観戦
「まおうさま!待って!」
そのまま魔王城まで帰還しようとしたところ、アズリエルが俺の服を引っ張りながら声を荒げた。
「どうした?」
「このままだったらパパがやられちゃう!」
だから、とアズリエルは言葉を紡ぎ、魔王に懇願する。
「パパを助けてください!」
アズリエルにとっては、アーレンスが弱くて意気地無しのダメな兵士のままだということを、すっかり頭から抜け落ちていた。
アーレンスの実力を知っている魔王は、確信を抱いた声でアズリエルを安心させる。
「あいつなら大丈夫だ」
「で、でも……」
それでもアズリエルは、眼下で実力を測るようにオークと睨み合っている父親を心配そうに見つめている。
「安心しろ。あいつは絶対に負けない」
「………わかった」
その言葉にようやくコクリと首を縦に振り、引っ張っていた服を離してくれた。
そのまま魔王城まで帰還しようとしたところで、魔王の頭の中で一つの案が弾ける。
(これはアーレンスの信用を取り戻すチャンスなんじゃないか?)
だがそのためには、脇に抱えている二人の子どもたちを少し危険に晒すことになってしまう。頭を悩ませた魔王は、最終的に確実に自分一人でも守り切れるように、アーレンスたちから離れた家の屋根に着地する。
二人を慎重に降ろすと、エルフの少年は隠れるように背中に抱きつき、アズリエルは不思議そうにこちらを見上げていた。
そんな彼女の視線に答えるため、魔王は眼を合わせるようにしてしゃがみこみ、ニッと微笑む。
「もし何か起きたら俺が絶対に守ってやる。だから、今だけはパパのかっこいい姿を目に焼き付けておけ」
アズリエルは何か考えているのか、魔王をジッと見つめて動かなかったが、しばらくすると子どもらしい元気な笑顔を咲かせた。
「うん!でもパパが危なくなったら助けてあげて!」
「ああ、もちろんだ!」
アズリエルは安心したのか、遠くで睨み合っている二人を食い入るように観察し始めた。エルフの少年もその様子が気になるのか、魔王の体から顔だけ出して眺めている。
魔王もアーレンスの戦いぶりから少しでも学ぶため、アーレンスとオークの戦闘を見守ることにした。




