表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
1章 吸血鬼
4/86

執事の策略

 人族と魔族。二つの種族が共存する大陸、ロベルナ。


 五百年前、この地では人族の住む人間界と魔族の住む魔界が分断されており、どちらかに統一しようと大戦争が勃発した。


 だが、それは過去の話。


 一人の勇者によって戦争は終結した。


 現在では、お互い住む場所は違えど、隣接する人間界と魔界を頻繁に行き来しあうほど、その関係は良好だ。


 そんなロベルナの、魔界にある魔王城にて、今日も今日とて大声が鳴り響く。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「魔王様!今日こそは働いてもらいますぞ!」


 執事服を着こなした白髪の老人が、窓の縁に片足を乗せ、今にも飛び出そうとしている黒髪長身の青年に、叫びながら走っていく。


「人聞きの悪いこと言うなよセバスチャン。今日はロベルナに異変が起きていないか、パトロールに行くだけじゃないか」


 セバスチャンは、走ったことで乱れた服をきちんと正し、老いを感じさせないキリッとした表情で魔王の隣に立った。


「失礼ですが魔王様。()()()、ではなく()()()、の間違いではありませんかな?それに、パトロールでしたらハーピーの仕事でございます。」


「なら人数が多い方が良いだろ?」


 徐々にセバスチャンの眉間に(しわ)が寄っていく。


 これはセバスチャンが怒る時の癖だと察知し、急いで窓から飛び出そうと身を乗り出した。


 だが、惜しくも一歩届かず、セバスチャンに後襟(うしろえり)をガッチリと掴まれる。


「そういう問題ではございません!よいですか魔王様、私とて今年で八百歳ですぞ!魔族の寿命は最大でも千歳とされております。私がいなくなってもロベルナの平和を守るために・・・」


「そういうのはまた明日聞くから、今日は任せた!」


 セバスチャンが言い切る前に魔王はそう言うと、力技でセバスチャンの手を振りほどいて窓から飛び出し、大空を逃げるように飛んでいく。


 凄まじい速度で小さくなっていくその後ろ姿を眺めながら、セバスチャンは呆れて溜息をゆっくりと吐きだした。


「まったく、いったい誰に似たのですかな?」


 玉座の後ろにかかっている二枚の絵。


 一枚には魔王によく似た黒髪長身で、魔王には無い立派な角を額から生やした男性が描かれ、もう一枚には赤髪に白のロングスカートが良く似合う、美しい女性が描かれている。


 セバスチャンは二枚の肖像画に向けて、困ったように苦笑する。


 しばらくして、魔王が残していった仕事に取り掛かるために執務室へと歩を進めた。


 その道すがら。セバスチャンは一つの決心をするのであった。


「魔王様を育てるためには、やはりあの計画を実行するしかありませんな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌朝、セバスチャンは魔王を起こすべく、魔王の私室へと入っていく。


「魔王様、お仕事の時間ですぞ!起きてくだされ!」


 魔王の体を激しく揺さぶると、ゆっくりだが起きだした。


 その眼は、まだ焦点が定まっていない。


「誰だ、我が眠りを妨げる者は…」


「セバスチャンでございます。魔王様、数千年前に流行したと言われているセリフを、毎朝決め台詞のように仰るのはそろそろお辞め下さい」


 さらに追い打ちとばかりに、魔王に聞こえるか聞こえないか微妙な声量で一言付け加える。


「ダサいですぞ」


 その言葉を聞き、魔王は一気に夢の世界から現実へと引き戻される。


「聞き捨てならないぞセバスチャン!このセリフのどこがダサいんだよ!最高に格好に良いだろ!」


「おや、聞かれてしまいましたか。そんなことよりも魔王様、お仕事の時間ですぞ」


 仕事と聞いた魔王の表情は、徐々に子供が駄々をこねだす前のような表情へと変化していった。


「仕事なんてまっぴらごめんだ!俺は今日もロベルナの住人が安心して暮らせるように、パトロールへ行くという重大な仕事をしなくちゃいけないんだ!」


 セバスチャンはその言葉を聞き、まるで勝負に勝ち誇ったかのような、満面の笑みを浮かべた。


 この笑顔は危険だと、脳が最大級の警鐘を鳴り響かせる。しかし、今は自分の寝室で、さらには出口がセバスチャンに押さえられている以上、逃げ出そうにも逃げ出せない。


 魔王には諦め半分、緊張半分の面持ちでセバスチャンの次の言葉を待ち構えることしかできなかった。

 そしてとうとう、満面の笑みのまま、その三日月型に歪んだ口が開かれた。


「不肖セバスチャン!魔王様の、ロベルナの住人により良い生活を送ってもらいたいという、常日頃からの心意気に感服いたしましたぞ!そこで、身勝手ながら魔王城に相談室を設けさせていただきました!」

皆様はじめまして!

黒猫 くろとです!

「ノベルアップ+」様にて、4章まで書き終え、さらには夏休みという絶好の機会なので、「小説家になろう」様で今までの改稿版を投稿することにいたしました!


初回ということで、軽く筆者の自己紹介をします。

趣味は、ゲーム・読書・アニメ鑑賞・昼寝です!

特にこのジャンルが好き!というものが無いので気軽に絡んでいただければめちゃくちゃ喜びます。

現在大学生なので、夏休みが終わるともしかしたら時々更新が遅れることがあるかもしれません。

その時は、今課題頑張ってるんだろうな~と、温かい目で見守ってください。(なるべく週1回は更新するつもりで頑張りますが、遅れたら本当にすみません!)


まだまだ書き始めて半年のひよっこですが、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ