼小島がいなかったら私はここに居なかった・・彼には感謝している」

景虎は思い出したのか少しまた悲しそうな顔をしてしまった。

「あの老人はまさに武勇の誉れですな」

新兵衛も言った。実乃も景虎もうなずいた。

「そうかぁ・・あのクソ親父でも最後は一花咲かせたんだな・・やるなぁ・・誉れなこった!今度墓に酒でもかけとこかな!ガハハ・・」

場の少し暗くなった雰囲気に気づいてか弥太郎が笑い飛ばした。

新兵衛と景虎は顔を見合わせた。やはり弥太郎には全て見抜かれていたのである。

「弥太郎・・」

景虎は静かに言った。

「以前本当の事を言えなくてすまなかった・・」

景虎は生真面目に弥太郎に謝った。

「いやいや。親父が生きていたら今頃お袋にやられていたでしょうよ!お袋にではなくて戦場で死ねたのが何よりも親父にとって誉れですわ!」

弥太郎が笑い飛ばした。

景虎は胸のわだかまりが取れた気がした。

「今後も頼む・・」

景虎は言った。

「お任せあれ!ついでに源蔵や与八郎の面倒も見たりますわ!」

弥太郎は胸をどんと叩いた。みな笑った。

「全く・・すぐに調子に乗りおって・・」

源蔵が苦笑いした。

「やっぱ親父さん連れてきてもう一度鍛え直してもらうべきだったな・・」

与八郎も冗談を続けた。

「親父さんじゃなくて春日山の城下にいるお袋さんを連れてきて鍛え直してもらってもよかろうが」

新兵衛が言うと

「いやぁ・・それだけは本当に勘弁願いますわ・・」

と弥太郎が縮こまると再度笑いが起きた。


「それにしても『我は毘沙門天の使いである!』は格好よかったですぞ」

源蔵が少し冷やかし目に言うと

「味方を勇気付けようと思ったら・・酒の分量を間違えた勢いで・・」

景虎はまた苦笑いしてしまった。少し笑いが起きた。

「やはり酒も少しは大事ですね・・」

秀綱が笑顔で言うと

「まぁ、呑みすぎないようほどほどにな・・」

新兵衛がとがめると笑いが起きた。


与八郎が空気を読んだのか話を変えてきた。

「ところで新兵衛殿にもすごい逸話がありますぞ!」

「堅物な新兵衛殿に?おお!聞かせてくれ!」

弥太郎が再度乗ってきた。

「戦の真っ最中に馬の上で催してしまい、小便を撒き散らしなら3人を討ち取ったんじゃ!」

大笑いが起きた。

「馬の上で小便をしながら3人も討ち取るなどさすが新兵衛殿じゃ!」

北条が笑い転げていた。

「馬も迷惑じゃろうがそれにしても討たれた奴はあの世で仰天しとっただろうな!」

弥太郎も大笑いである。

景虎は少し顔を赤らめていたが。

新兵衛も

「与八郎・・それを言うなよ・・」

と顔を赤らめていたが。

「まぁ、なにはともあれ今回は初陣には持ってこいの戦だったな」

斉藤が最後に締めた。

ちなみに初陣だが普通はこのような安全な戦にしか出さないのである。景虎の初陣の栃尾城戦は例外であった。


今回の戦が平穏に終わったことに関して景虎は

「早速関東管領の効果があったかな・・」

と思わず漏らしてしまったが実乃は

「北条相手ではこんなのではすみませんぞ・・」

と言って景虎を戒めた。実乃の本心であった。

「確かに・・越中は関東ではないからな・・」

と景虎も冗談交じりで軽く返したが。

実乃はその後小声で景虎に言った。

軒猿の情報だと神保の裏に武田がついているという噂が流れているという。

信玄が越中までに糸を引いているのは景虎も正直驚いたが同時に和睦の件をどうするかも再度思い出したのであった。

ちなみに越中方面も今後の景虎の人生に後で大きく関わってくる。


春日山城に戻ってしばらくして6月になると東海地方から衝撃的な情報が入ってきた。

駿河の今川義元があの織田信長に討たれたとのことであった。

義元は高々と上洛宣言をして数万の大軍を率いて駿府(静岡市)を出発し破竹の勢いで進軍していたのであったがその途中の桶狭間で千足らずの少数の織田軍に不意を突かれて討たれたという。

景虎も驚いたが自分同様将軍家に忠節を誓う信長が将軍家に反抗的な武田、北条の一角の今川に勝利をすることにうれしく思い彼に勝利祝いの手紙を送っている。

景虎が言うに当然の勝利であると。

またこの戦で織田信長の名前は天下に轟くようになるのである。

景虎は信長と直接会うことは終生なかったがこの後手紙などのやり取りで付き合いが続くことになる。もちろんその関係も徐々に変わっていくのである。


一方景虎も関東遠征の準備を着々と進め先発隊を初めて三国峠を越山させて上野国の厩橋城(群馬県前橋市)に出発させた。上野国は元々は景虎の元に逃げ込んでいる上杉憲政の領土で彼が逃げ出してからは家臣の長野業正が西上野の箕輪城で信玄や氏康から上野国を守ってくれていた。

業正らが粘ってくれたおかげで景虎は関東の拠点となる厩橋城を難なく押さえることができたのである。業正とその息子の業盛は景虎陣営の武将として引き続き短い期間であったが活躍することになる。

厩橋城を基点に情報収集や関東諸将への懐柔や取り込みの先発隊の要員は斉藤朝信、北条高広、本庄繁長、長尾藤景らが任された。

斉藤や北条は景虎古参の幹部であるが繁長や藤景は新参であったが二人とも今回大役を任せられることになった。武勇に優れた景虎期待の若手として登用抜擢されたのであった。


景虎も秋には春日山城を出発して初めての関東に向けて出発した。

武田対策に春日山城の留守役には直江景綱、柿崎景家、黒川実氏、桃井義孝、景虎の旗本の吉江景資を今回は留守役にお願いした。

宇佐美は政景とのからみがあったので留守を希望したが今回は無理に連れて行った。

いい加減子供のような仲違いは何とかして欲しかったからである。


景虎は三国峠を越える前に政景の拠点、坂戸城(越後湯沢市)に軍を集めた。越後国内の最前線基地でありここで軍を一度束ねて三国峠を越えるのである。

景虎にとって久々の坂戸城であった。越後統一時の最終戦以来、9年振りであった。

坂戸の城下町は当時よりも栄えていた。坂戸城周辺は山々に囲まれた盆地であるが田畑もよく耕され、周囲の山では金山の開発も行われ上田長尾の重要な資金源になっていた。

城下町も三国峠を往復している商人の休憩、荷物の運搬手伝いなど設備が整えられ彼らをうまく取り込み城下を栄えさせていた。温泉までもが掘削され普段は峠越えの商人の休憩に、戦時は負傷した兵士の療養に使われていた。

坂戸城の城下町が賑やかなのは秘密があった。坂戸城は越後の関東に対する重要防衛拠点であるには違いないので常に屈強な兵士を揃えておく必要があった。そこで政景は兵士、男手を揃えるために面白いことをしていた。

当時外から来た婿養子というのは低く見られ嫌がられる風潮があった。しかし戦国の世では男手は戦に出てそのまま帰らなくなり末亡人なども多かったのであるがそのまま放っておけば町は寂れてしまう。

そこで政景は婿入りしてきた者たちが地元に馴染み子供を産んで町が繁栄するようにと、この風潮を払拭し城下を発展させるために、その年に自領へ婿にやってきた者を集め、婿殿の体を皆で持ち上げ祝い讃えるように命じたのである。胴上げの風習である。

これが日本最古の胴上げの風習であると現在でも伝えられている。

この独特の人口増員策に思わず景虎も感嘆してしまった。

政景は政治上手ではあったがさすがであると。

これにはあの宇佐美も素直に感心していた。


景虎は坂戸城に入ると政景、仙桃院の姉夫婦と再度面会して関東管領祝賀式での協力に対して礼を言った。

上田衆が今回の序列の件で不平が出ていると景虎も聞いていたが特に二人とも顔色を変えることは無かった。特に姉は前回と違い普段のまま顔色変えることなかった。

その時政景と仙桃院から会って欲しい人物がいるとの紹介を受けた。

栗林政頼と言い上田長尾家の重臣で政景、仙桃院夫婦の長男の義景の後見人とのことである。

景虎はすぐに悟った。後継者の件であろうと・・

栗林は景虎に深々と挨拶をすると景虎に言った。

上田衆は御館様に忠節を誓う次第であると。血縁がある以上序列など関係無いと言った。

景虎も栗林に礼を言ったが結局後継ぎの件はこの時は直接には話せなかった。

義景を後継にすることは景虎は本音では意義は無かったが他の家臣団の本心が分からなかったからである。

この件で家臣団がばらばらになるのはなんとしても避けたかったのであった。

「義景殿の件は充分に了解しています・・悪いようにはしませんが家臣団との調整が必要でありますのでもうしばしお時間を・・」

景虎なりに最大限の良い返事をした。

姉夫婦や栗林は安心したようで心なしかほっとしたようであった。


坂戸城は関東遠征への前線基地として越後から軍が集まり賑わっていた。

今回景虎の言葉に機嫌を直したのか政景筆頭の上田衆の大軍も大忙しで、それに負けじと栖吉長尾景信の軍や揚北衆や越後軍国人衆の軍も集まりしだい三国峠越の準備に追われていた。


このとき珍しく政景から少し個人的な相談があった。

義景の初陣の件であろうと思った。景虎も今回は楽で安全な戦になるかと思われたので初陣にはもってこいかと思ったのであったが実は別の話であった。

政景の横に義景ともう一人同じ年くらいの若者がいた。

(喜平次かな・・?早い初陣だな・・)

と景虎は思ったのだがもう一人は喜平次ではなかった。

聞くと政景の元側室の生んだ子で時宗と言う男子であった。

元側室は仙桃院が上田長尾に正室に来てから遠慮してかその後出家して産んだ子供と寺でひっそりと過ごしていたがその子が幼子ながら武勇に優れていると坂戸城下で評判になったので呼び戻して今回義景と一緒に連れてきたという。

確かに10代の子供にしては体も大きく目つきも鋭かった。義景に比べても体が大きく大人びている。

景虎は思わず繁長を思い出してしまった。

政景が言うには実は仙桃院と結婚する以前に生まれた子供で義景より年上、実は長男に当たるが今は舎弟分ということで義景や喜平次に仕えさせているとのことであった。

少し事情が複雑だが優秀な子で景虎にも忠節を誓いたいとのことで特別な眼で見ないで欲しいとのことであった。

優秀な将校が育つのは良いことと景虎は考えていたので景虎は快く了承した。


政景の様子を見てか他の者もぞろぞろと自分たちの息子の紹介に景虎の元にやってきた。

実は景虎が初めて見る者が意外と多かった。

中条藤資の息子、景資も今回は来ていた。景虎より2歳年下で立派な青年であったが普段は中条が不仲な黒川実氏対策で自城の鳥坂城で留守役ばかりやらされていた。

今回黒川が春日山城の留守に黒川が入ったので出て来たと言う。

実は中条は内心景虎が景資を気に入ってくれたなら婿入りさせたいと常々考えていたのだが以前彼が上杉定実の後継者問題のとき問題を起こした経緯から黙っていた。

もちろん残念ながらそれ以上に景資が景虎の好みでないことも重々承知していたが。

景虎は中条が言うにはかなりの面食いである。景虎の好みは端正な美男子であった。彼女のお気に入りの河田長親や荒川長実、村上義清、清国親子、敵だが武田の高坂弾正昌信もしかりである。

それにくらべると景資は大柄で屈強でいかにも武将たる男らしい男であったが残念ながら端正ではなく景虎の好みとは明らかに違っていた。

景虎は案の定、景資を藤資が紹介しているときも例の好みの者を見るときの動作を行わなかったので藤資もすぐにわかって諦めたのであった。

景資は景虎に興味があったようだが景虎のつれない反応にがっかりしていたが。


色部勝長も弱冠12歳の弥三郎(顕長)を連れてきていた。

宇佐美定満も弱冠14歳の長男の定勝を連れてきていた。

景虎から言えば少し若すぎて対応に苦慮したが。

それにしても弥三郎も定勝も勝長と定満が50前のときの子供だったので一見孫みたいだったのが景虎も内心は実は驚いていた。まぁ自分も父為景が遅いときの子供なので似たようなものかとも思ったが。


今回はみな楽な戦であろうと踏んでおり彼らを連れてきたようであった。

繰り返すが初陣は通常安全な戦にしか連れて行かないのである。

今回の関東遠征は景虎だけでなく越後の国人衆たちもそのように考えていたのであった。


弥太郎、秋山源蔵、戸倉与八郎は具足を整備しながら息子たちを売り込んでいる諸将を遠巻きに見ていた。

「・・ワシの娘も女騎めきとして連れてくればよかったのう・・」

息子のいない源蔵がぼやいた。

「おぬしがその分頑張れば良かろうに・・」

弥太郎が横やりをいれた。

「でも娘さんまだ10歳で可愛い盛りだろう・・やめておけ・・」

与八郎も続けた。

「直江殿の娘さんや柿崎殿や斉藤殿のご婦人のように春日山城に姫様のお話し相手に入れればいいじゃないか・・」

弥太郎が言った。

「ウチの娘おてんばだからな・・」

源蔵が苦笑いしていた。

「もう馬を乗り回し薙刀を振り回しておる・・」

源蔵がいやはやという顔で言った。

「そらすごいな・・」

弥太郎も与八郎も少し驚いた。

「さすが源蔵の娘さんじゃ・・血は争えん・・」

「それだったら確かに直江殿の荷駄隊に入った方が良いかもな・・」

弥太郎も与八郎も納得していた。


荷駄隊は食糧、弾薬、予備武具などの運搬や遠征中の将校たちへの食料調理など戦闘補佐的な業務の部隊であったが重要な部隊であった。腹が減っては戦が出来ないからである。

越後軍の荷駄隊の構成員は高齢化した兵士が主だったが女性兵士も少数在籍していた。

将校向けの食事の調理は彼女たちが担当していた。戦前においしい食事を取って万全に備えるべきというのが景虎の考え方であったからである。

景虎は細身の通り普段はかなり少食だった。しかし戦の前は普段の倍は食べるので家臣たちはそれで景虎が戦に行くかどうかが分かったと伝えられている。

景虎の食に対するこだわりは今でも かちどき飯 と言う名前でその時の内容が新潟県では伝承されており今でも食事処で食すことが出来る。

女性兵士ならではの任務もあった。大将の景虎が女性と言う特殊事情もあってだが景虎は毎月10日前後腹痛を起こすことが多かったが出陣中のその世話の役なども彼女たちの仕事であった。

景虎は温泉も好きだったのでその時の警護も彼女たちが対応に当たった。

越後の買掛温泉や燕温泉、関温泉、上野の猿ヶ京温泉は景虎の隠し湯と伝わっている。

ちなみに戦国時代の女性兵士だが静岡県の沼津市の千本松原の首塚の調査ではかなりの数の女性と見られる兵士の遺骸が確認されているという。


景虎に対する諸将の子弟の紹介が一段落したころ

「それにしてもいやはや・・みなさん出世にご熱心で・・」

与八郎がいやみっぽく言った。

「阿虎様は小姓みたいな美男子好きだから気に入られれば出世間違い無しだからな!」

弥太郎も遠慮なく続いた。

「お前の息子も連れてくればよかろう・・」

与八郎が弥太郎に言った。

「すぐに気に入られて俺が出世したらお前ら腹立たしいだろう・・だから遠慮してるんだよ・・がはは・・」

弥太郎が冗談を言った。

急にみんな黙って知らん顔をしてしまった。

「・・ん・・どうした・・冗談だ冗談・・がはは・・」

弥太郎はお構い無しに続けていたら秋山源蔵がそっと弥太郎の後ろを指差していた。

「・・・え?」

弥太郎が指差されたほうを振り向くといつの間にか景虎が膨れて立っていた。

弥太郎が

(やべぇ・・)

と言わんばかりの顔をしていたが景虎は何食わぬ顔で

「・・え・・ゴホン・・弥太郎の外見は私の好みで無いので息子も大丈夫であろう・・」

と、うまく切り返すと辺りは笑いに囲まれた。

「そりゃあないでしょう・・」

今度は逆に弥太郎が少し膨れていたが・・


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