表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
5章 ヒト族 その1
68/86

孤独

 一人残されたアノは、噴水の(ふち)に寄りかかるように三角座りをして、太腿(ふともも)に顔を埋めていた。


 そうすれば、当たり前のように町を歩いている、怪物たちを見なくて済むから。


 自分の数倍はある巨体、鋭い牙や爪、全身を覆う毛や鱗。ヒトではないその姿を見るたびに、叫びたくなるほどの恐怖心が全身を襲う。


 記憶がなくても、本能が覚えているのだろう。こんな生物たちに出会ったことが無い、出会ったら逃げろ、と。


 この二時間を通して、彼女彼らが決して危害を加える訳では無いことは分かった。だけど、怖いものは怖い。


 わたしのことを心配して、「大丈夫?」と声をかけてくれる人もいた。だけど、全部無視した。

 顔を上げたら最後、自分の命が終わりを迎える気がして。例え、そんなことは無いと理解していても、そんな妄想が止まらない。


(こんなことなら、無理を言ってでもシエラさんに付いて行くんだった…)


 何度目とも知れない後悔が、頭をよぎる最中。


 またしても、こちらへと近づいてくる足音が聞こえてきた。


 一歩、また一歩。足音は大きくなっていく。


 そして、わたしの目の前で立ち止まった。


 今までもそうしてきたように、一層腕に力を入れて、顔を強く太腿へと密着させる。それから、歯を力一杯食いしばった。


(早くどっかに行って!)


 泣き叫びたくなるほどの恐怖心と、格闘していると。


「アノ、大丈夫!?」


 この二時間、幾度となくわたしのことを励ましてくれた、底抜けに明るい声が聞こえてきた。


 その声に反応して、バッと勢いよく顔を上げると、こちらを心配そうに覗き込んでいる、シエラさんの顔が間近にあった。


 その顔を見た瞬間。全身を支配していた恐怖心が、嘘のようにどこかへと吹き飛んでいった。


「シエラ……さん……」


「大丈夫?もしかして、私が連れまわし過ぎたせいで、具合が悪くなっちゃった!?」


「ううん…!具合が悪くなった訳じゃない…です」


 シエラさんの勘違いを、慌てて訂正する。


「良かったぁ…!」


 わたしの言葉を聞いて、シエラさんは心底安堵したように、ため息を漏らした。


 その様子から、本気でわたしのことを心配してくれていることが伝わってきて、思わず泣きそうになってしまう。


 最初は、怖かったはずのシエラさん。だけど、見ず知らずのわたしのために、必死になってくれる姿を見ている内に、恐怖心は薄らいでいった。


 それどころか、記憶が無いわたしにとって、今は唯一頼れる存在だ。


「はい、これ!」


 目端に溜まった涙を手の甲で拭っていると、シエラさんから赤い食べ物を手渡された。


「とりあえず、これでも食べて休憩しよ!」


 シエラさんの思いやりに、拭ったはずの涙が零れ落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ