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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
5章 ヒト族 その1
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神降臨

「神様だと!?」

「神様!?」


 部屋中に、魔王たちの驚く声が響き渡る。そんな魔王たちの反応を見た神様は、腕を組んでウンウンと何度も頷いている。


 光のシルエットだけで表情は一切見えないが、嬉しそうにニタニタと笑っているのがひしひしと伝わってくる。


「そう!うちは神様や!せやからもっと敬って、美味しい料理なんか持ってきてくれてもいいんやで?」


「「「「………………」」」」


 急に時が止まったかのように、部屋が静まり返る。

 なぜだろう。この神様、一切敬う気になれない。


「ナハハッ……冗談やんか!」


 その空気に耐えかねたのか、神様は一際元気に笑って見せた。


「それにしても、うちのこと説明してくれても良かったんとちゃう?ハナちゃん」


 話を振られた華美は、困ったように笑って神様を見た。


「だって、あんたのことを話して良いのか、分からなかったんだもん」


「良いに決まってるやろ〜!うちとハナちゃんとの仲やんか!それに、せっかくの布教のチャンスをみすみす逃す手は無いからな!」


 そう言って神様は、華美の後ろへ一瞬で移動して、華美のことをギュ〜っと抱きしめた。華美は神様の腕を払おうとしているも、かなり力が強いのか、一向に振り払えない。


 華美と神様がじゃれ合っている間に、魔王はそっとセバスチャンに近づき、神様を見据えながら小声で(ささや)いた。


「見る限り俺たちに敵意はないようだが、信用して良いと思うか?」


 セバスチャンも同様に、神様から目を離さずに魔王へと囁き返す。


「魔王様も仰るとおり、敵意は私も感じませんし、信用してよろしいかと。それに、私たちにはどうすることもできません」


「同感だ」


「ひとまず、下手に抵抗せず、言われた通りに今回の真相を教えていただいてはどうでしょうか?」


「…それしかないか」


 魔王は溜息を吐き、元のベッドへと戻っていく。


 魔王はこの時、神様に気を取られるあまり、気づくことができなかった。セバスチャンが警戒する様子を見せていないどころか、神様と名乗る者を懐かしむように見つめていたことを。


「おい、神様!」


「んにゃ?」


 魔王に呼ばれた神様は、再び一瞬にして魔王の目の前へ移動する。


「そろそろ、今回の真相を教えてくれないか?」


「ええよ。けど、その『神様』って呼び方やめてくれん?一括りにされるのは嫌やねん」


 あまりの自由奔放さに、思わず溜息を吐いてしまう魔王。


「別に構わないが、なんて呼んだら良いんだ?」


「そうやな〜……自分らからしたらうちは『都合の良いタイミング(デウス・エクス・)に現れた絶対者(マキナ)』。まあ、気軽にマキナって呼んでーな」


「分かった」


「素直でよろしい!」


 満足げに微笑むマキナ。


「それでマキナ。そろそろ……」


「そうなんべんも言わんくても分かってるよ。え〜っと……せやせや、今回の出来事の真相やったな。結論から言うと、みんなが気絶したんは、ハナちゃんが授かった能力が原因やな」


「能力?」


「そう。神様の中でのルールで、違う世界の人間を転生させる時、人智を超えた力を授けることになってるねん」


「ちょ、ちょっと待って!!」


 当たり前のように話を続けようとするマキナを、華美が大慌てで静止する。


「そんなこと聞いてないんだけど!」


 怒り半分混乱半分の様子で詰め寄る華美を(あざけ)るように、マキナは心底楽しそうな笑い声を上げた。


「そりゃそうやろ!わざと教えてへんねんもん!」


 マキナの返答に、動揺を隠せない華美。


「な、なんで…!」


「そんなん、教えへん方が面白いことになると思ったからに決まってるやろ!」


「は!?」


 怒りを露わにしながら、華美はマキナへと掴み掛かろうとする。しかし、マキナにヒョイと避けられしまい、手が空を切るだけで終わってしまった。


 華美はもう一度掴み掛かろうとするも、魔王に腕を掴まれるようにして止められてしまう。


「華美に能力のことを教えなかった理由は分かった」


 魔王は平静を装いながらも、マキナのことをキッと睨みつける。


「その能力のことを詳しく教えてくれ」


「ええよ〜」


 マキナは魔王の睨みなんか気にも止めず、呑気な口調で話を続けていく。


「能力を授けるって言ったけど、正確には発現する能力はその人次第や。で、ハナちゃんが発現した能力ってのが、『言霊使い』ってものなんや」


「『言霊使い』……。どんな能力なんだ?」


「書いて字の如く、自分の感情なんかを言葉に乗せて伝える能力やな。で、この能力がなんでみんなが気絶することに繋がったかって言うと、記憶が戻って能力が発現したハナちゃんは、怒り、不安、悲しみ、いろんな負の感情がごちゃ混ぜになってた。そんな色んな負の感情を、無理やり伝えられたらなんかしたら、分かるやろ?」


「そういうことか。つまり、『言霊使い』の能力を発現した華美が叫び、その時に抱えてた負の感情を無理やり伝えられたことで、華美の声が届く範囲にいた人たちの心が耐えられず、強制的に気絶させられてしまったと」


 それなら確かに、華美に近い人ほど気絶している時間が長いことにも合点がいく。


「そういうこと」


 ほんで、とマキナは話を続ける。


「自分ら、ハナちゃんが記憶喪失になった理由、知りたいんとちゃうん?」


「ああ……」


 嫌な予感がして、魔王は唾をゴクリの飲み込んだ。


「あれな、うちがやってん。これはうちとハナちゃんとのゲームや。自分らはそれにたまたま巻き込まれた、哀れなキャラクターに過ぎひんねん」


 ここまで話したマキナは、魔王の斜め後ろにいる華美を見るように、僅かに首の角度を変えた。表情は全く見えないが、その顔は心底愉快だと言わんばかりに、ニタァと邪悪な笑みを浮かべているように見える。


「なあ、ハナちゃん?」

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