アーレンスVSオーク
受け止めた斧の威力といい、魔王に斧を投擲しようとする賢さといい、対峙しているオークがもはやただの魔物と侮ってはいけない相手だと、長年の経験が訴えくる。自然と大剣を持つ手に汗が滲む。
アーレンスとオークは睨み合いながら、ジリジリとお互いの距離を縮めていく。二人の距離が人一人分まで狭まった瞬間。戦いの火蓋が落とされた。
「ハアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!」
『オオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!』
大剣に渾身の力を込めて振り下ろす。斬線を残しながら猛スピードで落ちていく刃は、オークの薙ぎ払おうとしている左腕に直撃する。
しかし、ガキン!!という衝撃音と共に弾かれてしまった。
「なっ!」
驚くのも束の間。オークの薙ぎ払いが左の脇腹に直撃し、大きく吹き飛ばされる。
空中で態勢を整えて難なく着地することに成功するが、脇腹が鈍い痛みを発している。さらには、オークが家の外壁に刺さったままだった斧を抜いてしまった。
「ふざけた装備しやがって……」
(俺の装備だって超硬度金属でできてるんだがな…)
希少な金属である超硬度金属で作られた大剣を弾いた相手の装備に舌打ちする。だが、それ以上にまずいのが、オークが持つ斧も同様の金属を用いて作られている可能性が高いことだ。
一撃でも喰らえば、その時点で命が無い。長らく経験していなかった死の匂いに、額から冷や汗がとめどなく噴き出す。
僅かに緊張を感じていると。
「パパがんばれ!!!!!!」
愛娘の声援が遠くから聞こえてきた。
声が聞こえた方向を見ると、屋根の上でアズリエルと魔王がこちらを見下ろしていた。
(何してんだよあいつ)
てっきり魔王城へ避難したと思っていた二人の姿を見て、兜の中で思わず苦笑を浮かべてしまう。
(でも)
「ありがとよ」
顔を正面に戻し、改めてオークと対峙する。先ほどまであったはずの死の匂いは、いつの間にかどこかへと消え去っていた。
大剣を地面に擦りながら、オークへと疾走していく。そんなアーレンスに呼応するように、オークもアーレンスに向かって疾走する。
先に動いたのはオークだった。当たれば一撃必殺の横振り。
その斧を足場にしてさらに大跳躍。その高さは、連立する家々の屋根と同じ位置まで到達する。
そのまま空中で体を回転させ、勢いを増して落ちていく。
「アアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!!!」
大剣に極限まで遠心力を乗せ、全体重をかけた攻撃はオークの兜へと直撃する。
とてつもない衝撃が腕から全身を襲い、この世のものとは思えない衝撃音が耳を劈く。
『ガッ』
オークの苦悶の唸り声が鳴り、オークの巨体が地面に倒れ伏す。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!」
勝負の決着を告げるように、城下町の一角に勝利の雄叫びが轟いた。




