メルト村襲撃の真相
「ところで、どうしてベルフェルトさんは強いドラゴンになりたいんですか?」
ベルフェルトの火吹き事件-勝手に名付けた-が一段落した頃。三人が疑問に思っていたことを、シエラが代表して尋ねた。
すると、先ほどまでの明るさが嘘のように、ベルフェルトは重々しい空気を纏った。
「そこにゴブリンたちの襲撃が関わってくるんですけど……その前に、まずなんで僕がメルト村にいるのか、話した方がいいですよね?」
「頼む」
分かりました、と頷いて、ベルフェルトは重い口を開く。
「ドラゴンには、百歳になった時から大人のドラゴンとされ、親に巣から放り出されるしきたりがあります。巣から追い出されたドラゴンは、自分の住みやすい場所を見つけて、そこを巣にして人族の害になる魔物を狩って、食料にしながら生きていきます」
さらっと語られる衝撃の内容に、話している本人以外が目を丸くする。
子どもの頃。たまたま城下町を訪れていた旅人から、聞いたことがある。
なぜかドラゴンの巣近辺には、魔物が1匹たりとも現れないと。当時は、他の魔物は怖くて近寄れないのだと、ドラゴンの強さに目を輝かせていた。
だが、まさかその真相が、魔物自体を喰らっていたとは…。
三人が未だに瞠目する中、ベルフェルトは意にも介していないかのように話の続きを語り始める。
「……ですが、僕は臆病者で、五十年前に巣を追い出されるまで親が狩ってきた魔物を食べていたんです」
本当は巣にいる時に狩りの基本を教えてもらうらしいですけどね、とベルフェルトは自嘲気味に微笑んだ。
「それから巣を追い出された僕は、自分の巣を作ることはできたのですが、どうしても魔物を狩ることができませんでした。そうして空腹が続いたある日、とうとう限界がきて、空を飛行していた僕は草原に不時着しました。不時着した場所の近くに、たまたまメルト村があったんです。それで、様子を見に来た村の人たちに空腹だということを伝えると、怖がりながらも村にあった食料を分けてくれたんです!本当にあの時助けてもらえていなかったら、僕は今頃死んでいました」
怯えながらも村の食料を分けてくれた村人たちを思い出しているのか、大きな口元を綻ばせている。
「その時に村長さんが、村が魔物に襲われやすくて食料が何度も盗まれて悩んでいるから、食料を分ける代わりに魔物除けになってほしいと僕に提案してくれました。僕にとってこれ以上ない提案でしたし、ただでさえ少ない食料を分けてもらった恩を返すため、僕はメルト村に住むようになりました。それから、魔物は一切メルト村に近づくことが無くなって、村は毎年豊作でした」
思い出に浸っていたベルフェルトは、そこで言葉を詰まらせて苦い顔をした。
おそらくこれから話されることが、ベルフェルトの悩みに深く関係してくることだと悟った魔王は、一言一句逃さないように今まで以上に話に集中する。
「だけどつい先日、ゴブリンたちが村を襲いました。その時、ゴブリンたちはまず僕を倒そうと、全員が武器を持って、血眼になって僕のことを襲いに来ました。それを見た僕は、村のことなんか忘れて、一目散に逃げてしまいました。その結果、村は襲撃され、僕の親友が連れ去られかけました。だから、もう二度とこんなことが起こらないように、僕は強くならないといけないんです!」
全てを話し切ったベルフェルトは、その眼に決意を宿らせている。
そしてベルフェルトの話を聞き終えた魔王はというと、腰を直角に折るほど深く頭を下げていた。
「まずは魔王として謝らせてほしい。お前や、お前の大切な人たちに怖い思いをさせてしまい、すまなかった。だから、お前も隠していることを教えてくれ」




