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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
5章 ヒト族 その1
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記憶(上)

目が覚めると、幼い頃から見慣れた天井が目に飛び込んできた。どうやら、自室のベッドに寝かされているようだ。


(なんで俺は部屋にいるんだ?)


自室に至るまでの記憶を見つけようとするが、記憶に(きり)がかかったように、肝心な部分をなかなか思い出すことができない。


(確か、シエラたちと花火を見に行って……)


頭の中で今までの行動を整理し、徐々に記憶にかかった霧が晴らしていく。しばらくして、自分たちへと、馬が猛スピードで駆けてくる場面が蘇ってきた。


(そうだ、いきなり眩暈(めまい)がして…いや、それよりあの後どうなった!?)


外の様子を確かめるために体を起こそうと、ベッドに左手をついた瞬間。腕から肩にかけて、電撃が突き抜けるような激痛が駆け上がってきた。


「イッ!!!」


何が起きたのか分からず、不安を覚えながらそっと左腕を確認すると、手首から肩にかけて薄く緑色に変色した包帯が巻かれている。どうやら、包帯にすり潰した薬草が塗り込まれているようだ。


(そうか、俺は空で気を失ったんだな)


突如として襲ってきた眩暈の感覚がはっきりと思い起こされ、思わず顔を歪めてしまう。包帯が巻かれていない右手をそっとベッドにつき、魔王はゆっくりと体を起こした。ベッドから立ち上がると、コンコンコンというノック音が聞こえ、セバスチャンが入ってきた。


「お目覚めになられたのですね」


セバスチャンは平静を装っているが、その顔からは深い安堵の色が見て取れる。


「心配かけたな」


机に畳んで置かれていたシャツを着て、セバスチャンの横を通り過ぎようとすると、右半身を力強く押さえられ、抗う間もなくベッドへと無理やり寝かされてしまった。


「その気持ちがあるのでしたら、無理をなさらないで下さい。あの場にいた者たちの中で、魔王様が一番の重傷者なのです」


「俺がか?馬はどうした?あの少女は?」


「少女でございますか?」


魔王から質問を受けたセバスチャンは、記憶を掘り起こすように顎に手を置いて軽く上を向いた。


「確か…馬は皆と同じように気絶しておりましたな。魔王様が(おっしゃ)られた少女がどなたか存じませんが、魔王様以外にケガをしている者は、一人としておりませんでしたぞ」


「そうか…!」


セバスチャンから自分以外ケガ人がいないことを聞いた魔王は、安心してホッと安堵の溜息を漏らした。そして、魔王はセバスチャンと言葉を交わして、確信したことがあった。


(こいつは俺が気絶してからの事を知っている!)


魔王はゆっくりと上半身を起こし、壁にもたれかけるように体を預けてセバスチャンと向かい合った。


「セバス、お互いの情報を整理しよう」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふむ……」


魔王の話を真剣に聞いていたセバスチャンは、目を閉じて俯いていたが、しばらくすると目を開いて深く頷いた。


「それで魔王様は、馬に()かれそうになっていた少女のことを気にかけていたと。まったく、花火の音で暴走する可能性があるから、馬車で来られた方々には馬は馬小屋にしっかり繋いでおくよう、しつこく言い聞かせていたというのに…」


こめかみを押さえながら、短くため息を吐くセバスチャン。その仕草から、普段の気苦労が嫌というほど伝わってくる。


「お前の方ではどうだったんだ?」


「私はその時、外周を守るように展開していた魔王軍と共におりました。魔物がほとんど近づかなかったので、アーレンス殿と魔王軍の現状について話していたのですが、花火が始まって10分ほど経過した頃でしょうか。私たちの元へ、北門付近が大変なことになっていると報告が入りました。遠目からは確認できなかったので、私たちは北門へと移動して確かめることにいたしました。北門へ近づくに連れて、大勢の観客が気絶し、倒れている光景が目に飛び込んでまいりました。事態を確認した私は、すぐに花火を中止にし、気絶した者たちを魔王城へと運びました。そして、半日が経過した頃、魔王様が目覚められたのです」


「なるほど。俺を含め、観客たちが気絶した理由は判明したのか?」


魔王の問いに対して、セバスチャンは首を振った。


「申し訳ございません、まだ確定はしておりません。ですが、目覚めた者たちに話を聞いたところ、気絶する直前に女性の声が聞こえてきたと言っており、気絶した者たちの中心地から遠い者ほど、早く目覚めておりますので、その聞こえてきたという声の女性が原因なのではないかと、私は推測しております」


「確かに俺も聞いた…」


「魔王様もですか?」


「ああ」


やめろおおおお!!!


気絶する寸前に聞いた声が、頭の中で再生される。この声からは、何か怒りや悲しみといった負の感情がひしひしと感じられ、思い出しただけで心がざわざわする。


「セバス、まだ目覚めていない者はいるのか?」


「はい。十名ほどですが」


「お前はさっき、中心地から遠いやつほど目覚めるのが早かったと言ったな。なら、まだ目覚めていないやつの中に、原因がいるかもしれないんじゃないか?」


「魔王様もそう思われますか」


「ああ。だが、絶対じゃない。念のため、兵士たちに城下町を捜索するよう伝えてきてくれ」


「かしこまりました」


セバスチャンが頭を下げ、背を向けた瞬間。


「その必要は無いよ」


突如、ガチャリと扉が開き、最近聞き慣れた声が聞こえてきた。部屋の出入り口へ目を向けた魔王は、思わず息を呑んでしまった。扉から現れたのはアノだったのだが、不安や怯えといった感情は消え去り、どことなく(りん)とした雰囲気をその身に(まと)わしている。


アノはおぼつかない足取りで歩いてくると、真剣な表情で魔王と向かい合った。


「みんなが気絶したのは、たぶんあたしのせいだ」


「どうしてそう思う?」


「そのことを説明する前に、あたしはあんたにお礼を言わなくちゃならない」


アノはそう言うと、腰を90度折るようにして頭を下げた。


「あんたのおかけであたしは、記憶を取り戻すことができた。本当にありがとう!」


「そうか。思い出せたようで良かった」


アノが部屋に入ってきた瞬間から、何となく記憶を取り戻したのだろうと思っていたため、驚きはしなかった。それ以上に、聞かなければならないことが多すぎる。


「それで、お前はいったい何者なんだ?」

「魔王のお悩み相談室」を読んでくださっているみなさま、おはようございます!!

黒猫くろとです!!

本当なら前回にご報告をしたかったのですが、色々とやらなければならないことがあり、今回にご報告することとなってしまいました。


まず1つ目が、更新が週1回になったことでお気づきかもしれませんが、無事に就活が終了いたしました!!

今から約10ヶ月後には、私も社会人の仲間入りとなります。色々と悔しい思いや挫折はすると思いますが、めげずに頑張っていきたいと思います!


次に、ゲーム配信についてです。元々ゲーム配信のみをしようと考えていたのですが、今は大好きな配信者がたくさんいる、vtuberの世界で頑張っていきたいと思っております。そのために、現在はボイトレやLive2Dの勉強をしている最中です。

歌に関しては改善しないといけない部分ありまくりだし、Live2Dは難しすぎて頭の細胞が焼き切れそうです…。(´;ω;`)

最終的にどのようになるかは分かりませんが、準備は進めていますので、最長でも夏休み終了までには配信できるように頑張ります。


そして、上述してはいるのですが、就活が終了いたしましたので、投稿頻度を週1回に戻します!!!

また、今年は短編で最低でも1作品は別の物語を書きたいと思っておりますので、そちらは今しばらくお待ちください。


最後にはなりましたが、「魔王のお悩み相談室」を読んでくださりありがとうございます!!

次回は、アノの正体が判明する回となります!!

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