娘の覚悟
オークのことはアーレンスに任せ、魔王はアズリエルとエルフの少年を抱えて魔王城へと帰ることにした。
その道中にて。
「あのね…まおうさま」
「ん?」
「わたし、パパみたいなへいたいさんになりたいの」
「…………」
「だけど、おしろでおっっっきなモンスターがきたとき、パパかっこよくなくて……。へいたいさんになるのやめようかなと思った」
「そうか」
「でもね、さっきパパのこと見てやっぱりパパはかっこよくて、へいたいさんになりたい!って思ったの」
「…………」
「でもでも、ママがダメって言うの…。どうしたら許してくれるかな?」
「そうだな………今みたいにちゃんとなりたいって言えば、きっと許してくれるさ」
「ほんと?」
「ああ」
「そっか…。分かった!」
アズリエルの静かだが熱い決意に、心の中でガンバレと応援する。そうこうしているうちに、魔王城の司令部が見えてきた。
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「ああ…坊や!私の可愛い坊や!!」
「かあちゃん!かあちゃん!!!」
「アズ…無事で良かった……!」
「ママ!」
司令部内でエルフの少年とその母親、アズリエルと先に捜索から戻ってきていたアイリスが再開し、それぞれが子どもの無事に歓喜して小さな体を抱きしめる。心温まる光景に自然と頬が緩む。
親子の再開を邪魔しないよう、その場をそっと離れていく。
司令部内を忙しなく走り回っている兵士を捕まえて現状を聞き出すと、どうやらアーレンスと俺とは行き違いになったセバスチャンの活躍で、オークたちを完全に無力化することに成功したようだ。
突如として城下町を襲った異例の襲撃の閉幕に、ホッと胸を撫で下ろす。
避難してきた村人たちを安心させるため、このことを伝えようと魔王城へと一歩踏み出した瞬間。
全身から力が抜け、そのまま前のめりにバランスを崩す。
捜索で酷使した足が、安心と共に限界を迎えたようだ。
ゆっくりと近づいてくる地面に既視感を覚える。
だが、今度は地面に激突することはなく、柔らかい感触が上半身を包み込む。
「おかえりなさい。魔王様」
疲れた体にシエラの優しい声が染み渡る。どうやら倒れかけたところを、シエラが受け止めてくれたようだ。
あまりの心地良さに、このまま意識を手放したい衝動に駆られるが、まだやり残したことがある。
「早く民たちを安心させないと…。シエラ、肩を貸してくれるか?」
「もちろんです!ですが、とりあえずそのお顔を手当しないと、みなさんびっくりしちゃいますよ」
シエラに指摘され、今まで忘れていた鼻の痛みが復活する。
「それもそうだな」
魔王はシエラの肩を借りながら、ゆっくりと魔王城へと帰っていく。
何も出来なかった自分の不甲斐なさと、何も聞かないシエラの優しさを、一歩一歩踏みしめながら。




