仲直り
空中で待機してから、およそ15分後。
顔を綻ばせながら、ベルフェルトが戻ってきた。
「その様子だと無事に呼び出せたみたいだな」
「はい!シエラさんが教えてくれた言葉を言ったら、渋々でしたけどなんとか話を聞いてくれました!」
「結局なんて言ったんだ?」
「それは……また今度教えます!そんな事よりも早くしないと、お二人がいることがバレます!」
シエラがベルフェルトに何を吹き込んだのか気になるところだが、ベルフェルトの言う通り、ここでバレてしまっては元も子も無い。
急いでベルフェルトの背中へとシエラを先に乗せ、続いて自分も乗って、鱗へとしがみつく。
背中に二人がしがみついたことを確認したベルフェルトは、二人がギリギリ落ちないであろう速度で降下する。
それから間もなくして。来ました、と二人にだけ聞こえる声で親友が来たことをベルフェルトが告げる。
それを聞いた二人は、バレない様に細心の注意を払いつつ、ベルフェルトの親友がどんな人族なのか確認するために、背中からちらりと顔を覗かせた。
すると、少し茶色みがかった髪を後ろでまとめ、緑を基調としたスカートが良く似合っている、気の強そうな少女が見るからに不機嫌そうな表情で、こちらへと向かってきているのが見えた。
少女はベルフェルトの前で止まると、キッと鋭い目つきで睨んだ。
「それで、大切な事って何?」
少女の言動に、たじろぐベルフェルト。だが、覚悟を決めて少女の眼を真っ直ぐに見つめ返す。
「あ、あのね。また僕は強くなれたよ。もうこの村を、君を守れるぐらい強くなったよ。だから、そろそろ許してくれないかな?」
(何してんだこいつ!!!!)
そんな謝罪があるか!と、叱りたい気持ちが沸々と湧いてくる。だが、いま大声を出してバレる訳にもいかないので、魔王はそのまま少女の反応を伺うことにする。
隣から、何してるんですか…、と呟く声が聞こえてきた。どうやらシエラも、同じ気持ちのようだ。
肝心の少女はというと、大きく溜息を吐いている。怒っているというよりも、呆れているのだろう。
「そんなことを伝えるためにわざわざ呼んだの?それが大切な話なの?」
少女はそれだけ言うと、踵を返して歩き出した。少女の拳は力一杯握られて、少し震えている。
ベルフェルトはというと、そんな少女をただ茫然と眺めているだけだ。
これはまずいと思い、ベルフェルトに少女を止めるように耳打ちするため、背中をよじ登ろうとした瞬間。ドン!ドン!、と大きな音が聞こえてきた。
音の方向を見ると、シエラがベルフェルトの背中を思い切り叩いていた。
透き通るように白い手の平からは、赤い鮮血がポタポタと滴り落ちている。どうやら、硬い鱗で手を切ったようだ。
身を挺したシエラの叱責と激励が届いたのか、ベルフェルトは待って!、と少女を呼び止めた。
「違うんだ!そんなことを伝えるために君を呼んだんじゃない!」
少女の歩が止まる。
「だけど僕は弱いから、君を前にしてしまうと緊張して言いたいことから、ううん、言わなくちゃいけないことから目を逸らしてしまったんだ」
ベルフェルトは1度大きく深呼吸をして、頭を地面に着くほど下げた。
「村が襲われた時逃げてごめん!君を置いて逃げだしてごめん!また君と仲良く話したい!だからこんな弱い僕だけど、許してほしい」
心からの謝罪。ベルフェルトの願いが、ひしひしと伝わってくる。
ベルフェルトからの謝罪に、少女は涙目になってパタパタと走って、ベルフェルトの頭を強く、愛おしそうに抱きしめた。
「こっちこそごめんなさい!ずっと意地張って無視してごめんなさい!私もずっと…ずっとベルと話したかった!」
少女には、きちんとベルフェルトの気持ちが伝わったようだ。
そんな二人を眺めていると、不意にシエラが肩をトントンと叩いてきた。
「これ以上二人の邪魔をするのも良くありませんし、私たちは帰りませんか?」
「ああ、そうだな」
シエラの言う通り、これ以上二人の近くにいることは邪魔でしかないだろう。
魔王は二人の邪魔をしないように、そっとシエラを抱えて魔王城へと帰っていった。
空中でベルフェルトを見ると、今まで見せたことが無いぐらい幸せそうな顔で微笑んでいたのだった。
おはようございます!
黒猫くろとです。
今週はちょっと課題の量が尋常じゃないほど多いので、1週間ほど投稿をお休みさせていただきます。
次回の更新は26日の水曜日となります。




