娘からの手紙
結局、幼馴染からのお願いを断ることができず、そのまま相談室で悩みを聞くこととなってしまった。
相談を聞くにあたって、アーレンスがどうしてもセバスチャンの意見も聞きたいということだったので、相談室にセバスチャンも加わった。
「アーレンス殿が悩みを持つとは、珍しいこともあるものですな。私の意見を聞きたいとは、一体どのような悩みなのですかな?」
相談室に入室するなり、セバスチャンはアーレンスへと興味ありげな視線を送る。
「俺も大人になったってことですよ。本当はセバス殿と色々と話したいんですけど……魔王も疲れているみたいなんで、早速本題に入らせてもらいますよ」
流石に幼馴染相手に強がりは通用しないようだ。
というか、疲れていることが分かっているなら今日は休ませてくれ…。
「実は…つい先日娘から手紙が届いてな。どうも3日後、妻と一緒に城下町に遊びに来るそうなんだ」
「え!?アーレンスさんって、番の契約をしてお子さんもいらっしゃったんですか!?」
シエラが心底意外そうに、驚いた声を上げる。
「おいおいシエラちゃん。今は鎧を着こんでるせいで顔は見えねえが、こう見えてもリザードマンの中では結構モテルんだぜ」
アーレンスは痛いセリフを恥ずかしげもなく言い放つ。きっと今頃は、兜の中でドヤ顔を披露していることだろう。
「それはどっちでもいいんですけど、年齢ですよ年齢!魔王様と幼馴染ってことは、大体200歳ぐらいですよね。手紙が書けるほどの年齢のお子様がいるってことは、いくら何でも早すぎませんか!?」
「あ、ああ……そっちね」
カッコつけたセリフをあっさりと流されて、アーレンスはガックリと肩を落とす。
心の中で同情しつつも、いつもの事なのでこれといって触れることなく、シエラと向かい合う。
「確かに俺とアーレンスは幼馴染だが、こいつの方が100歳ぐらい上なんだ。元々こいつの母親が護衛隊隊長でな、その繋がりでよくこいつと遊んだんだ」
「そうだったんですね!」
そこでシエラはハッと表情を曇らせて、慌てて頭を下げた。
「今は相談中なんでした!割り込んでしまってすみません!」
「いやいや、気にしないでくれ」
復活したアーレンスが、慌ててフォローを入れる。
「ちょっと話は折れちまったが、お前に相談したいことってのはこれだ」
アーレンスは懐から四つ折りにした一枚の紙を取り出すと、それを丁寧にこちらへと手渡した。
「これは?」
「そいつは娘が書いた手紙だ。最後の二行を読んでみろ」
言われた通り、慎重に紙を広げて最後の二行に目を通す。
そこにはいかにも子どもらしい拙い字で、
パパのおしごとしているところいっぱいみせてね。
わたしもパパみたいなかっこいいへいたいさんになる!
と書かれていたのだった。




