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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
5章 ヒト族 その1
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感謝

「おい!大丈夫か!?」


シエラに抱きかかえられながら、淡く光り輝く華美へと駆け寄った魔王は、華美の姿を見て眼を見開いた。


「お前、指が…!」


シエラに握られている華美の指が、半透明に透けていたのだった。


心配そうな魔王とシエラとは対照的に、華美は何事も無いように二人へと微笑みかけた。


「心配しないで。あたしは消えるだけだから」


華美が放った消えるという言葉に、魔王とシエラは言葉を失う。シエラに至っては、涙が頬を伝ってしまっている。


「そんな悲しまないでよ。あたしは元々死人だよ」


「でも、マキナ様に生き返らせてもらったんじゃ……!」


「違うよ、シエラちゃん。あたしはたまたまマキナに気に入られて、あいつの娯楽の為に生かしてもらっただけなんだよ」


もうどうすることもできないという理不尽な現実に、全身の力が抜けていく。


「魔王様も、そんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ」


自分は消えてしまうというのに、心配させまいとする優しさに、自然と涙が流れ出る。


そんな魔王とシエラを励ますように、華美は2人の手を力強く握った。


「あたしは2人に、これ以上無いぐらい感謝してる。だって、2人のおかげで記憶が戻ったし、それに、あたしにとって1番大切な弟を救うことができた」


「結果だけ見ればそうかもしれない…。だが、俺は最後までお前のことを救うことができなかった!」


魔王の言葉に目を見開いた華美は、少しして弱弱しく微笑んだ。


「あんたって、魔王なのに優しんだね。だけど、毎回そんなに苦しんでたら身が持たないよ。世の中は理不尽の連続なんだから」


「でも、消えちゃうなんてやだよ…!」


指先だけではなく、既に全身が半透明となってしまった華美へとシエラが抱き着く。


「マキナのことは好きじゃないけど、感謝しないとな…。自分の娯楽のためとはいえ、弟を救ってくれて、それに、最後にこんなにも良い人たちに巡り合わせてくれた」


華美を包んでいた光が輝きを強めていく。


華美自身も、もうすぐ自分が消えてしまうことを感じたのだろう。笑顔のまま、両目から涙が溢れ出していた。


「最後にこれだけは言っとかないと。魔王様、シエラちゃん、それからセバスチャンさんも、弟を救ってくれてありがとう…。それじゃあ、バイバイ」


別れの言葉を告げた瞬間、華美が一際強く輝いた。あまりの輝きの強さに、思わず目を瞑ってしまう魔王たち。


目を開けると、そこには華美の姿は無く、華美を抱いた形を残したシエラがいるだけだった。


「ううっ!」

「っ……!」


シエラの泣き叫ぶ声と魔王の啜り泣く音が、部屋中に響き続けた。

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