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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
4章 リザードマン
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作戦成功

 魔王はアーレンスの演技に素直に感心していた。


 怯え切っている演技もなかなかだが、声を震えさせていることで本当に怯えているようにしか見えない。


 兵士たちの演技もかなり完成度が高く、事情を知らない人が見れば、見事にアーレンスを守りながら勇敢に立ち向かっているようにしか見えないだろう。


 つまり、それだけアーレンスが今回の作戦に真剣だということだ。


「ねえ!パパは?パパは戦わないの?」


 その甲斐(かい)あってか、今のところ見事にアズリエルを騙すことに成功している。


 だが、ここで気を抜くわけにはいかない。もし、中途半端な結果に終わってしまったら、それこそアーレンスの覚悟が無駄になってしまう。


 その後も、怯えるアーレンス、必死に戦う兵士たち、アーレンスに問い詰めるアズリエルという展開が変わらず続き、とうとうその時がやってきてしまった。


「パパは立派な兵隊さんなんでしょ!早くあの怪物をやっつけてよ!」


 アズリエルはこれ以上無様な父親を見たくなかったのだろう。アーレンスへとしがみついて、悲痛な叫びを放った。


「お前は黙ってろ!!あんな怪物戦ったって勝てる訳ないだろ!俺はまだ死にたくないんだ!!」


 それに対してアーレンスは、激怒してアズリエルのことを黙らせた。


 その時のアーレンスの表情は生涯忘れることがない。アズリエルを理由無しに叱ることへの罪悪感、嫌われることへの恐怖、そしてなによりそんなことをしている自分への怒り。その全てが入り混じり、悔しそうに涙を流していた。


 アズリエルも父親に叱られて、とうとう大声で泣き始めた。


 これ以上茶番劇を繰り広げるのも酷だと思い、魔王は再び銀の板を取り出してベルフェルトへと退散の合図を送る。


 それを受け取ったベルフェルトは、最後にもう一度大きな咆哮を上げ、訓練場を去っていった。

 兵士たちは茶番劇を無事に乗り越えれたことに安堵した表情をし、アーレンスは無表情でベルフェルトが去った空を見つめている。そして、アズリエルは俯いて嗚咽(おえつ)を堪えながら泣いていた。


 演技とは言えきつく言い過ぎたと思ったのか、はたまた無意識の内かは分からないが、アーレンスは娘の側によって抱きしめようと手を伸ばす。


 しかし、その手は娘に届くことは無かった。


 パン!


 他でもないアズリエルに、拒絶されたのだ。


「パパは立派な兵隊さんなんかじゃない!もうパパなんて大嫌い!」


 アズリエルはそう言って、訓練場から颯爽と出て行った。


 その場にいる全員が、その小さな背中を黙って眺めることしかできなかった。

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