謎は深まるばかり
「それでは、お家まで案内いたしますね」
「ええ。お願いするわ」
シエラを先頭に、アイリスとアズリエルが相談室から退室していく。
一通り落ち着きを取り戻した後。家の場所を前もって知っていたシエラが、三人の新居へと案内することとなった。
「さて。アーレンス、報告を頼む」
魔王が放った言葉を皮切りに、相談室の空気が一気に張り詰める。
「町の鍛冶屋にオークたちの装備を見せたんだが…ほとんどが鉄や鋼製だった。だが、『凶豚たちの王』が身につけていた装備だけは、ミスリルでできていたそうだ」
「ミスリルか…」
アーレンスの報告を聞いた魔王は、『凶豚たちの王』の防具に使われていた金属がミスリルと聞いて納得がいった。
ミスリル。その硬さはオリハルコンに次いで硬く、鉄や鋼よりも軽いという性質を持つ。その特性故に、武器に加工すれば絶大な威力を、防具に加工すれば圧倒的な防御力を誇りつつ、鉄や鋼の装備より軽量という、どちらにしてもぶっ壊れた性能の装備を作成することが可能だ。
世に言う一級品と名の付く装備の大半が、ミスリルを使用して作られた装備と言っても過言ではない。
「あいつらはいったいどこからそんな装備を手に入れたんだ?」
ミスリルはオリハルコンほどではないにしろ、希少性はかなり高い。
少なくとも魔物が手に入れるなんて不可能だ。
「今は考えても仕方ないんじゃないか?それよりも、俺はセバス殿の情報が聞きたい」
「それもそうだな」
考えを巡らせていたところを、アーレンスに諭されて中断する。
「セバスチャン、この一週間でオークたちについて何か分かったことはあるか?」
セバスチャンは襲撃があってからの一週間。地下牢にいるオークたちの監視、さらにはオークたちの情報収集を行っていた。
「色々調べはしたのですが……どこから現れたのか、装備はどこで仕入れたのかなど、そういった情報は一切手に入りませんでした」
ですが、とセバスチャンは言葉を付け足す。
「どうやらあのオークたち、拙いながらも言葉を話すことが可能のようです」
「「なっ!?」」
セバスチャンの報告に、魔王とアーレンスは目を見張る。
魔物はその生まれ故に知能が著しく低く、言語を習得するなど不可能だ。
そのため、言葉を話す魔物なんてものは前代未聞だった。
「セバス殿、オークたちとは会話できるのですか!?」
衝撃から先に立ち直ったアーレンスが、真剣な表情でセバスチャンを問いただす。
「会話できるかはまだ分かりません。なにしろ、こちらから話しかけてもしゃべろうとはしないのです。ですが、ここからは私の推察となりますが、オークたちはこちらの言葉が分からない訳ではなく、どうも無視しているように感じて仕方ありません」
そこまで話したセバスチャンは、今までよりも真面目な顔になって話を続けた。
「見張りの兵から聞いた話ではあのオークたち、口々に『ヒメサマ』と呟いておるそうです。確証はありませんが、オークたちを襲撃させた者かと」
ミスリルの装備。オークの額に書かれた先代魔王の絵。そして、オークたちが呟く『ヒメサマ』の存在。
必死に考えを巡らすが、これだけの情報では何も分からない。
深まっていく謎に、三人は頭を抱えた。
「『ヒメサマ』…一体誰なんだ…?」




